冬桃ブログ

「水滴の自叙伝」野本三吉

 ずっと前に申し込んでおいて、ようやく届いたこの一冊。
 分厚い! これは時間がかかるかも。

(現代書館 定価4500+税)

 ……と思っていたのだが、二日で読み終えてしまった。
 最近はとにかく集中力がなくて、読みたくて買った本が
なかなか前へ進まない。が、この分厚い本はたった二日で完読!
 どんどん引き込まれてしまった。
 理屈っぽいところはまったくない。
 飾り気のない、語りかけるような筆致、次々と降りかかる
容赦ない「現実」と向かいあいながら、自分の信じる道を
どこまでも外さない。その鮮烈な生き方がなんとも心地よい。
 
 著者は野本三吉さん。横浜のドヤ街、寿町に
出入りするようになってから、私は彼の著書を何冊も読んだ。

 著者は1941年生まれ。第二次世界大戦を幼いころに体験した。
大空襲の街を両親とともに逃げ惑ううち、まだ赤ん坊だった妹は防空壕の中で圧死。
 敗戦国の貧しさ、学生運動、高度経済成長など、「戦後日本」と共に生き、
日本・外国の各地を放浪し、日雇い労働生活も体験。
 小学校教師、横浜市寿町の生活館職員、児童相談所職員、横浜市立大学教授、
沖縄大学学長などを歴任するという激動の人生を歩んだ。
 この間、寿町での体験をもとにして、野本三吉名義の小説を刊行。

 (他にも研究書など著書多数)
 
 私はこのシリーズで野本三吉さんのファンになったが、
まさかお目にかかれることがあるとは、思ってもみなかった。
 昨年、思いがけず「寿歴史研究会」のメンバーに入れていただき、
会の中心である加藤彰彦さんとお目にかかった。
 彼こそが「野本三吉」さんであった。

 緊張していた私は、著書のイメージとまったく同じお人柄に安堵した。
 誰に対しても、飾らず、丁寧に接してくださる。
 「横浜寿町」(上下巻)という、歴史に残るであろう本で
ご一緒させていただけたことは、私にとって大きな喜びとなった。


 この暑さの中、「書を捨てて街へ出」たりせす、じっくり
読んでいただきたい一冊である。

 野本三吉(加藤彰彦)さん近影。ことぶき協働スペースにて。
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