遊行吟遊

短詩型作品等

鎮魂

2010-11-04 11:03:05 | 詩・短詩
この世の修羅場には 慣れてしまったから
日の目を見ないくらいの事で嘆きはしない
でも とうの昔に切り捨てたはずの魂が
今になって蘇えり
血の匂う恨み言を吐く
私を返せ 私を返せ

病みはじめた「不惑」は
ネオンに彩られた歓楽街の地下に潜り
黄昏に向かう肉体を
若かった魂の傍らに ひっそりと寄り添わせ
労わりと慈しみを求めようとする
奇妙な内部劇


「時間」と「意識」のあいだにある
深淵の暗い闇の底から
聞こえてくる
聞こえてくる
イザヤの声
「人の子よ、嘆け。心砕けるまでにいたく嘆け」

嘆け 嘆け 心砕けるまでに
嘆くがよい 存分に
初々しい心の気配が
蘇えるまで

                        (1989)



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