本堂の濡れ縁に
長い時間
平伏している修行僧の姿があった
修行僧は
一体何を捨てようとして
ここに 身動きもせず
ひたすら 平伏しているのだろうか
踝を返そうとしたとき
わたしは
突然 暗黙裡に 了得した
残りの人生を
生きゆくに 去りゆくに
要るものは 何か
十歳の少年でしかなかったけれど
新緑に包まれた鎌倉の
檜皮葺の深い境内の中を
忘れものを探すように 歩いていた
(1966)
長い時間
平伏している修行僧の姿があった
修行僧は
一体何を捨てようとして
ここに 身動きもせず
ひたすら 平伏しているのだろうか
踝を返そうとしたとき
わたしは
突然 暗黙裡に 了得した
残りの人生を
生きゆくに 去りゆくに
要るものは 何か
十歳の少年でしかなかったけれど
新緑に包まれた鎌倉の
檜皮葺の深い境内の中を
忘れものを探すように 歩いていた
(1966)
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