2015年3月21日
前日に戸台に入るが異様に暖かい、深夜なのに5℃以上ある感じだ。翌朝、春の雪解け水で水量が増えた戸台川を、渡渉を交えながら遡る。熊穴沢は、最初雪が全く無いガレ斜面だが、登るにつれ積雪が増えていく。モナカっぽいザラメ雪で、落とし穴のように踏み抜き厄介だ。二股あたりからは、腰ぐらいの引っ掛かるラッセルでさらにペースダウン。深く潜り、体制を崩すと故障中の膝の内側が痛い。右俣の植生が開け、中ノ川乗越が見えると右岸に切れ込む中間ルンゼも見えてくる。中間ルンゼは、熊穴沢右俣に浅い角度で合流しているので、目測より早めに右岸を歩いた方がいい感じだ。
春の陽気に完全にやる気のないブルースを引き連れ、とりあえず中間ルンゼ最初の滝まで偵察に行く。F1は小さいので埋まっているようだ、右岸側壁の氷瀑奥にあるF2かF3が見える所まで行く。それは薄いベルグラ状でスクリューは効かなさそう、薄板状末端は叩けば折れそうで宙に浮いている。ミックスで登れそうだな~と考えていると、落ち口から10~30cmの落石が数個転がってくる。側壁からもちょこちょこ落石があり、早々に退散する。昼過ぎの最高気温帯という事もあるが、暖か過ぎ、たぶん13℃以上はあった気がする。このルンゼは全般的に脆いらしいので、時期が遅い場合は早朝取り付きが良さそう。でも今回、早朝でも2000mで0℃くらいとの予報なので、ボロ壁のゆるみは有り、落石の危険性大かな。という事で敗退決定。氷も下でこの程度なら、上もあまり無く、落石ポロポロ、ボロ壁高巻きクライミングに終始しそうなので仕方ありません。根性で、本流ボロ壁ドライのランナウトという手もありますが、せめて気温だけでも低くないと落石、浮石で死にそうです。
中間ルンゼ入口付近、沢床が現れ水がジャージャー流れている。
戸台川まで下りてくると、4人用テントが張ってある。こんな所で優雅にスノーハイクなんていいな~と思っていたら、ブルースが向かって行く。私は邪魔しちゃいけないと思いそのまま行く。ブルースが彼等と少し話し、私の所に来て「一緒に呑みませんか?」と言っているとの事。知り合いでもいるの?と聞くと「いや」と言うので、好意は嬉しいが、靴も濡れてツエルトしかないのでそのまま帰る事にする。車に乗ってからブルースが、さっきの4人パーティーがM&Cの人達だという。なんだ、微妙に知り合いなんじゃん。言ってくれれば、呑んでったのに。
今回、この中間ルンゼに我々も含め、3パーティ8人が土曜日から入っていた。こんな日本登山大系にしか載っていないようなルートに、こんなに入るとはチョット驚きです。最近の登山やクライミングのブームでも、よく登られているのはカラーのガイドブックに掲載された、万人が好しとするルートばかりです。特に本チャンクライミングは、アプローチが近く岩質も良いフリークライミング的な所が重宝されているので、このような所にくる同志は貴重な存在です。日本登山大系という、ほとんど古文書のような古本に「岩と雪」、「CJ」、「岳人」などをあわせた考古学的比較検討、ここからしか、ほとんど登られていない秘境エリアの探検的クライミングのヒントやフロンティアは得られないような気がします。最近はやりのクライマーズミーティングに例えるなら、NTTCMでしょうか。なんかどっかの電話会社のコマーシャルみたいです。この分野のオピニオンリーダーは、ホトケの顔も三度まで氏、なめちゃん、キノポンあたりだろうか? たぶん他にも結構いるけど、知ってる範囲で勝手に決定しました。ぜひ、この3氏が発起人となってNTTCMをやって欲しいものです。でも、探検的クライミングをするような人種は、一人でその場所についてあれこれ考えるのが好きなような気がするので難しいかもしれません。しかも、その前置きが結構面白く、重要なところなので、他にネタばれするような事は言えません。しかし、そおゆうのを抜きにしても、同じ志を持つ者どうしが親睦を深め知り合いになれば見地も広がり、パートナーの幅も広がるので良いと思うのですが。
今回は、第1回NTTCM開催のチャンスを自ら潰してしまい、チョット失敗です。でも、今後も同じような事があると思うので、どっかの山でNTTCMは開かれる事でしょう。