「カイロ宣言」 と 「無条件降伏」

　「中共」がカイロ宣言を持ち出して、「沖縄の領有権を主張」しているようなので、暇つぶしに少し反論します。

　「カイロ宣言」の原文（英文）を探しても見つからないので、コミュニケ（公式報道）の國語訳を使います。

　結論から言うと、「カイロ宣言」とは言っても、署名をした書類は存在せず、単なる「コミュニケ（広報）」に過ぎません。また、内容は錯誤・妄想によるもので実行不可能な「努力目標」です。また、連合国の対日方針（軍事作戦）が書かれているだけで、日本が為すべき事は書かれていません。

　【カイロ宣言の國語訳】

「ローズヴェルト」大統領、蔣介石大元帥及「チャーチル」総理大臣ハ、各自ノ軍事及外交顧問ト共ニ北「アフリカ」ニ於テ会議ヲ終了シ左ノ一般的声明ヲ発セラレタリ。
各軍事使節ハ日本国ニ対スル将来ノ軍事行動ヲ協定セリ。

三大同盟国ハ海路陸路及空路ニ依リ其ノ野蛮ナル敵国ニ対シ仮借ナキ弾圧ヲ加フルノ決意ヲ表明セリ右弾圧ハ既ニ増大シツツアリ。

三大同盟国ハ日本国ノ侵略ヲ制止シ且之ヲ罰スル為今次ノ戦争ヲ為シツツアルモノナリ右同盟国ハ自国ノ為ニ何等ノ利得ヲモ欲求スルモノニ非ス又領土拡張ノ何等ノ念ヲモ有スルモノニ非ス

右同盟国ノ目的ハ日本国ヨリ千九百十四年ノ第一次世界戦争ノ開始以後ニ於テ日本国カ奪取シ又ハ占領シタル太平洋ニ於ケル一切ノ島嶼ヲ剥奪スルコト並ニ満洲、台湾及澎湖島ノ如キ日本国カ清国人ヨリ盗取シタル一切ノ地域ヲ中華民国ニ返還スルコトニ在リ

日本国ハ又暴力及貪慾ニ依リ日本国ノ略取シタル他ノ一切ノ地域ヨリ駆逐セラルヘシ

前記三大国ハ朝鮮ノ人民ノ奴隷状態ニ留意シ軈テ朝鮮ヲ自由且独立ノモノタラシムルノ決意ヲ有ス

右ノ目的ヲ以テ右三同盟国ハ同盟諸国中日本国ト交戦中ナル諸国ト協調シ日本国ノ無条件降伏ヲ齎スニ必要ナル重大且長期ノ行動ヲ続行スヘシ

　「台湾及澎湖島ノ如キ日本国カ清国人ヨリ盗取シタル一切ノ地域ヲ中華民国ニ返還スルコトニ在リ」と書かれていて、日本が清国人を騙して奪った土地は返すべきですが、台湾を含めて「盗取した土地」は有りません。つまり、返却該当地域が無いので日本が為すべきことは有りません。

　日本国の「無条件降伏」は、連合国の努力目標です。その時点では、日本に関係はないのですが「ポツダム宣言」によって「条件付き降伏」が決定したので、「後法優先の原則」からカイロ宣言に於ける「無条件降伏」の文言は無効と言えます。

　若しも、「カイロ宣言」が有効で「日本政府が無条件降伏を受諾する事」を必須条件とするのなら、現在は「条件付き降伏」の状態が継続中なので、連合国は「日本国ト交戦中ナル諸国ト協調シ日本国ノ無条件降伏ヲ齎スニ必要ナル重大且長期ノ行動ヲ続行」する必要があります。

　「長期の行動」と書かれていて期限は定められていない事から、今でも有効ですが、当時の「中共」とは交戦していませんし、現在は日本との交戦国は無い事から、「行動の続行」は不可能です。つまり、日本を「無条件降伏」させたいのなら、当時の連合国の再結成が必要になります。少なくとも「アメリカ・イギリス・中華民国」と、その他日本国と交戦中の諸国を探す必要があります。

　しかし、日本は「ソ連以外」とは講和条約を締結済みなので、後は新参者の「ロシア」のみです。とは言え、ソ連は「カイロ宣言」に「領土拡張ノ何等ノ念ヲモ有スルモノニ非ス」と書かれている事から宣言には不参加で、「ポツダム宣言」を追認した事から、「南樺太・千島列島・南千島（北方領土）」を戦争の結果として略奪した事は無効です。先ずは日本に返還してから、「連合国の合議」により帰属先を決定する必要があります。

　しかし、ソ連は崩壊し、「ロシア」と「中共」は「カイロ宣言」の当事者では無いので、元々何の権利も有りません。


＊ポツダム宣言（米、英、華三国宣言）
八　「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルベク又・・・

＊Potsdam Declaration (Proclamation Defining Terms For Japanese Surrender)
(8) The terms of the Cairo Declaration shall be carried out and ・・・

＊ポツダム宣言(日本の降伏条件を定める宣言)
８．カイロ宣言の条件は履行されるべきであり、又・・・