遊行吟遊

短詩型作品等

冠雪に寄せて

2010-11-25 19:23:26 | 詩・短詩
眩しい朝の陽射しの中で
岩の上に取り残された 冠雪が
岩の間を 水となって自在に流れていく仲間たちを
見送っている

昨日は 一日中 雪暗れで 
どんよりとした暗雲が 空一面を覆い
無数の粉雪が 絶え間なく
泉のように宇宙の底から湧き上がっていたのに

それが今朝はどうだろう
打って変わって 無風快晴の穏やかな朝だ
昨日の悪夢なぞそ知らぬふりの
天晴れな転身ぶりだ

天は 一体どんな傷を癒そうとして
これほどまでに吹きすさみ荒れすさんだ姿を
わたしたちの前に
曝して見せたのだろう

たまたま岩に吸われた冠雪だけが
こんなにも無垢に浄化された少年の臀部を象って
天啓の重みに耐えながら
爽やかに 流れていく仲間たちを見送っている
                        (1990)


 


コメントを投稿