遊行吟遊

短詩型作品等

プラスチック標本    届かぬものへの憧憬

2010-11-26 19:37:14 | 詩・短詩
プラスチック標本を眺めていると
標本を作ったひとの
心の原点に 接触できそうな
瞬間がある

出来るだけ長く形にして
留め置こうと願う執拗なまでの欲求
そして その奥に潜む
届かぬものへの 深い絶望に似た憧憬

胸の奥深く沈め
いつまでも抱き続けたいと願う
怨念にも似た憧憬は
この標本のいったいどこに隠れているのだろう

プラスチックの標本が
美しいのになぜか哀しいのは
決して終わることのないはずの形の行方が
眺めれば眺めるほど ますます
遠ざかってしまうその時間性である
                        (1972)



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