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野鳥にもやさしい風力発電であってほしい・・・

私たちが使っている電気、野鳥たちが犠牲になっている!たかが鳥なのか・・・。

抗議の意見書提出

2024-07-18 09:39:17 | 日記

「着床式洋上風車25基が最大級の地震と津波に十分耐え得るとの主張に対する抗議の意見書」を提出!

 福岡県北九州市の若松区沖で建設工事中の響灘洋上ウインドファーム事業の「ひびきウインドエナジー社」に対して、7月12日付で標記の意見書を提出しました。以下、紹介します(要旨のみの個所あり)。意見書には専門用語もあり、ブログをご覧の皆さまには、やや難解な個所もあると思いますが、事業者とはこのようなやりとりをしております。鳥類への影響だけではなく、防災上の懸念もある風力発電の進め方に問題があることを市民の皆さまに知っていただければと思います。

<意見書>                                

本年5月9日付で貴社に提出しました「響灘洋上風力発電の耐震性における質問書」に対しての回答を6月5日付で頂きましたが、肝要な項目の回答がなされておらず、適合性確認の疑問点や、不十分と思われる自主的な取組みなど、洋上風力発電の防災上の安全性についての懸念がさらに増す回答と言わざるを得ません。企業の技術秘匿という貴社にとって都合のよい理由による回答は看過できないことから、抗議するとともに、下記の意見を提出致します。なお、質問文と回答に対する意見は、「一般社団法人日本国土・環境保全協会代表理事」および「NPO法人防災推進機構理事長」鈴木猛康氏の作成によるものです。

【質問1の回答について】                        

質問:「津波の荷重をどのように作用させ、どのような解析方法を用いて洋上風力発電施設の安全性を照査されたのか。」

事業者の回答:「津波荷重は暴風波浪時の波力に比べて小さいことを算定によって確認。円筒形構造物は甚大な荷重にはならない。」

回答に対する意見:「結局、円筒型タワー構造であるので、津波の影響は考慮していない(検討の必要がない)と回答されているようですが、これでよろしいのですね。円筒形であっても大型になると、津波荷重による影響は大きくなることが懸念されます。」

【質問2の回答について】                        

質問:「レベル2地震に対する適合性確認認定は、沿岸技術研究センターによって行われたのか。同センターの清宮参事によれば、洋上風力発電施設については、モデルの作成、液状化の検討、地盤ばね、減衰などの入力定数の取り扱い方など、まだ十分に固まっていないことを指摘されている。また東北大学の今村文彦教授も、洋上風力発電の設計法は研究されていないとおっしゃっている。第三者機関で安全性を確認されているのであれば、その根拠となる書類をご提示いただきたい。」レベル2地震:構造物の耐震設計に用いる入力地震動で最大級の強さを持つ。極めて稀であるが、非常に強い地震動)(地盤ばね:地盤の水平方向に対する抵抗力

事業者の回答:「第三者機関である、沿岸技術研究センターと日本海事協会による適合性確認を受けている。」

回答に対する意見:「沿岸技術研究センターはレベル2地震に対する適合性認証をされる機関のはず。ところが時刻歴地震応答解析線形解析となっている。レベル2地震では非線形解析となる。沿岸技術研究センターの清宮先生の指摘されている地盤剛性および減衰の非線形性、タワー、ブレードの非線形性を考慮していないのではないか。能登半島地震では、靭性の欠如したブレードが破断した。」地震応答解析:地震波には建物が応答する。固い建物は早く揺れ、柔らかい(粘度の高い)建物はしなってゆっくり揺れる。建物のしなり、揺れ幅、揺れるスピードは、地震波と建物の相互応答により決まる)(線形解析:材料の弾性領域内で行う解析。最初の降伏点までは力と変形が比例し、力がなくなると元の状態(弾性)に戻るが、降伏点を越えれば永久的に形が変わり(塑性)、外力が強すぎると破断する

【質問3の回答について】                          

質問:「能登半島地震の地震動を入力とした地震応答解析を実施されたようだが、その地震動はどこで観測された地震動なのか。入力されたのは水平成分だけなのか、水平と鉛直方向を同時入力されたのか。」水平成分:上空から見てどちらに揺れたか

事業者の回答:「震度7を観測した地震動を対象とし、応答解析(水平動、鉛直動も同時入力)を行っている。」

回答に対する意見:「能登半島地震の際、どこで観測された地震動を入力振動として使われたかをお尋ねしましたが、回答されておりません。また、当初は能登半島地震に対しても安全性を確認したというご説明でしたが、第三者機関による確認はなく、「自主的な取組み」と、かなりトーンダウンしていることが気になります。この際、安全性照査の結果を教えていただき、安心させてください。」

【質問4の回答について】                          

質問:「安全性を確認するためのシミュレーションに使われたソフトウェアの名称を教えていただきたい。安全性照査をどの部材のどのような耐力について行ったのか。港湾空港技術研究所の解析モデルの研究では、ナセルやブレードの安全性を評価できない。能登半島地震ではブレードが折損して落下している。響灘では能登半島より規模の大きな風車が計画されている。

事業者の回答:「地震応答解析にて安全性評価を行っている」

回答に対する意見:「安全性を確認するためのシミュレーションに使われたソフトウエア名称の回答がありませんでした。また線形計算による許容応力度設計(中規模地震を対象)しか行われていないと解釈されてしまいます。それでよろしいですか?」変形破壊に至らない安全と考えられる最大値

【質問5の回答について】                          

質問:「東日本大震災を経験して、我が国では津波荷重による構造物の設計方法の開発に着手されたが、津波荷重については具体的な設計法を解説する学会等の報告書はない。延長の長い防波堤を対象とした波力をどのように着床式洋上風力発電施設に適用するのか確認させてください。

事業者の回答:「質問1の回答に集約」

回答に対する意見:特になし

【質問6の回答について】                          

質問:「津波が発生すると多くの船舶が制御不能となって流され、倒壊した家屋が流されることは、東日本大震災、そして、能登半島地震で知られている。津波が発生すると、密に設置された洋上の風力発電施設に大型漂流物が衝突する確率は極めて高くなる。設計では、このような施設と漂流物の衝突はどのように評価しているか。」

事業者の回答:「風力発電施設の倒壊リスクは十分に小さいものと考える。」

回答に対する意見:「小型船舶が衝突したとしても倒壊に至らないことを確認されているようだが、どのクラスの船舶をどのように衝突されたかについて公開していただけないか。この点、秘匿性はないと思われる。」

 以上、設計について、できる限り情報を公開して、洋上風力発電に関する懸念を払しょくされることを切に希望します。

【「風力発電が野鳥に与える影響を考える会北九州」代表より】          

貴社の響灘洋上ウインドファーム事業計画については、環境アセス手続きの段階から、日本野鳥の会北九州支部が「このまま事業計画を進めるべきでない」と意見を提出してきました。その主な理由として、「響灘海域に生息する鳥類のバードストライクや生息放棄などの悪影響を及ぼす重大な懸念がある」「響灘海域は北九州市の豊かな生物多様性を有する稀な島嶼地域であり、25基の洋上風力発電設置によってその多様性が大きく損なわれる重大な懸念がある」などを指摘してきました。それでも貴社は何ら実効性のある対策を示さないまま、建設工事を開始したため、当会(風力発電が野鳥に与える影響を考える会北九州)としては、建設工事の中止を求める行動に至ったところです。今、風力発電による悪影響は近隣住民の健康問題や自然破壊と防災上の問題へと大きくなり、自治体を巻き込む社会問題にも発展しています。そのような状況の中において、貴社がこのまま建設工事を進め、野生生物や人への影響を軽視し、さらに防災上の懸念を棚上げするかのような姿勢は看過できず抗議します。響灘洋上風力発電に反対する市民も少なからずいることを踏まえて、引き続き建設工事の中止を求めます。なお、この意見書につきましては、洋上風力発電の安全性を広く市民のみなさんに問い、懸念を認識していただくために、貴社に提出後、公開させていただきます。ご承知おきください。

◆この意見書は共同出資企業の九電みらいエナジー(株)、電源開発(株)、西部ガス(株)、(株)九電工、(株)北拓の五社社長宛にも送付しました。また、この事業を誘致した北九州市の市長宛にも「市民のこえ」制度を利用して送付しました。問題の重大さを真摯に考えてほしいものです。

7月22日、この意見書を政府の資源エネルギー庁 再生可能エネルギー推進室に送りました。数々の問題点を棚上げし、積み残したまま、建設工事をこのまま進めていいのかと、今後の再生可能エネルギーの進め方の参考にしてもらうことを願って送付しました。北九州の小さな団体から届いた文書に目を通してくれるのかどうかもわかりませんが、中央政府から見て、特に波風は立っていないように見える?北九州市沖の洋上風力発電事業にも、鳥類への影響や防災上の懸念のため事業に反対する市民がいることくらいは知ってもらいたいものです。

 


“全国初” のイヌワシ生息地マップ公開のワケ

2024-07-08 12:16:05 | 日記

風力発電か?絶滅危惧種イヌワシか?両立のジレンマ

 

自然エネルギーバブルの最中、風力発電建設が相次ぎ、絶滅危惧種イヌワシの保護との両立が大きな課題となっている。専門家は「このままでは第2のトキになる」と警鐘を鳴らす。風力発電を推し進めてきた岩手県では、全国初のイヌワシ保護策を打ち出した。岩手県が今年3月に公表した地図が波紋を広げている。

    

 公表された地図には、絶滅危惧種イヌワシの詳細な生息地が示されている。1km四方で細かく色分けされ、赤色のレッドゾーンは繁殖地や餌場として使われている “特に重要な生息地” 。これまでは希少な生きものの生息地は、生態への影響を配慮して非公開が常である(密猟などを防ぐため)。岩手県が公開に踏み切ったわけは、このままではイヌワシが絶滅しかねないという強い危機感があるからだ。

「東北の空の王者」絶滅の危機

 イヌワシは環境省が定める絶滅危惧種。国内ではわずか500羽ほどしかいない。餌場となる開けた草原が減少し、その数は減り続けているが、岩手県はそのうち25つがいが確認されている日本有数の生息地だ。そんな中、風力発電の建設が問題となっている。

 近年、絶滅が危ぶまれる希少な鳥が、風車の羽根に衝突して(弾き飛ばされ)死ぬ事故が相次いでいる。今年(2024)4月、北海道幌延町の陸上風力発電でオジロワシやオオワシなどが、今年3月までの10ヵ月間で3羽が衝突死していたことがわかった。環境省によると、北海道では一昨年までの18年間で、風力発電の風車にオジロワシとオオワシが衝突する事故が73件発生、2008年には岩手県内でもイヌワシが衝突死している。

「このままでは第2のトキになる!」

「風力発電が建設されると、衝突を恐れて、発電所の周囲500mはイヌワシをはじめほとんどの鳥が近づかなくなり、餌場として使えなくなる。貴重な餌場が減ることで、イヌワシが飢餓状態に陥ってしまう。このまま風力発電の建設が相次げば、あっという間にイヌワシは滅んでいなくなる。第2のトキになってしまう。」と識者は言っている。

県が公表・・・1km四方の生息地

 風力発電に適した風が安定して吹く開けた草原に風車の立地を目指す事業者が増え、そこがイヌワシの生息地と重なるため、岩手県は再エネ拡大の一方、イヌワシ保護の方針も掲げている。どちらも環境を重視した政策だが、どちらかを無視することもできない。

 「本来、イヌワシなどの保護のために建設を避けるべきエリアに、多くの事業が計画されていることがわかった。計画段階で事業者に知ってもらう仕組みが必要だと考えた。」(岩手県環境保全課)つまり、赤や黄色のエリアでの風力発電建設を避けるよう促したというわけだ。

レッドゾーンに風力発電事業が5件進められている!

    

 しかし、今回の県の対応は、あくまでガイドラインの変更に留まっている。つまり、レッドゾーンへの建設を防ぐ強制力はない。さらに、これまで計画を進めてきた事業者にとっては、後出しのように「レッドゾーン」を指定されたことになる。「計画撤回」や「エリア外への計画変更」を考えている事業者は今のところひとつもない。

「再エネ拡大」も「イヌワシ保護」も、どちらも環境に配慮したものだが、この両立には大きなジレンマがある。国を挙げた議論が求められる。

【ブログ作成者から】                          

野生生物への影響を重視してこなかったことで、慌てて今回のイヌワシ生息マップの公表になったのでしょう。県の環境審査会の中には警鐘を鳴らしていた委員もいたでしょうが。しかも「このままでは第2のトキになる」と言った重鎮的識者もいましたよね。こうなったからには、イヌワシ生息地への計画禁止を条例化し、現在計画している事業者に県が丁寧に説明し、計画撤回を促すしかないでしょう。国を挙げた議論は全く期待できませんね。今の国会議員や官僚にどれほどの自然保護家がいるでしょうか。少なくとも私が接触した議員は動く気配どころか、全くと言っていいほど認識と危機感がありませんでした。当てにならない国よりは、イヌワシが生息する自治体が連携して、広域的で実効性あるゾーニングを作成しましょう。こう言ってる間にも、計画を目論んでいるでしょうから。

★ジレンマとは「相反する二つの事の板ばさみになって、どちらとも決めかねる状態」ですが、今は一方的に風力発電が進められている状態です。「風車かイヌワシか 」ではなく、イヌワシを優先させなければです。

 

 

 


目撃!ナベヅルが風車にはねられた!

2024-06-30 07:02:04 | 日記

北帰行のナベヅルの群れ

2023年2月15日鹿児島県長島町で、群れ約20羽の中の最後尾の1羽が、回転しているブレード(羽根)に接触、そのまま落下した!

 日本野鳥の会鹿児島県支部の役員は、「1年以上も前のナベヅルの衝突落下目撃情報だが、その瞬間の写真を撮っていないので、慎重を期して報告が遅くなり、今年の支部報6月号での報告になった。」また、別の役員からは「ツルのバードストライクは以前からあったが、野鳥の会会員が確認していない、証拠がない、ということで報告できなかった。今回、やっと会員が目撃したが、写真がないので信ぴょう性を疑われるかもしれない。」とも話しています。

☆彡ナベヅル(絶滅危惧Ⅱ類、特別天然記念物):マナヅルとともに、鹿児島県出水市の干拓地で毎年1万羽を超す数が越冬している。世界最大のツルの越冬地として知られている。地元出水市では、官民協働で保護に尽力している。

写真上:長島町の風車群(事業者H.Pより)と風車にニアミスのナベヅルの群れ(北帰行)

写真のナベヅルの群れ飛翔は今回の衝突落下時のものではありません。

 「ナベヅル衝突の場面に遭遇した野鳥の会会員によると、長島町の行人岳(ぎょうにんだけ394m)の展望所からは、出水平野を飛び立ったツルは、東側の八代海を渡るルートと、島の南西部に設置された風車群側を渡るルートがあり、北帰行をするツルの群れが観察できる絶好のポイントだそうです。その日は、2023年2月15日、子供さんと二人で10時頃ナベヅルの群れ約20羽を双眼鏡で観察していると、その群れが風車の横を通過しようとしていたその瞬間、最後尾の1羽が回転しているブレードに接触したと思われ、そのまま直角に落下して視界から消えてしまった、とのこと。本当に一瞬のことであり、二人顔を見合わせ、あっけにとられた出来事であったと、当日を振り返り話を伺いました。」(日本野鳥の会鹿児島県支部 支部報2024年6月号より)

【日本野鳥の会自然保護室の研究員から】                 

「やはり何らかの管理連絡体制を構築しないと、ツルのバードストライクが起きたかどうか、いつまでも確証を得られませんね。事業者によるパトロールの頻度を上げて、科学的手法で死骸探索調査を行うか、今回のように目撃した会員、または鹿児島県支部の幹部がすぐに発電所内に立ち入って、死骸がないかを確認できるようにする、といったところでしょうか。」

【ブログ作成者から】                          

16年間も稼働している風車群で、やっとツルのバードストライクが野鳥の会会員によって目撃されたわけですが、16年の間にどれほどのツルをはじめとする野鳥が犠牲になったのでしょうか。毎年9月には、越冬のために東南アジアに渡って行くタカ類も多数がこの地域を飛翔しているはずです。そのことに対して事業者は風車に衝突しないように配慮していたのでしょうか。早速事業者に訊いてみたところ、「運転開始前にツルの保護団体と協議し、ツルの主な飛翔コースを調査し、飛翔の支障にならないように、設置位置を変更した風車もある。定期的なパトロールも実施してきた。」「バードストライク防止策は特に実施していない。」とのことでした。16年前というと、風力発電は環境アセスの対象にはなっていなかったので、私たち保護団体も事業者も、野鳥への影響の危機意識も高くはなかったでしょう。ただ、環境アセスが始まってからは鳥類への影響については、どの事業者も一応配慮する姿勢を見せているので、長島町の風力発電事業者も、実効性ある衝突防止策を検討実施するべきでした。“他の事業者は何もしていないのに、いまさらなぜ当社が?” “環境省さえ実効性ある対策を示していない” “これ以上の費用はかけられない” と、言いたいのかもしれません。今もこの流れは変わっていません。「環境に(野生生物にも)やさしい風力発電」のはずですよね。違いますか?


「洋上風車は沖合20kmに」は問題あり!

2024-06-18 09:15:19 | 日記

「洋上風車は沖合20kmに建てれば鳥類への影響も軽減できるのではないか」

そんな簡単なものではない!

 日本に渡って来る野鳥は、東南アジアなどから南西諸島の島々を経由しながら渡ってくるものや、オーストラリア方面から広い太平洋を一気に渡って来るもの、また、朝鮮半島や中国大陸、そしてシベリアやアラスカなど、多方面から渡って来ます。私が住んでいる北九州が「渡り鳥の十字路」とか「渡り鳥の交差点」と呼ばれる理由でもあります。

 そして、野鳥たちが日本本土に到達すると、日本列島の沿岸域のコースを飛ぶ野鳥たちが多いようです。よって、海岸から5km前後に建てられる洋上風車は、野鳥たちにとっては移動の障壁となり、バードストライクも発生します。

 そこで、標記の「洋上風車は沖合20kmに」の説が出て来るわけです。しかし、そうは簡単にいかない理由は以下のとおりです。

1.20km沖合でも野鳥への影響は避けられない!           

朝鮮半島や中国大陸などから渡って来る野鳥は当然のようにはるか沖合から日本列島を目指して飛んで来ます。カモ類やハクチョウ類の中には日本海を渡って来るものもいます。対馬海峡を渡って来るものもいます。タカ類のハチクマは9月中旬~下旬に2万羽以上が長崎県五島から中国上海に一気に渡ります(下記の図参照)。さらにオオミズナギドリやカツオドリなどは、沖合の島で集団繁殖し、遠距離を移動しながら海上で餌探しをします(北九州市沖合の島で集団繁殖しているオオミズナギドリは、遠く韓国近くまで飛んで行っていた)。よって、20km沖合だからといって、野鳥へのリスクが軽減されるわけではない。遠い沖合に建てられた風車による野鳥への被害がますます闇に葬られるだけです。

 

 

2.問題は野鳥への影響だけではない!洋上風車の安全性が怪しい!    

「最大クラスの地震や津波にも耐えられる設計だ!」と主張する北九州市若松沖で建設中の着床式洋上風車25基の事業者に対し、その根拠について質問書を提出していましたが、事業者から回答が送られてきました(6月5日)。それを一読した防災専門家は「回答になっていない!」「円筒型なので津波の影響は考慮していないようだ」「能登半島地震に対しても安全性を確認したと言うが、第三者機関による確認はなく、“自主的な取り組み” とトーンダウンしている」とのコメントでした。他にも考慮が足りないものや、事業者の技術秘匿の上から回答できないなど、安全安心できない回答でした。当会としては、公開する自信のない設計による洋上風車の安全性は信用できないことから、事業者と誘致した北九州市、さらに共同出資企業に抗議文を送る予定です。

では、20km沖合の洋上風車の安全性はどうなのでしょうか。津波は海岸に近づくに従い、巨大になるので、沖合での津波の影響は大きくはないとしても、海底地震や台風の影響はかなりあることが想像できます。水深50m以上になると浮体式の風車となりますが、海底地震動や強烈な台風(陸上では想像できない秒速80mの台風も)によって、ブレードは折れ、風車を海底に繋いでいるチェーンが外れ風車が倒れ、海上のがれきと化し、航行する船舶の支障となるかもしれません。「20km沖合が良いと言うが、安全性を検証しているのか」「今はまだ洋上風車の安全性が保証できるような設計技術は確立されていない」と防災専門家は力説しています。

20km沖合の洋上風車が野鳥への影響軽減になるという主張に対しては、「そんな簡単なものではない」「安全性も怪しい」と言わざるを得ません。沖合遠くなれば、景観への影響や低周波音の問題が軽減されると、少し安心する方々もいるかもしれませんが、果たしてそれで安心安全な洋上風車と言えるのか、ますます風力発電事業推進への疑念が湧いてきます。


チュウヒの営巣に悪影響~北海道の風力発電

2024-05-27 11:13:17 | 日記

北海道最北端で野鳥のチュウヒが絶滅危機!

周囲で進む風力発電開発が営巣地の環境に影響

 湿地・草原の生態系の頂点に立つ猛禽類「チュウヒ」が絶滅の危機に瀕しているという報道を目にしました。再生可能エネルギー関連の事業が、国内最大のチュウヒの繁殖エリアである北海道北部に集中し、リスクを高めているとの指摘です。

繁殖数は国内のうち北海道だけで約8割。北海道稚内市や豊富町、幌延町にまたがるサロベツ原野は2万~2万4千ヘクタールの広さ。原野の中心には国内3番目の大きさを誇る6700ヘクタールの湿原もあり、渡り鳥たちには重要な繁殖地のひとつだ。その中には個体数が減少している絶滅危惧種のチュウヒの姿もある。警戒心が非常に強く、キツネなどの動物に襲われにくい湿地などを営巣地として好む。タカ科では国内で唯一、草原などの地上で繁殖する。

国内では1970年以降、チュウヒの生息エリアで開発が進んできた。営巣地を変えるなど適応する個体もあったが、チュウヒが好む湿地が乾燥化などによる植生変化で徐々に失われているだけでなく、風力発電事業の工事車両が営巣地の近くまで接近し、警戒したチュウヒが巣を放棄するケースがある。その様子を見ていたという豊富町の住民は「工事業者の対応は車のクラクション禁止を呼びかける看板設置のみ。資材を運んだ大型車が何台も行き交い、配慮しているようには見えなかった。」と語る。

チュウヒは風車の羽根よりも低い高さで飛ぶ(※1)ことから、衝突事故などの危険性は低いとよく言われるが、風車の数が増えると繁殖エリアに接近する可能性も高まるだけに「営巣地への影響が懸念される」と日本野鳥の会の研究員は言う。北海道が公表している宗谷管内の風力発電施設は2024年3月時点で206基。建設中や環境アセス中の計画分を加えると、将来的には最大777基まで増える可能性があり、巣を放棄するリスクの高まりは避けられない

【チュウヒ】タカ科の猛禽類(写真:ⒸT.ITOYAMA)                       

絶滅危惧ⅠB類(近い将来での絶滅の危険性が高い種)、種の保存法(絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律)指定種(※2)

     

 チュウヒの繁殖つがい数については、環境省や日本野鳥の会がチュウヒの保護を進めていく中で、サロベツ原野周辺で多くのチュウヒが繁殖していることが確認されました。2018年から2020年まで北海道全域での調査と本州での聞き取りを実施した結果、チュウヒは北海道で117つがい、本州以南で19つがい、計136つがいが繁殖していると推定されました。2015年当時の環境省推定結果に加味して考えると、30前後の減少が推測できるようです。(日本野鳥の会「野鳥誌」2021年1月号より)

(※1)風力発電事業者は「チュウヒは風車の回転範囲より低く飛ぶので影響は小さい(羽根に弾き飛ばされる可能性は低い)」と、決まりきったように言います(そう言わなければ影響は小さいと評価できないからでしょう)。確かに採餌の際は、草原の草丈より少し高いところを飛び、餌のネズミなどを探し回りますが、私たちの観察においては、しばしば風車の回転範囲の高さを飛ぶチュウヒを確認しています。特に、春先のオスメスの求愛飛翔は、回転範囲の上部の高さで飛翔することも多く、事業者の主張は適切ではありません。日本野鳥の会が環境省に提出した意見でも、「営巣地と餌場の間を飛翔する時は風車の回転範囲下部(20~30m)を飛ぶ」、また「チュウヒの幼鳥を襲う外敵を追い払う際には、風車の回転範囲上部を飛ぶ」としています。埋立地や草原での風力発電設置が増えている今、人知れずチュウヒも風車に弾き飛ばされているのではないかと思っています。残念ながら。

(※2)「種の保存法」:第2条には国および地方公共団体の責務が記載されています。「種の保存のための施策を策定し、施策を実施すること」と。義務付けはされていないようなので、これを遵守し、実効性のある施策を実施している自治体があることは聞いたことがありません。なので、チュウヒのつがい数が増えないのではないかとも....。実効性のあるチュウヒ保護のためには、少なくともチュウヒが生息している場所の近くには風車設置は禁止するくらいの法令を作って欲しいものです。設置禁止範囲は何キロ四方がいいのかは、識者、専門家に決めてもらうとしてです。

ヨーロッパでは100羽以上のチュウヒが風車に衝突死している!