「洋上風車は沖合20kmに建てれば鳥類への影響も軽減できるのではないか」
そんな簡単なものではない!
日本に渡って来る野鳥は、東南アジアなどから南西諸島の島々を経由しながら渡ってくるものや、オーストラリア方面から広い太平洋を一気に渡って来るもの、また、朝鮮半島や中国大陸、そしてシベリアやアラスカなど、多方面から渡って来ます。私が住んでいる北九州が「渡り鳥の十字路」とか「渡り鳥の交差点」と呼ばれる理由でもあります。
そして、野鳥たちが日本本土に到達すると、日本列島の沿岸域のコースを飛ぶ野鳥たちが多いようです。よって、海岸から5km前後に建てられる洋上風車は、野鳥たちにとっては移動の障壁となり、バードストライクも発生します。
そこで、標記の「洋上風車は沖合20kmに」の説が出て来るわけです。しかし、そうは簡単にいかない理由は以下のとおりです。
1.20km沖合でも野鳥への影響は避けられない!
朝鮮半島や中国大陸などから渡って来る野鳥は当然のようにはるか沖合から日本列島を目指して飛んで来ます。カモ類やハクチョウ類の中には日本海を渡って来るものもいます。対馬海峡を渡って来るものもいます。タカ類のハチクマは9月中旬~下旬に2万羽以上が長崎県五島から中国上海に一気に渡ります(下記の図参照)。さらにオオミズナギドリやカツオドリなどは、沖合の島で集団繁殖し、遠距離を移動しながら海上で餌探しをします(北九州市沖合の島で集団繁殖しているオオミズナギドリは、遠く韓国近くまで飛んで行っていた)。よって、20km沖合だからといって、野鳥へのリスクが軽減されるわけではない。遠い沖合に建てられた風車による野鳥への被害がますます闇に葬られるだけです。
2.問題は野鳥への影響だけではない!洋上風車の安全性が怪しい!
「最大クラスの地震や津波にも耐えられる設計だ!」と主張する北九州市若松沖で建設中の着床式洋上風車25基の事業者に対し、その根拠について質問書を提出していましたが、事業者から回答が送られてきました(6月5日)。それを一読した防災専門家は「回答になっていない!」「円筒型なので津波の影響は考慮していないようだ」「能登半島地震に対しても安全性を確認したと言うが、第三者機関による確認はなく、“自主的な取り組み” とトーンダウンしている」とのコメントでした。他にも考慮が足りないものや、事業者の技術秘匿の上から回答できないなど、安全安心できない回答でした。当会としては、公開する自信のない設計による洋上風車の安全性は信用できないことから、事業者と誘致した北九州市、さらに共同出資企業に抗議文を送る予定です。
では、20km沖合の洋上風車の安全性はどうなのでしょうか。津波は海岸に近づくに従い、巨大になるので、沖合での津波の影響は大きくはないとしても、海底地震や台風の影響はかなりあることが想像できます。水深50m以上になると浮体式の風車となりますが、海底地震動や強烈な台風(陸上では想像できない秒速80mの台風も)によって、ブレードは折れ、風車を海底に繋いでいるチェーンが外れ風車が倒れ、海上のがれきと化し、航行する船舶の支障となるかもしれません。「20km沖合が良いと言うが、安全性を検証しているのか」「今はまだ洋上風車の安全性が保証できるような設計技術は確立されていない」と防災専門家は力説しています。
20km沖合の洋上風車が野鳥への影響軽減になるという主張に対しては、「そんな簡単なものではない」「安全性も怪しい」と言わざるを得ません。沖合遠くなれば、景観への影響や低周波音の問題が軽減されると、少し安心する方々もいるかもしれませんが、果たしてそれで安心安全な洋上風車と言えるのか、ますます風力発電事業推進への疑念が湧いてきます。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます