虹のじ ゅもん

当ブログを訪れた人には「夢が叶う」という呪いがかかる。

猫をかわいがったら呪いはさらに強力になるであろう。

人は希望を見つける職人

2020-08-11 | エッセイ
人は希望を見つける職人    ( 「トレモスの風屋」小倉明作 石倉欣二絵  くもん出版)

 トレモスの町には風の精ロゼルをとらえる「風屋」という職人がいる。ロゼルは風の中にいる風の精。修行をつんだ風屋にしか見えないし、特別な網でなくてはとらえることができない。
 この本は『トレモスのパン屋』に続くトレモスの町の物語だ。
 ロゼルは風のように透き通っていて、とらえられてから少しずつ、三日もすると美しい姿を現す。鳥に似ているが少し違う。色ガラスのような羽根や宝石のような瞳をもち、小さな鈴のような声でさえずるのだ。
 とらえられたロゼルを町の人たちは、美しさとともに「森の祝福」をもってくるものと信じ、大切に扱った。
 風屋はトレモスの町にしかない珍しい仕事だ。昔は多くの風屋がいて網を大空に流していたが、一人残ったのがリオンというおじいさんだった。
 そこへアルトという若者が弟子入りする。細い山まゆの糸で編んだ大きな「風網」を作り、風にうまく流すのは難しい。
 アルトはりっぱな後継ぎとなれるだろうか―。

 もちろん私の周囲に風屋はいない。
 ロゼルに会いたければ探すしかない。
 見えるか見えないかもわからないロゼル。とらえられられるかどうか。美しい姿を見せ、声を聞かせてくれるかどうか。

 私にとってロゼルは希望だ。
 希望は一心に追いかければやがて光になる。
 どこにでもある風のように希望もどこにだってある。
 希望を握りしめて生きていれば、いつかきっと大きな光になると私は信じている。

 人は希望を見つける職人なのだから。

 『トレモスの風屋』はそんな夢のような心持ちにさせてくれる本だ。
 架空の存在は時を経ても色あせず、読んだ時の年齢や気分によって思いも変わる。
 本棚に大切にしまい、またいつか読み直そうと思っている。

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産経新聞8月8日夕刊「ビブリオエッセー」(本に関するエッセー募集、あなたの一冊をおしえてください)に掲載していただきました。
  



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2 コメント

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おめでとうございます (yosi)
2020-08-17 20:15:45
おめでとうございます。
良かったですね。
頑張った甲斐がありました。
バンザーイ!!
貴方も ”バンザーイ” って叫んでみてください。
良かった、よかった。
返信する
yosiさん (虹のじゅもん)
2020-08-18 19:48:59
バンザーイ、バンザーイ。
努力することに意義はあると思いますが、結果が出せればなおいい。
バンザーイ、バンザーイ。
返信する

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