壁や床、ドアの向こうから、怖いものが
もぁ~~と現れる。
何度か目覚め、どうかもう出てきませんようにと
祈りながらまた眠る。でもまた現れる、
眠るのが怖い。眠れないのも怖い。
外が明るくなっていることに気づく。
まだ起きる時間ではないのだが、
仕方なくベッドを出る。
この時間はまだ涼しいのだから、
散歩でもすればいいのだろうが、
寝不足の頭が重くて、その気になれない。
ふと、昨夜服んだ錠剤を見る。
ああ、やっぱりいつもの睡眠薬じゃない。
前に貰っていた薬だが、なぜか
それを服むと悪夢を見るのでやめたのだ。
捨てずにとってあったから、昨夜は間違えて服んでしまった。
私には、あれこれの依存症患者を責める資格がない。
自然に眠った時さえ、ふと夜中に目を覚まし、
「あ、薬忘れてた!」と、あわてて服む。
その必要はないのに、服まないとその先はもう
眠れないに違いないと、脳に縛りが入ってしまう。
「5日間、我慢すれば薬やめられるよ。僕も体験者だから」
と、主治医は言う。
私の脳裏には、映画などで見た麻薬中毒患者の
禁断症状シーンが浮かぶ。
怖ろしい幻聴や幻視に悩まされ、のたうっている姿。
その5日間の内に、あんなふうになったらどうしよう。
鉄格子に入っているわけでもなく、そばで監視している
人もいないのだから、耐えられるはずがない。
わめきながらベランダから飛び降りるのだろうか。
なんとはた迷惑な……!
「やめたほうがいいんだけどね。思考能力が
どんどん落ちるし」
なんてことも前に聞いたような気はするが、
主治医はあっさりと、毎回、睡眠薬を出してくれる。
たった一錠なのだから、思い切って服むのをやめたとしても、
そんな凄まじい禁断症状は出ないと、わかってはいる。
でも意志の弱い私は、すぐに禁をやぶる。
眠りたい一心で5日どころか2日ももたないだろう。
そもそも、止めようという意思がない。
この先、長く生きていたいとか、やりたいことが
いっぱいあるとか、そんな望みなど持っていないし。
私は規則正しく、決まった時間に寝て決まった時間に起きる。
食事もちゃんと自分でつくる。野菜も肉もバランスよく食べる。
夜遊びはしない。お酒もほどほど。
熱中症で過去に二度倒れたから、暑くなったら散歩はできない。
うちでぼうっとしているだけだから、運動不足はいなめないが、
睡眠薬を除けば不健康な日常ではないだろう。
だけど何年にもわたるあきらかな依存症だから、
不健康まっしぐらの日々でもある。
悪夢から覚めた後はただただ憂鬱。
今夜は間違えないよう、いつもの薬を服もう。
良い夢をみなくてもいいから、せめて
怖いものだけは出てきませんように。
ようやく咲いたベランダのくちなし。
木槿かな?
数日前の比較的涼しい日に行った海辺の散歩。
釣りを楽しむ家族連れが多い。
のったりと寝そべっている、なにか。
お寺で誰かが亡くなったりすると、門の前に
この札が立てられる。けっこうその期間が長い。
いまの楽しみはこれ。
ベランダの山椒で育てているアゲハ蝶の幼虫。
そろそろ蛹になるために歩き回る頃。
夢に出てくるのが、こっちならいいのに……。
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