(有)山内牧場

青森県八戸市で競走馬生産をしている山内牧場の生産馬、繁殖牝馬、繋用種牡馬についてのブログです。

南関女傑の系譜

2007-12-06 12:54:46 | Weblog
ウチの牧場の歴史を語るうえで、欠かせない馬がいる。その馬の名はシャドウ(表記はシヤドウ)。父ウエンセスラス・母レッドシャドウ(母父バーバー)という血統で、1976年生まれの鹿毛の牝馬だ。
シャドウの祖母にあたるインザシャドウズは先代の社長が英国から輸入して来た牝馬で、昭和44年、バーバーの仔を受胎確認されるも、双仔と判明する。競馬の世界では双仔は体質が弱く、競走馬になる確率も低いとされ、両方潰すか、その覚悟で片方を潰すというのが普通だ。しかし、先代の社長は冒険心に富んだ人物だった。『やってみなきゃわからない』。そして翌・昭和45年レッドシャドウ・ニューシャドウの双仔が産まれる。
ニューシャドウは岩手競馬で走り、引退後、母となって戸塚記念を勝ったサガミトキマサを産んだ。
一方のレッドシャドウは南関川崎の高橋正豪厩舎に入厩。入厩後わずか18日間で能力試験合格という非凡さを見せたが、双仔特有の弱さか脚元に故障を発症。引退して生まれ故郷へ帰って母となった。
そのレッドシャドウの3番仔がシャドウである。競走年齢となったシャドウは社長が馬主となり、母と同じ川崎・高橋正豪厩舎に入厩した。デビュー戦は追い込んで届かずの4着も、素質を見抜いたのは高橋正豪調教師だった。気性がキツい、ということもあったが、騎手出身ということもあり、シャドウの調教には師がすべて乗った。勝ち上がったシャドウは、カミソリの斬れと呼ばれた末脚で、浦和桜花賞、関東オークスの南関牝馬クラシック2冠を制する。その後、旧4歳牝馬の身で古馬混合重賞に挑戦、報知オールスターC、キヨフジ記念と古馬勢をまとめて差し切るという女傑ぶりを見せる。私も何度かVTRでレースを観たことがあるが、最近で言えばブロードアピールのような斬れ味を持った馬だったと思う。そしてシャドウは通算29戦6勝の成績で引退、繁殖牝馬となる。
母となってからのシャドウは競走馬時代に負けず劣らず優秀だった。産駒のレオサイレンス(父ジョンデコーム)は新潟3歳Sで2着に入り、芙蓉S(OP)を勝った。ノーパスシャドウ(父ノーパスノーセール)は母と同じ舞台・浦和桜花賞は3着、関東オークスは4着と素質の片鱗を見せた。そして何より代表産駒となったのがカシワズプリンセス(父ロイヤルスキー)である。この馬は産まれた時から飛び抜けていて、社長が最後まで売るのを渋っていたが、結局先代に従う形で売ることになった。そのカシワズプリンセス、東京3歳優駿牝馬を勝ち、翌年選んだレースは何と牡馬クラシック。京浜盃、黒潮盃、羽田盃を勝つ女傑に成長する。
シャドウは23歳まで種付されたが、4年連続不受胎となった年に繁殖を引退。余生を過ごした。シャドウに関しては社長の思い入れが深いことはナスノアケボノの回で書かせてもらった。社長の自宅の応接間には今でもシャドウの全身写真がパネルで飾られている。シャドウの系譜~南関女傑の系譜。ナスノアケボノは南関で7勝を挙げた活躍馬である(重賞には手が届かなかったが)。いつかこのシャドウの牝系からはまた大物が出て来ると信じている。またそういう馬を作るべく、日々努力したいと思っている。シャドウもその日が来るまで見守っていて欲しい。