ちぇろりすとの独り言

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“巨匠”完成!

2005年12月25日 | イッサーリスのコーナー

すごい。90年代初頭のイッサーリスが帰ってきた。

ワタシとイッサーリスの最初の出会いは、サン・サーンス《チェロ協奏曲第1番》(実際はそのもう少し前に実演で聴いたロココ・ヴァリエーションだったが、ほとんど記憶にない)。
あの頃のイッサーリスは、あの非常に明るく艶やかな音色のガダニーニを操ってその活きのよさを見せ付けていたのがとにかく印象的だった とにかく輝いていた

その後あのパワフルな音量と音色を持つモンタニャーナを操るイッサーリスもたいへん印象深かったが、さらにその後、これまでの2つの楽器とはまるで性格の異なる、室内楽的で非常に繊細な響きを持つストラド“フォイアマン”を貸与されて以来のイッサーリスには正直な話、少々物足りなさみたいなものを感じていた。

リヒャルトの《交響詩「ドン・キホーテ」》(→こちら。視聴可)、サン・サーンスの《チェロ協奏曲第2番》(→こちら。視聴可)、・・・。どれも素晴らしい出来で水準をはるかに越えた演奏なのだが、少しながしすぎているというか、輪郭がぼやけ気味というか、なにやらマンネリズムの気配が漂い始めているように感じていた。

しかし、今回のブラームスはそのイメージを払拭するに余りある。

なんというのだろうか・・・あのガダニーニを操っていた頃の眩いくらいに活きのいいイッサーリスと、デビュー以来20数年間熟成・発酵させて来た彼の音楽性と経験値。これらの点と点が今回の録音で見事にひとつの線で結ばれた・・・つまりひとつの頂点に達した感がある。それだけの気迫をこのディスクに感じる。デビュー以来の再録音だけになおさらだ。
息を呑む演奏というのはまさにこのことかもしれない。

そのイッサーリスのチェロを支える、スティーヴン・ハフのピアノ。
1994年のグリーグ、ルビンシテインのソナタの録音でのこのコンビ。ハフのピアノからは硬質でなかなかにクリアーな美しいタッチを聴き取ることができるものの、今回のブラームスに見るような抜群の説得力、構成力、息の合ったアンサンブルといったものを感じさせるにはまだまだ程遠い伴奏だった。
しかし、3年前(2002年)のフランクとラフマニノフの録音あたりからいよいよその真価を発揮、そしてついにこのブラームス!
なんというのだろうか、このピアニスト。とにかくペダルの使い方が抜群なのだ。ヴィヴィッドな響きから、羽毛がふわっと浮き上がるような、すれ違い様に艶やかな香水の香りがフワっ~と香りたつような甘~い響き、そして隕石が目の前に落ちてきたかのような力強いマッシヴな響き・・・とにかく無駄なペダル操作というものが微塵もない。ペダルの使い方が抜群なぶん、ノンペダルのときの表現力・テクニックも際立っている。そして以前から持っていた硬質でクリアーな美しいタッチ。そして新たに加わった非常に説得力のある構成力と、曖昧さのかけらもないアーティキュレーション、そして非常にアグレッシヴなフレージングとリズム。とにかくブラームスがピアノに託したことを全てやってのけているのだ。彼のソロアルバム、リストの作品集や、フランクの作品集を聴くのがこれから本当に楽しみ☆



             むぅ~( ̄~ ̄) 相変わらず華麗な弾き姿♪



           彼の英語はイギリス英語にしてはすごくクセのある発音。
          彼の祖父がロシア系だからなのだろうか・・・


今年のBS放送で、イギリスのマナーハウス風の館のリビングルームで、イッサーリスがアンナ・マリア・ヴェラの伴奏で同じくブラームスの第1ソナタを演奏していた。
イッサーリスとハフはお互いの創造性と抜群のテクニックによる相乗効果で、こちらの期待をはるかに上回る化学反応を起こしてくれるのだが、マリア・ヴェラ嬢には悪いが、彼女の伴奏はまるで力量不足、1+1が“3”にも“4”にもなってくれるどころか、1+1=1.5がせいぜいといったところ。この曲はいくらチェリストがひとりがんばっても、説得力のある演奏にはならないのだ。それだけブラームスの筆致は精緻を極め、チェリストとピアニストに対等なアンサンブルを要求している。
イッサーリスがテンポを明らかに上げたがっているところでも、彼女はいっぱいいっぱいでそれについてこれずといった鈍いレスポンスに加え、貧弱なダイナミックレンジ、あまい構成力、色彩感のないタッチ、どれをとってもハフのそれにはるかに及ばない。とにかく弱々しくてじれったいピアノだった。
そう、ブラームスのピアノというのは、何か斧で丸太をぶった切るような“ある種の”力強さも必要なのだ。

やはりブラームスのピアノはピアニストを選ぶということだろうか。

まあ、とにかくそれだけこの2度目の録音はすごいのだ。

最後にひとつ。同じハイペリオンレーベルから発売された前作のラフマニノフとフランクのディスクよりも、今回の録音の方が格段に優秀な録音だ。
チェロとピアノという2つの楽器の距離感、音量バランス、程よい残響感、高音域・中音域・低音域のレスポンスのバランス、全てが絶妙にサポートされている。録音エンジニア、プロデューサーの気合の程が伝わってくるというものだ。ハイペリオンレーベルは現在苦境に陥っているという話をあちらこちらで見かけるが、本当にがんばって欲しいものだ。
このアルバムはそういう意味でも格別の1枚
そして何より、かゆいところに手が届くハフのピアノに、まさに巨匠の風格を見せ付けたイッサーリスの存在感
ワタシにとってこのブラームスは、ビルスマ&インマゼールの録音と並ぶ、いや、最高の1枚といえるかもしれない。

ちょっと未練がましいが、クレーメルの無伴奏の再録音よりも、このイッサーリスのブラームスの再録音のほうが、本年度レコードアカデミー賞を受賞するだけの内容を備えていると思うのは、ワタシだけだろうか?


<CDデータ>
【演 奏】スティーヴン・イッサーリス(Vc)
     スティーヴン・ハフ(Pf)
【曲 目】・チェロソナタ第1番ホ短調 Op.38(ブラームス)
     ・森の静けさ Op.68-5(ドヴォルザーク)
     ・ロンド ト短調 Op.94(ドヴォルザーク)
     ・バラード ニ短調 Op.3-1(スーク)
     ・セレナード イ長調 Op.3-2(スーク)
     ・チェロソナタ第2番へ長調 Op.99(ブラームス)
【録 音】2005年5月
【レーベル】HYPERION
【品 番】CDA67529(海外盤)

「イッサーリスの新譜、サイコーDEATH!!」

2005年08月05日 | イッサーリスのコーナー

今日は最近購入した新譜のなかから、とっておきのやつを。

いや、ついこないだの日曜のオケ練のあと、オケの友人がブラームスホルン三重奏の合わせをやるというので、ちょっと興味が沸いていっしょにくっついていったんです。そして2時間くらいでホルントリオの練習が終わっちゃってホルンの方が帰られたので、余った時間、ラヴェルピアノ三重奏曲を初見大会して遊んでたんですが、いやぁ~このラヴェルのトリオ、難しいです

いきなり第1楽章の8分の8拍子(といっても、実際は8分の3拍子・8分の2拍子・8分の3拍子の複合体です。これって5拍子でも7拍子でもないから変拍子とはいわないのかもしれないけど、なんかとっても変拍子的です。)での2拍3連でわけが分からなくなりまくるし、超ハイポジションでまくるし、なんと指板を飛び越えて、駒付近までsul-Cやらされるし、人工フラジョはでないものの、ナチュラルのフラジョレット出まくるし、いやホント・・・、この曲えらいムズいですわ
まともに弾けたのは(<ウソつけ)レント楽章である第3楽章くらいでした。
他はもう落ちまくりDEATH 

なにしろ以前、このトリオよりもさらに恐ろしい難曲、ラヴェル「ヴァイオリンとチェロのためのソナタ」の第1楽章であっけなく挫折しているんで、今回もいや~な予感。。。このデュオ・ソナタの第1楽章、自分1人だけなら通せるんでけど、残念ながら共演者と合わせるほど余裕のできるところまでたどり着かなかったんです(つまり自分のことで精一杯ということです(苦笑))
でも、デュオ・ソナタで痛い目を見ているだけに、なんか余計にこの曲(ピアノ・トリオ)を制覇したい気がふつふつと沸き起こってきましたデスヨ


そうそう、今日はCDの紹介をするんだった
このCDの主役はヴァイオリンのジョシュア・ベルくんなので、ご覧のとおり、1枚目は全てフランスの近代Vnソナタ集になっています。で、2枚目になってようやくワタシの大好きなチェリスト、スティーヴン・イッサーリスがこのラヴェルのピアノ三重奏曲(たった1曲よ!)で登場する、とこういうわけです。

イッサーリスはDECCA所属のアーティストじゃないので、以前の「世の終わりのための四重奏曲」(メシアン)「ピアノ三重奏曲第2番」(ショスタコーヴィチ)のアルバムのときと同じように友情出演というカタチをとっています。たまにはRCAヴィクターにも遊びにきぃや、ベルくんよー(ぇ
イッサーリス様ばかり出張させてるとキミ、あとでどうなっても知らんよぉー(ぉぃ
ま、最近はワリとどこのレコード会社もこういった融通のきくことができるようになってきたんですかねぇ~♪それともイッサーリス様のお人柄ゆえだったりして・・・ウフ 

でも、ちょっと待てよ。。。このCD、録音が88年、89年っていったい!?
もしかして、一度廃盤になったものを再販したものなのでしょうか?それとも演奏者の都合でお蔵入りしていたものなのでしょうか?もし発売の経緯をご存知の方いらっしゃいましたら教えてくだサイm(_ _)m まあ、最近再販されたイッサーリスのサン・サーンスのVC協奏曲全集のCDに、初収録の「チェロと管弦楽のための組曲」が収録されているあたり、まだまだお蔵入り演奏が眠っているのかもしれませんね~♪イッサーリス・ファンとしてはうれしいことですな
あ、そうそう補足ですが、この時代はまだイッサーリスが“ガダニーニ”を使っていたころですね~♪

で、感想ですが。。。
1枚目ははっきり言って、もう2度と聴くことはないかもしれません(苦笑)
まず、演奏どうのこうの以前に録音が気に食わない。いくらソロとは言え、バイオリンの音が近すぎますよ。これじゃ耳が痛いです さらに、演奏者2人のアプローチもちょっとワタシの好みじゃなかった。。。
ベルのヴァイオリンは決して嫌いではないのですが、このソナタ集はワタシの琴線に触れることは全然ありませんでした。あと、あくまでワタシの個人的な好みの問題ですが、ベルのバイオリンはソロを聴くには少し“線”が細すぎるという印象です。これは使用楽器の音質に帰するところが多い問題だと思いますが、とにかく彼の音はソロ(あくまで“ソロ”)を聴くには、ワタシにはちょと物足りないんです。
そして、ティボーデのピアノは、素晴らしいんですが・・・。彼のピアノは安定感抜群でテクニックが切れるし、とってもエスプリの聴いた“粋”な演奏をする方ですが、彼のピアノで唯一気に入らないのは、彼のタッチが全然“立たない”音であるということ。言っちゃあ悪いが、まるで消音ペダルを踏んでいるかのような“コモった音”なんです。ワタシは彼の実演も1度聴いたし、映像も見たし、他のCDの演奏も聴いたことがあるので、この彼のタッチについては録音技師の問題に帰するものではないと言い切れます。あれだけテクがキレて、いい雰囲気を持ったピアニストなのに、あんな貧弱なタッチなんて・・・もったいない 彼の演奏はコンチェルト、ソロ、デュオをやるには音が貧弱すぎます。トリオ以上の編成だと意外と気にならないので大丈夫なんですけど。まあ、それでも何モノにも変えがたいいい演奏していたのなら、彼のCD買いますけどね(苦笑)実際、彼のメンデルスゾーンのコンチェルトと、サティのソロ・アルバムは目をつけています。

というわけで1枚目の演奏は、はっきり言ってワタシにはまったくいらないCDです。フランス近代Vnソナタ聴くならやっぱ、デュメイ様の方が断然好きなので


で、2枚目。
この2枚目に収録されている2曲は、1枚目とは違って、どちらの演奏も大変素晴らしい!!録音自体も、1枚目のデュオのときとは違って、明らかに奥行きのある響きになっています。私にはこのくらいの響きがちょうどいいかな。耳も痛くならないし(苦笑)
まず、1曲目のショーソンの名曲、「PfとVnとSQのための協奏曲 作品21」の香りたつような、まるで情念のかたまりのような音楽が、彼らの素晴らしい演奏によっていっそう引き立っています。非常にキレのある演奏でいかに彼らがテクニックがキレる演奏家であるかがわかりますし、一体感も実に素晴らしいです。この珍しい編成の曲の決定版といってもいいくらいのいい仕上がりになっていると思います。これをあの名SQ、タカーチSQと共演しているところがなんとも興味深いですね。なにしろベルとティボーデが、あのタカーチと??って感じで、ぜんぜんイメージにない組み合わせなので 
でも、タカーチ四重奏団ってホント、いいカルテットですねー♪なにしろ昨年、ベートーヴェンのSQ集でレコードアカデミー賞とってますし 1stVnとVaのメンバーを交代してから以前よりも音がクールになりましたが、その実力は依然、健在ですね!ホント、いい仕事してます☆(この録音時はまだメンバー交替前かな?)

そして最後は、いよいよ真打登場!!イッサーリス様のご登場というわけですピアノ三重奏曲ラヴェル
いやもう、全てがいいです!!素晴らしい演奏に余計な言葉はいりません!!
イッサーリス・ファンでなくとも、この演奏はたいへんオススメです!!
ジャン・ジャック・カントロフ盤のこの曲の演奏も気品があってエッジの利いた演奏でたいへん素晴らしいのですが、このイッサーリスたちの演奏は、この曲の交響楽的な響きを追求した側面を存分に堪能させてくれるような、まことに素晴らしい熱演を繰り広げています。特に第2楽章や第4楽章の交響楽的な響きには圧倒されます。これはカントロフ盤では味わえない魅力かもしれません。第3楽章も、(第1次大戦時)戦地に赴く前に書かれたというこの曲のラヴェルの心境が深く反映されているような、彼の深~い心の闇の部分を聴いているような気分にさせてくれる、たいへん味のある響きを実現していると思います。ちなみにこの第3楽章は、まるで20世紀前半に坂本龍一が生まれていたら、こんな曲を書いていたのではと思わせるほど雰囲気が似ていて、個人的にはニンマリしちゃったりしてます むしろ、ラヴェルの師であるフォーレのイメージに近い面を強調すべきかとは思いますけどね。まるで母親の子宮の中にいるような・・・。(チェロソナタ第1番~第2楽章、ピアノ四重奏曲第2番第3楽章、等) イッサーリスの“ノン・ヴィブラート”による淡い色づけも見事という他ありません。
そして、なんといってもこの3人のテクニックのキレること、キレること はっきり言ってウマすぎ そしてイッサーリス・マニアにとっては、彼の柔らかく、かつ鋭い、香り立つような、あのセンス溢れる“節回し”に萌えまくりDEATH!!

イッサーリス・ファンでない方にもオススメの1枚ですよぉ~


<CDデータ>
【DISC1】
 ・フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ第1番 イ長調 op.13
 ・ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ
 ・フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調
【DISC2】
 ・ショーソン:コンセール ニ長調 op.21
 ・ラヴェル:ピアノ三重奏曲 イ短調
【演奏】
 ジョシュア・ベル(vn)
 ジャン=イヴ・ティボーデ(p)
 スティーヴン・イッサーリス(vc)
 タカーチ弦楽四重奏団
【録音】1988-89年 DECCA 4756709(2CD)

あの頃は若かった(笑)

2005年05月05日 | イッサーリスのコーナー

おっとっとっと。。。
なんだかメドゥーサみたいな頭になっちまったい(笑)
(下手な絵ですみませんね。。。ペイント機能使ってなれないマウスさばきでお絵かきしてみました☆)
どなたかおわかりでしょうか? (←わかるわけないって
そう、天然カーリーヘアのイッサーリス君です。かつらじゃないのだ(笑)(アフロでもねーぞ!)ちなみにお子さんも父親ゆずりの見事なカーリーヘアなのだ。

彼の存在を知ったのは、ワタシがチェロを始めるちょっと前だったと思う。
県内のちょっとしたホールで、来日した尾高忠明氏率いるBBCウェールズ交響楽団(だったかな?)とともに、たしかチャイコフスキーの有名な「ロココ風の主題による変奏曲」を弾いていたと思う。
でも残念なことに、このときはそもそもイッサーリスに興味があって足を運んだのではなく、家族といっしょにくっついていっただけだったので、演奏内容については全く記憶にありません(笑)

で、この演奏会の半年後くらいに父が通い始めたばかりのチェロのレッスンにいっしょにくっついていったのが私のチェロとの出会いになります。その頃むしろヴィオラの方に興味のあったワタシでしたが、もともと適当な性格のためモノは試しということで、たいして考えもせずに父といっしょにレッスンを始めることにしたのでした(本当はイッサーリスに感動してチェロ始めましたって言いたいんだけど、世の中そううまくできてませんね(笑)。。。)

それから数ヶ月くらい経って、BS放送で放送された、MTT(マイケル・ティルソン・トーマス)&ロンドン交響楽団による『Concherto!』という映像シリーズで、イッサーリスが「チェロ協奏曲第1番」(サン・サーンス)の演奏していたのを見たのです。

なんという華麗な弓さばき!なんという美しいヴィブラート!なんというスマートでスタイリッシュな演奏解釈!そしてなんというカッコイイ弾き姿!!
彼の歌心も最高。子供のように無邪気に、チャーミングに、魅惑的に、ときに嵐のように激しく!、当時彼が使用していた“ガダニーニ”の暖かく伸びやかな響きとともにまさに変幻自在ともいうべき演奏を繰り広げていました。

この演奏を目にして以来、私は無謀ともいえるサンサーンスのチェロ協奏曲第1番を発表会で演奏するという途方もない計画を立て、先生に内緒で勝手に練習を始めて、幸か不幸か3年目にしてこの無謀でハタ迷惑な計画を成功させることになるのです(笑) イッサーリスのチカラは偉大です!!(今から考えるとマジでメチャクチャな演奏で、あの時20分間もの間ガマンしてくださった方々、この場で深くお詫び申し上げます(笑))

私に無謀な計画を誘発(笑)してくれたイッサーリス氏も今年で47歳を迎えます。まさにこれから円熟の境地に入ろうとしているまさに旬のチェリストと言えるでしょう

彼の他の演奏家とはちょっと違うところは、まず、モダンチェロ奏者としては珍しく、ガット弦を好んで使用していることです。(もちろん、モダン使用の楽器なので、スチール巻きのガット弦です。むき出しのガット弦ではありません)
ガット弦を使用すると、響きは暖かくなりますが、音量が得られないというデメリットが発生します。彼のようなモダンオーケストラを相手にコンチェルトなどを弾くソリストは、音量が減ることを極端に嫌いますから、ほとんどの人はガット弦を使用しませんが、彼は頑固にこの主義を押し通します。彼の性格がでてますね(笑)

もうひとつ、彼の頑固な性格が現れているのが、アルバム作りです。
彼のディスコグラフィーを見ているとわかるのですが、必ずと言っていいほど一人の作曲家に焦点を当て、有名曲から知られざる名曲まで分け隔てなく取り上げています。
サン・サーンス、フォーレ、シューマン、リスト、ヤナーチェクなど、一見、作曲家としてはとても有名な人物ばかりですが、彼らの知られざるチェロ曲から、彼らに関係の深い作曲家のチェロ曲などまで焦点をあてそれを同じアルバムに収めるなど、一人の作曲家を深く掘り下げると同時に多面的に見ることができるのです。イッサーリスのその作曲家に対する愛情がものすごく伝わってきますね☆


あともうひとつ。
彼は日本人にとってもとてもなじみの深い演奏家でもあるんです。
まず、彼の姉の夫が日本人の演奏家です。
そして、現在かれの使用しているストラディバリウス“フォイアマン”は日本音楽財団から貸与されている楽器です。
この“フォイアマン”は彼が1つ前に使用していたモンタニャーナのようなパワフルな楽器と違い、非常に室内楽的な渋みのある響きを持った楽器です。ですから彼自身、無理に弾こうとせずに、自然にこの楽器に語らせてあげるのがよいと言っています。彼のこの楽器に対する彼の愛情が伝わってきますね♪

とりあえず、今日はここまでにします。
彼のディスコグラフィについては次回から詳しく書いていこうと思います。