自分の不徳から家庭も家族も失った。同時に多くの友人も失った。
覚悟してやったことなのに、心より体がついていけなくなった。
何の気なしにデパートの家庭用品売り場に入ろうとすると、突然、身がすくむ。
体の内側からじわじわと泥のようなものが湧いてきて、体を塗り固めてしまう。
呼吸まで苦しくなる。しまいにはそこに家庭用品売り場があると思っただけで
金縛り状態になった。
だからデパートや大きなスーパーには行かなくなった。正しく言うと行けなくなったのだ。
ほどなくクリスマスがやってきた。街を歩けばジングルベルが聞こえる。
赤や金色の飾りも見える。耳を塞いで逃げ帰った。
どことなく浮き足だった歳末風景も、続いて来た正月も、穴蔵に隠れるようにして
やりすごした。
何年もそんな状態が続いた。いまはデパートもスーパーも入れるが、やっぱり
クリスマスや正月の華やぎが好きではない。いまだに体が、そこから逃げようとする。
今年、家族、友人、家、仕事などを失った被災地の人々は、もしかすると
あの頃の私と同じ現象に見舞われておられるのではないだろうか。
被災地の悲劇は個人の責任ではない。けれども、「あの時、こうしていたら」と、
いろんな理由で人は自責の念にかられるものだ。
仮設住宅にクリスマスツリーは飾られるのだろうか。
ないと寂しいだろうが、あればあったで苦しみを誘発するのではないだろうか。
そんな時はどうすればいいのか。
私にもわからない。時が過ぎるのをじっと待つだけ。
それしかできなかったように思う。
でもおそらくは無意識のうちに、新しい人生を求めて少しずつ歩き出していたのだろう。
だからいま、こうして生きてるし、おもしろいことがあれば笑うこともできる。
今日は独りで過去を振り返り、傷つけた人に謝り、こんな私とまだ友人で
いてくれる方達に心から感謝を捧げよう。
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