
昨日に引き続いて、というか、ようやく本題の菅野よう子氏についてのワタシの印象を述べたいと思います。
彼女は“教授”に比べるとはるかに無節操なクロス・オーバーぶりを見せてくれる作曲家ですねぇ。あまりに身軽にジャンルの垣根を飛び越えていくものだから、どこに彼女の実態、つまり彼女らしさがあるのかがいまいちよくわからない。特に器楽作品(室内楽作品、オーケストラ作品)においては既存の作曲家の二番煎じばかり聴かされる思いだ。なにか、単にその引き出しの多さを見せびらかされているような印象をどうしても持ってしまうのです。ワタシは“菅野よう子版音楽百科事典”を聴きたくて彼女を聴いているのではないのに・・・。

彼女はあの“教授”よりも器用なのは確かだと思います。けれども、同時に“教授”のような、これは菅野よう子のメロディーだ!!と思えるような“刻印”、“菅野よう子印”といったようなものがあまりない。だから一度彼女の音楽をひととおり聞いても一部の作品を除いてあまり耳に残らない。まるで、そのあまりの器用さが彼女のウィークポイントであるかのようだ。
『ブレンのサントラ2』トラック2の曲なんかひどいよ。あれじゃヴァンゲリスという人が音楽を担当した映画『ブレードランナー』のオープニングテーマの焼き直しじゃん。トラック6の“Warriors”も途中でモーツァルトの有名なト短調のシンフォニーとまったく同じ調性・同じ節回しで登場。トラック13の“Morning grace”なんかは途中、ベートーヴェンのピアノソナタ第8番“悲壮”の第2楽章とそっくりのメロディーラインとコード進行が登場。トラック9はバグパイプ音楽の二番煎じですか・・・。『ターンエーのサントラ1』のトラック8“Final Shore”やトラック20の“旧約の語るところ”なんかオルフの『カルミナ・ブラーナ』そのもの。トラック15“Girls rule”にいたっては『紅の豚』のもじりじゃないですか。
あと、もうひとつ注文をつけたいのは、一つのアニメ作品のサントラであまりにも後半なジャンルの音楽を使いすぎです。坂本龍一氏や三枝成章氏や、久石譲氏、はたまた『ブレードランナー』のヴァンゲリス氏などは、彼女ほど無節操ではなく、ひとつの大きな柱をつくってその流れのなかでわざと限定して数々の小曲を作曲していきます。つまりちゃんと全体に統一感というものを持たせているのです。
彼女の音楽が、なにかこれらの王道をやぶる必然を感じさせてくれるのなら、文句はありませんが、彼女のサントラを聴いていてあいにくそういう必然みたいなものは聴こえてきません。器用すぎる人が陥るワナに見事にはまっているという感じです。
このままいくと彼女が本当の器用貧乏で終わりはしないか心配になってくる。もちろん絶大な人気を受けているのは知っているが、この手の作曲家は今後もっとたくさんでてくるような気がします。
と、ここまでは言いたい放題彼女の文句を言ってきましたが、ここからは気に入ったところを書いてみます

器楽作品と比較して、ワタシが彼女の作品群で彼女らしさが出ていると思えるのは、ヴォーカルが入った音楽です。彼女はほとんど必ずと言っていいほど、女性ヴォーカルを使いますね。最近のメカもの系のアニメではこれが主流なんでしょうかねぇ。ワタシはよくは知りませんけど。(昔はむしろ逆のイメージでした。『1st.GUNDAM』然り、『宇宙戦艦ヤマト』然り、『装甲騎兵ボトムズ』然り、『ザブングル』然り。。。
彼女は、この『ターンエー・ガンダム』でも『攻殻機動隊SACシリーズ』でも『ブレンパワード』でもクリスタルな声質の女性ヴォーカルを好んで使用しているように思います。
『ターンエーのサントラ1』のトラック1“Spiral re-Born”は菅野氏らしくていいし、トラック9の“Moon”も美しい。トラック21の“The song of a stone”の女性合唱も、多分にデュリュフレのレクイエム的ではあるけれども、とても美しかった。というかワタシの好み


これらのヴォーカル作品のどれもがけっこう気に入ってます。彼女が作曲したそのほかの当たり障りのない器楽作品に比べてすごくインパクトがあって、美しくって、おもしろいです。BGMのほとんどを占める器楽作品があまりインパクトがないというのは、作曲家としてかなり物足りなさを感じますが、ワタシはまだまだ彼女には期待していますので、今後もっともっと菅野カラーを前面に押し出してほしいなと思います。
本当に菅野よう子という人はつっこみどころ満載なのですが、だからといって彼女ほど器用な人はそうはいないでしょう。ていうかこの業界にはたぶんいないかもしれません。だからもう少し彼女にはいい意味で愚直になってもらいたいなというのがワタシのささやかな希望です。今はまだ自分の可能性を広げるだけ広げて、私はどの音楽業界でもやっていけるんだぞ♪という売り込みもかねているというのが彼女の現在のスタンスなのかもしれませんし(苦笑)、それによくよく考えてみると、ワタシが一番いいと思っている彼女の作品『攻殻機動隊SACシリーズ』の音楽と、今回いろいろ注文つけてしまった(笑)『ブレンパワード』、『ターンエーガンダム』の音楽などは作品そのものの対象年齢が違う(と思う)。明らかに大人向けのアニメで、かつスパイシーで、カッティングエッジな『攻殻機動隊SACシリーズ』の音楽とくらべて、もう少し低年齢層の視聴者を見込んでいると思われる『ブレン』や『ターンエー』のソフトでちょっとメルヘンな音楽を少し物足りなく感じたというのはむしろ当然なのかもしれません(苦笑)。菅野氏は視聴者層によって音楽の内容を微妙に使い分けているということは十分にありえる話なので。(もちろん製作者サイドからの要請もあると思いますし。) あとは、もちろん作品が違うんだからあたりまえだろという話もありますが(笑)。
それにしても、なにかこう、愚直に菅野カラーをもっともっと出してほしいなあと思う今日この頃です。
自分が、菅野よう子氏を意識したのは、『天空のエスカフローネ』をワルシャワで録音したという話でした。マクロスのスタッフが関わっているとかで話の内容は「少女マンガチックなヒロイック・ファンタジー」なんですが、吹奏楽をやっていた先輩が大学時代に「音楽ではまっちゃってさー」と言っていたことを思い出します。サントラ、一回レンタルしてテープにダビングしたかな?声楽が印象的で、これはリベンジにお聴きいただけないでしょうか?菅野カラー、出ていると思いたいですけど。自分にとっては、一種ここまでゴシック風なクラシックをアニメに使えるもんなのか?と驚きましたが、本編は結局一度も見ずじまいでした。
その後『マクロスプラス』で電子音バリバリのが来て、えー、こんなのまでやるのー、カラー違いすぎじゃなーい、という印象でこちらはあまり個性も感じられずお勧めできません。
『ターンエーガンダム』はですね、好意的なフォローをすると、ストーリーがそもそも異文化接触の、視点を牧歌的な民衆に置いた物語なので、仕方がない部分もあるかと思うんですね…。でも、劇場版のCD『惑星の午後、僕らはキスをした』はおススメですね。バラけている印象はストーリーが変わらないので仕方がないですが、それでもまとまりがあると思います。"Moon"を気に入っていただけたなら"After All"、いいと言ってくださるんじゃないかなあ。
さすがに菅野よう子のことコキおろしすぎたかなぁと思って、シマッタぁ~
『エスカフローネ』。実はあのあと劇場版のVTRをレンタルして観ましたよ♪ しかしこの数ヶ月のあいだに、内容も音楽もちょっと忘れちゃいまして・・・あまり記憶に残ってないんです(^-^; 特に音楽の記憶が全然ない・・・すいませんm(_ _)m
劇場版のターンエーは、今度レンタルしてみようと思います♪“After All”という曲もチェックしてみますね
それにしても、最近はとんと菅野よう子さんの音楽聴いてなかったのですが、今はどんなアニメの曲作ってるんですかねぇ??ちょっくらHP行ってみてこようかな(^-^)