やまびこ農場ブログ~北沢ニジマスセンター・食べ物工房旬~

やまびこ農場・北沢ニジマスセンター・食べ物工房旬のブログです。ようこそいらっしゃいました☆

バスと電車に乗って帰ってきました。

2009-03-31 22:25:10 | Weblog
一陣の風、シオンとかあちゃんはどうなるのか。残された父ちゃんは、どうやって一人でジャガイモの種まきをするのか。ちょっとシリアスな農業の現場を題材にしたストーリーテリングです。

今日はちょっと一休み。
最近車に乗らないで、都会から自分の携帯も通じない山の中まで帰ってきました。
どうしてかえってこられたでしょうか。

一回目はヒッチハイクでした。変なおばさんが親指上げてもとまってくれるくるまは、
まあ、100台に一台でした。

定期便ならいいかと思いましたけど、どのくるまも知らん振り。

きれいな車のお姉さんもだめ。車に宣伝の入ったおじさんもだめ。

もう仕方ない、暗くなったらどうかしようと思ったときに、工事現場風のトラック

が止まってくれて、「姉ちゃん、どこにいくんだよ。」といいました。

私、おばさんなんだけど、とおもって、ちょっとびびったけど、

汚い助手席に「よっこらしょ」と乗り込みました。アンガイ親切。助かった。

目的地のちょっと前までいってくれて、後は、歩き。

二回目は、電車とバス。これが残ってました。まあ電車はあるとして、

バスが一日に平均して二時間に一本ほどあって、これに乗ってきました。

とにかく、車を使わなくても家に帰れたことに、不思議。

バスの運転手さん、降りるとき親切に教えてくれました。

もう少しバスはがんばってもらったら、またバスの時代が来るかも。

もう歩くのは、怖くありません。今度、おばさんが親指立ててたら、

とまってね。
お願い。それ私だから。



一陣の風9

2009-03-27 22:07:54 | Weblog
かあちゃんは、次の日シオンのアパートを出た。

持ち物は少しのお金の入って黒いバッグだけだった。まだ家から出て、少ししか

時間がたっていないのに、かあちゃんは疲れた。

自分の粗末な畳の部屋と、自分のせんべい布団が恋しかった。朝の鳥の声で目覚め

るすっきりしたあの感覚が懐かしかった。

桜の木に咲く花を見て歩くうちにかあちゃんは、シオンの通る墓所に導かれた。

桜の花びらがかあちゃんのバッグに一片落ちた。

「ここは、私のいるところではないのかもしれない。」

春の日差しは暖かかった。桜の花は誘うように散っていた。

かあちゃんは、道路から離れて、わき道にそれた。そこは、さまざまな墓石が

並んでいた。十字架のたつ墓だったり、ライオンの彫像が二体墓の入り口にあるよ

うな大きな墓だったりした。

芝生の刈り込まれた墓所を歩くうちにかあちゃんは小さな丸い黒い石の墓が

目を引いた。

枯れた芝生の上に黒い丸い石だけが置かれていた。それだけだった。

そこに、何かが書かれていた。

「ここに至る者。汝、生きて帰りて皆に告げよ。我、汝のために死すなり。

汝、我のために生きよ。」 

それはかあちゃんの魂に触れた。なぜか涙が出た。

そこには、春の風に桜の花びらが花吹雪となって散っていた。






ジャガイモまきパート2

2009-03-27 19:20:09 | Weblog
こんにちは


ジャガイモまきも終わり、
いよいよ水稲が始まろうとしているやまびこ農場です。


写真は、ジャガイモ撒きの風景です。
機械の、隣ではカルビーのフィールドマンが、お手製の説明書をもって
指導をしています。
みんなで畑で勉強会ですね


これは、以前ご紹介したマルチというものと違う撒き方です。
普通に植えていますね
私たちは、機械を使ってジャガイモ撒きをします。
写真に見える、緑色の機械です。

この機械、精度がよく優秀です。
すばらしいです。
本場ものは違うわーと思います。
(こないだのマルチの反省より)



この機械も、一人後ろに乗ります。

ドライバーAくん
撒くときに注意している点はなんですか?
芽が出ても、いろいろ機械作業が多いからラインを真っ直ぐ引くこと。
ありがとうございました。頑張ってください!



見れば見るほどに思いますが、
ジャガイモの病気とかでないで欲しい。
天気に恵まれて欲しい。
豊作になってください

ではまた

一陣の風8

2009-03-26 22:19:01 | Weblog
シオンのアパートでかあちゃんはたくさんのデパ地下で買った食べ物を

並べて待っていた。

なかなかシオンは帰ってこなかった。かあちゃんは待っていたがとうとうお腹

がすいてしまったので、食べようとしたときにシオンが疲れきって帰ってきた。

二人は、黙って食べた。

「なんか、もっとおいしいものだと思って、高いお金出して買ったのに、

あまり、おいしくないね。」と、かあちゃんはいった。

「なんか、残り物みたいな味。このジャガイモポテト、おいしくないね。

ジャガイモの新鮮さがないよね。もっと、ジャガイモって甘いよね。

小松菜も、今の小松菜は、冬からさめたつぼみを持った野菜だから、エネルギーの

かたまりみたいなのに。」

黙って聞いていたシオンは、いらいらしていった。

「なんで、そんなに文句言うんだよ。ここじゃ、こんなものしか食べられないんだよ。誰が、作ってくれるっていうんだ。

かあちゃんよ。キュウキュウショップってしってるかい。99円で何でも

あるんだよ。もちろん野菜も、食料もね。まさしく、都会の救急ショップだよ。

そこで、命をつないでんのさ。みんながね。」

まるで自分に対して言っているように、自嘲的にシオンはさらに続けた。

「文句ばっかり言ってないで、帰れよ。くそばばあ。

ここは、くそばばのいるところじゃねーよ。」

     ****

遠くから聞こえる、潮騒のような音は、それは、都会のうなり声だった。

静けさを取り戻した都会の夜に、かあちゃんは眠れない夜を眠ろうとした。

布団のない、コタツにもぐりこんで、一枚の毛布に、頭までもぐりこんだ。

昼間の労働はいつでも、かあちゃんに千金の値の眠りを運んできたが、

今夜は隣で眠るシオンのことが気になって、都会のうなり声も耳について眠れなかった。

気がつくと、窓のカーテンの外は明るくなっていた。


つづく

一陣の風7

2009-03-25 22:26:26 | Weblog
「かあちゃん、どうしたのよ。なんでこんなところにいるのよ。」

シオンが仕事先から帰ってみると、アパートの階段の郵便受けのところに、

人影があった。

「何ちょっと、あんたの顔を見に来て、ちょっと東京で買い物なんかとね。」

とシオンのかあちゃんは口ごもった。しかし、すぐに、

「シオン、ちゃんとやってるの。何食べてるの、様子を見に来たのは本当よ。」

といった。

「じゃがいもの種まきおわったの。」とシオンは聞いた。

「いやまだだよ。」

「今頃、東京なんかに来て大丈夫なの。いそがしいんじゃないの。」

かあちゃんは、こんなところまで来て、ジャガイモの話をとっぱなからされたの

で、シオンの顔をじっと見た。

シオンはその視線を感じて、ちょっと赤くなった。

「ほんとに、何しに来たんだよ。何もかあちゃんに用はないよ。」とシオンは言った。

        ****
 
かあちゃんは、息子の邪険にされ、それでも一晩遠慮して、息子のアパートに

泊った。二人は黙って、近くのコンビニから買ってきた夕ご飯をガサガサいって、

袋を開けて、黙って食べた。

次の日、シオンは、朝早く起きると、すぐご飯も食べずに仕事先に行ってしまった

た。かあちゃんは、シオンの部屋を見た。

玄関を上がると、すぐトイレと風呂があって、その先にキッチンとリビングがあ

て、その奥が寝室人っていたが、窓はブラインドが下りたままだった。

何でもかんでもベッドの上に積み重なって、カップめんの食べ残しが二三個転がっていた。

キッチンはお湯を沸かしたあとしかなく、ビニール袋に満杯のごみが転がっていた。

かあちゃんは、お風呂とトイレを掃除してごみを出して、部屋に風を入れて、片付けた。

それが終わると、かあちゃんは、駅まで歩いて、当てもなく、出かけた。

「疲れたわ。いつももっと歩くけど、こんなに疲れたことはない。どこか休むところがないかしら。」

と思っても、休むところも、水を飲むところもなかった。お金を払って、どこかの

お店に入るしかなかった。とにかく、デパートに行って、いってみたかった、

地下の食料品売り場に行ってみて、どんな味かするか食べてみたかったものを

たくさん買った。

荷物を両手に抱えて、シオンのアパートの戻ったときはかあちゃんは本当に

疲れきってしまった。

つづく



一陣の風6

2009-03-24 21:54:52 | Weblog
第二章 桜の花の咲くころに

成熟して、もはや散るしかない花を咲かせた社会において、いかに生命力に乏しい

人間が群がろうと、そこには、確かに一つ一つの人生があった。

人波のの一つ一つの顔には、一つ一つの生き死にがあった。その中の顔にシオンの

顔もあった。

通勤するのにシオンは歩いた。駅までの長い道を、歩くとさまざまな季節の表情

を、都会の町は見せた。

ささやかに空間に人はさまざまは植物を、時には、花をさかせていた。

その中で、シオンはいつも墓所を通っていった。

墓といっても、都会の墓は木々の生い茂った林のようなもので、シオンは

その中を通るのが好きだった。

朝は先を急いで、夜は夜更けになって、墓所の中を歩いて通っていった。

墓所の中央をつらぬいている道路があった。その両側に桜の大木が植えてあった。

ソメイヨシノだ。

桜の枝が寒空に写っていたのが、その枝が赤みを帯びて、いつしかピンクに変わっ

た。そして桜の花が咲いた。

      ****

「いつか、桜の花の枝を思いっきり折って、水ん中に入れといたら、

母ちゃんが怒ってたな。もったいないって。せっかくさいたのにってな。」

とシオンと思い出した。

「今日もおわった。僕は、能力がないのだろうか。僕は、なんでもできると

思って、自信があったのにな。でも、同僚のあいつらの仕事の仕方を見て

いると、僕とは次元がちがう。それほどできるよ。」

自分のアパートでひっくり返って天井を見ていたシオンはウトウトした。

「そうだ。うちでは天井裏から、星が見えたっけな。星を見ていると小川の

せせらぎの音が聞こえたな、夜明け前は、森の中の小鳥が、ありったけの

力でさえずっていたっけ。何て鳥か知らんが、いつも3回ピーピーピーと鳴く声で

めがさめたんだ。雨の日は、屋根に降る雨の音が聞こえた。風が逆流して

ストーブの煙が部屋の中に入って、いつもおれの服は煙のにおいがしたんだ。」

シオンは、はっと目が覚めた。「おれは、今どこにいるんだ。」

と、暗闇に目を凝らした。「ここは、本当におれのいる場所なのか。」







カルビーのフィールドマンと共に・・・熱きジャガイモ作り。

2009-03-21 12:38:19 | Weblog
こんにちは今日はフィールドマンについてです。

私たち、やまびこ農場では3月はジャガイモの種まきのシーズンです。

そもそも、このジャガイモを誰が買っているのか?


疑問に思いませんか?


ご質問にお答えしましょう!


答えは、「カルビー」です。


そうそう、あのポテチのカルビーです。
カルビーならジャガイモたくさん使うことに納得でしょう


さて、フィールドマンですが、訳すると「畑人」。
(別に訳す必要ないけど)
つまり、カルビーの社員さんで、カルビーが購入するであろうジャガイモ畑を周り、農家の人へジャガイモ指導をする人のことです。


それにしても、
さすがカルビー
さすが大企業

情報と知識、そして熱意。
すばらしいです。
頭が下がります。

写真は、雪が降っている中、宇都宮からジャガイモの蒔き付けに駆けつけ、
きちんと蒔けているか調査・計測し、指導本を持ってきていろいろ教えてくれています

「ちょっとー、このジャガイモとイモが近いですねー均等でなくてはいけません。」
「そうけぇ?どしたっぺ??」
「たぶん、この種の配置から考えると、プランティングマシーンのあのスライドの調整がうまくいってないと思います。」
「へぇ。そおけ。よし調整してみっか。」

って感じの会話かな

とても、熱心です。
時々そんなに・・と思うことがあっても、よい品を作ろうと一生懸命で、真摯な姿を見ると、できる限りこたえたいと思うのです。

頑張れ!フィールドマン
頑張れ!畑人

みんな、ポテチはカルビー!
カルビーをよろしくー


ではまた

ジャガイモの種まき

2009-03-21 12:08:04 | Weblog
こんにちは今日は、農作業の新着状況についてお知らせします。



やまびこ農場では3月はジャガイモの種まきに追われています。
3がつの下旬からは稲の準備が始まります。


ジャガイモには、種芋をカットしてそのまま巻く方法と、「マルチ」という蒔き方があります。
写真はマルチの作業風景です。


担いでいる棒のようなものは、マルチビニールが巻き付いていた芯です。
これで、ジャガイモ&土玉バッティングしました



マルチとは、写真を見てのとおり、ジャガイモのためにベットを作る蒔き方のことです。土を盛り、その上に「マルチ」と呼ばれる黒のビニールシートを巻きます。


マルチにすることで、
①暖かいので、ジャガイモの成長が早く収穫も早くなる。
②黒にビニールなので雑草が生えない。


と、言った利点があります。
あ、マルチは、ジャガイモの芽が出るところはきちんと丸くカットしてあるのでご心配なく。


見ての通り圧巻のマルチですね。
見渡す限りです。
写真に入りきらなくて、右も左もまだまだマルチのラインが続きます。
この広さなら、普通は3日以上かかるでしょうが、私たちはそんなことしません。
なんせ、ジャガイモに命かけてますからね

この写真にあるトラクターは、通常ドライバーが一人、後ろの席で種を選別する人が一人です。
この機械は大変抜けが多く(ジャガイモの種がきちんと落ちないこと)、一人で穴埋めすると蒔くスピードが落ちます。


でも私たちは、そんなちんたらやってられっか



ということで、後ろには2人乗り。
ドライバーマジで高速・・・。
超ハエーですよ。
はい。



後ろに乗っていた方としては、
揺れるし、
早いし、
風強いし、
マルチ切れるし、
ライン曲がるし、
種重いし、
やっぱり難しい・・・



マジで大変でした。
ハナクロブーどこじゃないですよ
浮浪者です。




やまびこ農場頑張ってます。
どうぞ応援よろしくお願い申し上げます。
暇な人、6月下旬から7月上旬まで、ジャガイモ堀手伝いに来てね
待ってるよー



ではまた

一陣の風5

2009-03-19 20:35:04 | Weblog
「何ボーっとしているのよ。しっかりしなと、」と母ちゃんはいった。

「あんたがジャガイモやるっていって、買った機会の代金はどうするのよ。

シオンは出て行ってしまうし、機械代の借金だけ残って、それでもじゃがいもを

やるつもりなのかい。」

「いや、シオンはやるっていったんだよ。あいつがやるっていったから、ジャガイ

モの種まき機械と収穫機械を買ったんだ。トラクターは、寿命でぼろになったから

かったんだ。」

「何言ってんのよ。それだけの設備投資にどれだけの採算があるって言うの。」

「しかし、この機械がなければ仕事はできないんだ。」

「そうやって、後先見ずに仕事ができないといっては、機械を買ったのよね。

支払いの月末になれば家中のお金をかき集めて、払いましたよ。

時には、子供のお金だって、手をつけたことがありますよ。」

「しかしな、機械のお金で生産物ができて、それが売れて、生活ができた

のも確かではないか。とにかく、支払いでおいたくられたとしても、

それで家族は食ってきたんだ。それを良しとしないとな。それに気持ちの持ち方し

だいで、生活はばら色にも灰色にもなるもんだ。」

「何ですって、これがせいかつですか。」ととうとう母ちゃんは頭にきた。

「いつもいつも仕事仕事で、私は、一人で子育てしたんですよ。

あんたは、自分の仕事仕事というだけで、自分がやったと自己満足できたんですよ

それが家族との生活ですか。ここには、家族で価値を分かち合うゆとりはないです

よ。今の言葉で言えば、あんたは、完全な自己中なんですよ。。

シオンが出て行くのもわかりますよ。こんなところに誰だっていたくないですよ。

私だって出て行きますよ。」

父ちゃんは、ここで、母ちゃんをなだめすかせば事は収まったのに、男のメンツ

がたたないとムカッとしていた。

事はどんどんエスカレートして、とうとう母ちゃんは、シオンのところに出て行く

と言い出した。

「大体私がここにいるのだって、お情けなんだから。自分がどれだけ、

くそなのかわかんないのかね。」


(スカトロジーが出てくれば大体事は穏やかにすまないのが世の定めよね。)


つづく


一陣の風4

2009-03-17 22:07:54 | Weblog
いつしか紫色の原生したアスターは、色をなくして 枯れ草色になって、
木枯らしに、かさかさと乾いた音を立てていた。

シオンの父ちゃんは畑の作付けを考えていた。つめが汚れるのが嫌になった人間は、自分の食料を作るのをやめてしまっていた。

畑は、耕作放棄地となってせいだかあわだちそうが林立する荒れ放題の畑となっていた。

そこをシオンの父ちゃんは借りていた。しかし耕作放棄地になるようなところは、条件が悪い。

日当たりが悪いとか、狭いとか、水はけの悪い畑では、トラクターがのめりこんでしまう。

「ヤバ」と思った瞬間に、トラクターは畑の真ん中で、水の含んだ柔らかい部分にはまってしまう。

そうすると、泥の中で、車輪が空回りしだす。ギアをローに入れて徐々に上がればよいが、這い出そうとすればするほど、泥の中にトラクターの車輪が沈み込んでいく。

「だめだ。ローにして低速回転だよ、」ハンドルを握り締めて汗が出てくるが、
おしまいだ。

「父ちゃん、トラクターがぶんのまったよ。トラクターが4トン車もってきて。
それに長いワイヤーも。」

この長いワイヤーをトラクターにつけて、もう一台のトラクターが4トン車で引っ張り上げるのだ。二人の呼吸が合わないとワイヤーが切れてしまうこともある。


こんな悪戦苦闘の畑でさえも、地主にとっては、財産であることには代わりはなかった。借りることさえ信用がなければできず、借りれば借りて、畑を荒らすことはできなかった。

地主は、何かしら作物を作くられていて、自分の畑がきれいになっていることを期待した。

父ちゃんと母ちゃんはそばと小麦の作付けを考えた。8月種まきのそばは、11月に収穫し、その後、すぐに小麦をまいた。

その小麦は、翌年の7月に麦秋を迎えた。

草することで年間をとうして、畑を利用できたが、小麦は売ることができなかった。

小麦の生産は政府管理下に入らないと売れなかったのだ。乾燥調整された小麦の何百袋の小麦は捨てられた。

「何でこうなるの。」と母ちゃんは嘆き、シオンはその袋を黙って捨てた。

「シオンよ。麦の代わりのジャガイモはどうか。一反あたりの収量は多いし、契約栽培の話しが、あるんだよ。一キロ50円だ。」

「何で、そんなにジャガイモが安いんだよ。」

「生食用ではなく、ポテトチップ用で、畑取引だ。選別なしで、鉄コンテナで集荷場まで、トラックでは運べばいいんだ。買ってくれる所があればいい。

そうでないと、また捨てるようだ。」

「おれやだよ。あの何千万個のジャガイモを手で拾うのは。うなされたよ、あの炎天下の仕事は。」

「機械化の体系はできているが、初期投資がおおきすぎる。やるか。シオンよ。」

「今のおれたちの条件下では、ジャガイモしかないだろうね。」

    ***
「なに、ぼーっとしてんのよ。」という声で、父ちゃんは、我に返った。



つづく