My Tokyo Sight Seeing

小坂やよい

国立 ロージナ茶房

2007-06-10 15:05:19 | Weblog


国立は不思議な魅力を持つ街だ。
駅南口、大正15年に建てられた赤い三角屋根の駅舎と、
その前から続く大学通りが、街の顔ともいえる。
大学通りは50mぐらいの超幅広の道路。両脇は見事な桜並木。
その道路を中心に放射線状に道が作られていて、閑静な住宅地が控える。
画廊と喫茶店が多く、教育熱心な住民が多く、
教育費にお金がかかるから出前を取ることが少なくて、すし屋はすぐに潰れるとも聞いた。

関東大震災で校舎を焼失した東京商科大学(一橋大学)が、移転地探しを小平学園都市を作った箱根土地(株)に申し入れたことから、開発が始まった。
その後、国立音楽大学や桐朋学園などが次々に移転、学園都市に。
大正末期に理想的な郊外都市の建設を目指して作られたというベースは、
街が発展して店舗が軒を連ねるようになっても、すっきりと整って、落ち着きのある街を可能にした。

その国立で昭和28年から営業しているロージナ茶房。
国立公民館ができるまでは公民館代わりに人が集まり、学生がゼミの教室代わりに使い、フロアのピアノを音大の先生や生徒が弾きと、サロン的役割を果たした歴史ある店だという。
店内は当時とさほど変わっていないのではないかと思われるほど、
今となっては店の全てが古めかしいのだが、けっこう客が入っている。
カフェ全盛の昨今、他の街なら、置いてきぼりをくった喫茶店になりかねない。
画家だったオーナーは、「店は客が作るもの。客が店に埋没しない、誰にとっても場違いでない店です」と以前に話していて、なるほどなと思ったことがある。
だが、客ではなくて店が埋没しそうな今の時代に、こういう店が健在であるということが、いかにも国立らしい。

店がある場所は、国立ではめずらしく路地のような趣きがあって、
一画は個性的なショップが立ち並ぶ。
ロージナ茶房の隣は、これまた昭和30年代オープン当事のままだという喫茶店「邪宗門」。
営業してるのかしてないのか分からないような外観で、扉を開けて入るのは少し勇気がいりそうだが、
薄暗い店内には船ランプや火縄銃、柱時計などの骨董品がぎっしり。
オーナーは元船乗りでマジシャンというユニークさ。
いずれもかって国立での喫茶文化を支えてきた店だ。