風力発電か?絶滅危惧種イヌワシか?両立のジレンマ
自然エネルギーバブルの最中、風力発電建設が相次ぎ、絶滅危惧種イヌワシの保護との両立が大きな課題となっている。専門家は「このままでは第2のトキになる」と警鐘を鳴らす。風力発電を推し進めてきた岩手県では、全国初のイヌワシ保護策を打ち出した。岩手県が今年3月に公表した地図が波紋を広げている。
公表された地図には、絶滅危惧種イヌワシの詳細な生息地が示されている。1km四方で細かく色分けされ、赤色のレッドゾーンは繁殖地や餌場として使われている “特に重要な生息地” だ。これまでは希少な生きものの生息地は、生態への影響を配慮して非公開が常である(密猟などを防ぐため)。岩手県が公開に踏み切ったわけは、このままではイヌワシが絶滅しかねないという強い危機感があるからだ。
「東北の空の王者」絶滅の危機
イヌワシは環境省が定める絶滅危惧種。国内ではわずか500羽ほどしかいない。餌場となる開けた草原が減少し、その数は減り続けているが、岩手県はそのうち25つがいが確認されている日本有数の生息地だ。そんな中、風力発電の建設が問題となっている。
近年、絶滅が危ぶまれる希少な鳥が、風車の羽根に衝突して(弾き飛ばされ)死ぬ事故が相次いでいる。今年(2024)4月、北海道幌延町の陸上風力発電でオジロワシやオオワシなどが、今年3月までの10ヵ月間で3羽が衝突死していたことがわかった。環境省によると、北海道では一昨年までの18年間で、風力発電の風車にオジロワシとオオワシが衝突する事故が73件発生、2008年には岩手県内でもイヌワシが衝突死している。
「このままでは第2のトキになる!」
「風力発電が建設されると、衝突を恐れて、発電所の周囲500mはイヌワシをはじめほとんどの鳥が近づかなくなり、餌場として使えなくなる。貴重な餌場が減ることで、イヌワシが飢餓状態に陥ってしまう。このまま風力発電の建設が相次げば、あっという間にイヌワシは滅んでいなくなる。第2のトキになってしまう。」と識者は言っている。
県が公表・・・1km四方の生息地
風力発電に適した風が安定して吹く開けた草原に風車の立地を目指す事業者が増え、そこがイヌワシの生息地と重なるため、岩手県は再エネ拡大の一方、イヌワシ保護の方針も掲げている。どちらも環境を重視した政策だが、どちらかを無視することもできない。
「本来、イヌワシなどの保護のために建設を避けるべきエリアに、多くの事業が計画されていることがわかった。計画段階で事業者に知ってもらう仕組みが必要だと考えた。」(岩手県環境保全課)つまり、赤や黄色のエリアでの風力発電建設を避けるよう促したというわけだ。
レッドゾーンに風力発電事業が5件進められている!
しかし、今回の県の対応は、あくまでガイドラインの変更に留まっている。つまり、レッドゾーンへの建設を防ぐ強制力はない。さらに、これまで計画を進めてきた事業者にとっては、後出しのように「レッドゾーン」を指定されたことになる。「計画撤回」や「エリア外への計画変更」を考えている事業者は今のところひとつもない。
「再エネ拡大」も「イヌワシ保護」も、どちらも環境に配慮したものだが、この両立には大きなジレンマがある。国を挙げた議論が求められる。
【ブログ作成者から】
野生生物への影響を重視してこなかったことで、慌てて今回のイヌワシ生息マップの公表になったのでしょう。県の環境審査会の中には警鐘を鳴らしていた委員もいたでしょうが。しかも「このままでは第2のトキになる」と言った重鎮的識者もいましたよね。こうなったからには、イヌワシ生息地への計画禁止を条例化し、現在計画している事業者に県が丁寧に説明し、計画撤回を促すしかないでしょう。国を挙げた議論は全く期待できませんね。今の国会議員や官僚にどれほどの自然保護家がいるでしょうか。少なくとも私が接触した議員は動く気配どころか、全くと言っていいほど認識と危機感がありませんでした。当てにならない国よりは、イヌワシが生息する自治体が連携して、広域的で実効性あるゾーニングを作成しましょう。こう言ってる間にも、計画を目論んでいるでしょうから。
★ジレンマとは「相反する二つの事の板ばさみになって、どちらとも決めかねる状態」ですが、今は一方的に風力発電が進められている状態です。「風車かイヌワシか 」ではなく、イヌワシを優先させなければです。
とありますが、再エネ拡大は環境を破壊して営利追及するだけの事業です。ジレンマなんかではありません。再エネ賦課金とFITをやめればいいだけのことです。国が早く脱再エネを宣言しないと手遅れになります。