黒い波が建物を車を人をのみこんでいく
人の恐怖をのみこんで
波はますます大きくふくれあがり
襲いかかる
恐怖 絶望 怒り 焦燥 後悔 諦めの念が
怒涛となって空間をひずませ
轟音の亀裂がとどろく
夕暮れにさしかかった空を
扉をくぐりぬけた無数の魂が
光へと昇ってゆく
けれど くぐれずにとどまる魂は
地をたゆたう
この地上は まさに
天国と地獄のはざま
黒い波が建物を車を人をのみこんでいく
人の恐怖をのみこんで
波はますます大きくふくれあがり
襲いかかる
恐怖 絶望 怒り 焦燥 後悔 諦めの念が
怒涛となって空間をひずませ
轟音の亀裂がとどろく
夕暮れにさしかかった空を
扉をくぐりぬけた無数の魂が
光へと昇ってゆく
けれど くぐれずにとどまる魂は
地をたゆたう
この地上は まさに
天国と地獄のはざま
バイパスにともった灯りが 夜の中に光の道を映し出す
赤や青のネオンが 遠く滲んでいる
雨上がりの しめりけを含んだ夜風
私の顔をなで 私の髪を揺らす
ジェームス・ブラントの嗄れた悲しげな歌声が
ラジオから流れてきた
私は一人ではないのに なぜこんなにも悲しいのだろう
今夜は 月も出ていない
やり過ごす毎日が 疲れだけを運んでくる
ここに私の求めるものは 何ひとつないのに
何故ここにいるのだろう
それは どこに行けばあるのだろう
わかっているはず・・・
そんな場所があるはずもなく
このささいな日常の中から フタをこじあけて
自分で探し出すしかないということを
迷路のような人生の闇
この闇にまぎれて 私は迷子になりそうだ
今夜は 月も出ていない
高い月 白い月
凍る夜空に 雲はなく
天蓋の夜幕に 浮かぶ月
地に私 こごえる指先
白い息
夜の静寂(shijima)に ひとり立ち
見上げるわたしを 照らす月
対峙する 月の彼方に
いっさいが
見えず 聞こえず ありもせず
ただ 月だけがそこで
白く輝く・・・
年とって 肉体の目がよく見えなくなったから
直感でその人全体を感じとるようになった
この頃 耳の聞こえが悪くなったから
心でその人の声を聴くようになった
すると 強い言葉の陰にある心細さや不安を
静かな言葉の奥にある強さや信念を
感じとれるようになった
人は なんて多くの鎧で心を覆っているのだろう
なんで自分の心を 素直に出さないんだろう
ひとこと「愛して」って言えれば
きっと 人生はもっと簡単になるんだろうに・・
私は なにげなく日々を過ごしているけど
いくつもの過去生で 遂げられなかった切望や叶えられなかった夢を
きっと一つ一つ無意識に達成しながら生きているのだと思う
生れ落ち 両親・祖父母の確かな愛情に包まれて成長し
友を愛し恋もし仕事に出会い 結婚して子をもうけ家庭を築いた
様々な困難を乗り越えて 今 この家族と共に生きている
草原で戦ったこともあったろう
深い森の中で魔法使いだったこともある
幼い子供と二度と会えなかったこともあったに違いない
中国で紙を漉いてもいただろう
教師で子供達に囲まれていたこともあった
歌を唄う旅芸人だったり 教会のシスターだったり
海辺の巫女でもあった
だから私は 静けさにひかれたり 植物が好きだったり
塾の教師のアルバイトをしたり 美しい和紙にひかれたり
草原や山が好きだったり 子供が愛おしかったりするのだろう
魂にぬりこめられた記憶が一つ一つ現実になって
人生に連ねられていくのだ
でも私は今 こんなに幸せだから次の人生に望むものは何もない
願わくばこの幸福を ふれるすべての人々に
「愛」というかたちでわけられたらと思う