土壇場は誰かが救うのだろう。
でも、誰が?
超絶技工士はたくさんいる。
イノシシの突進もかわせる。熊ともやり合えんではない。
一人のバーサーカーくらい数人でかかれば簡単に止められるだろう。
でも、誰が?
誰が、止められるんだろう。
辰巳さんの涙を。
彼の怒りを。彼の焦りを。
そのエネルギーは決して、人を殺すためにでも、脅すためにでもある訳ではない。
彼の情熱は。彼の激情を、どこに向けさせればいい?
それが分からない人間には、ぼくにはきっと、彼は止められない。
林業は、低迷に低迷を重ねている。
誰も、確かな未来など、提示できはしない。そんな現在を生きているのだ。
ドバルンンンン!!!!
っと!うわあ!突然にばかでかい音がした。山が鳴った!?反射的に身をすくめる。
火山が噴火するのかというような。
続いて、ドカンドカンドカンドカン!!!、、、
すごい重低音。腹の底が揺れる。
ちょっとまて!これはまさか?おい!そうだ!これは!
『山鳴りだ!』
思わず笑いがこぼれてしまう。少しだけ期待はしていた。
この状況、もしかしたら拝めるのではないかと。
全日本木こり連盟、最高責任者は”覇王”と呼ばれる。
その昔、圧倒的なまでの技術、知力、情熱、経営力で、日本中の木こりに道を示した男
覇王、森喜朗(73)!
現役は退いて久しい70すぎの爺様だがエンジンが入れば、初めて見た。迫力が違う。
身長は180オーバー。なぜか桃色の作業服に、白髪の適当ロング。
顔は、節だのウロだのこぶだのの、、いや、、きっとあれだ!若い頃は熊も惚れ込む美声年だ。
どぶとい腕が二本。その肌がシワシワであることが
逆に木の肌のような固さというか、静けさというか、何やら迫力を増させているように思える。
そしてその老木の根っこのような腕に、がっしりととらえられているそのマシーンが
『山鳴り』
銘を山鳴り。
チェーンソーは鋸(のこぎり)に対して、とにかくパワーがある。作業の効率を圧倒的に上げた。
だがその代わりに、なかなか繊細な作業は得意ではないという弱みを持つ。
刃の部分は鋸、特に大鋸(アサリのない鋸)に比べると遥かに太くなってしまっていて
最高級クラスの木材を切るには、欠損が大きくなるだけに、向かない。
そこに、この『山鳴り』
先ずでかい。と言うか長い。刃の部分が長い。大抵は50センチくらいなのだが
山鳴り、2メートル近くあるんじゃなかろうか。めちゃめちゃ長い。
銘木だろうがなんだろうが、一刀両断できようというもの。
そして薄い。恐ろしく薄い。切り口は2ミリくらいしか無いと言われる。チェーンソーでは、ない。
しかしだからこそ、とんでもない高級木材も切ってゆける。
しかし、それゆえ、引くのに抵抗があまりに大きい。あさりの無い鋸をひくのがとても難しいように。
まっすぐひかなければ、引けない。そしてまっすぐ引こうが引くまいが凄まじいパワーがいる。
そう、だからそのチェーンソーは『山鳴り』なのだ。
暴力的なまでの大出力エンジンの脈動が、山鳴りのようだから。
動いているのは、初めて見た。覇王も年老い、もはや始動させることもできなくなっていると聴いていた。
スターターが、信じられないくらい重いのだとか。
だが、『山鳴り』が鳴っている。
もう、何も心配はいらない。
でも、誰が?
超絶技工士はたくさんいる。
イノシシの突進もかわせる。熊ともやり合えんではない。
一人のバーサーカーくらい数人でかかれば簡単に止められるだろう。
でも、誰が?
誰が、止められるんだろう。
辰巳さんの涙を。
彼の怒りを。彼の焦りを。
そのエネルギーは決して、人を殺すためにでも、脅すためにでもある訳ではない。
彼の情熱は。彼の激情を、どこに向けさせればいい?
それが分からない人間には、ぼくにはきっと、彼は止められない。
林業は、低迷に低迷を重ねている。
誰も、確かな未来など、提示できはしない。そんな現在を生きているのだ。
ドバルンンンン!!!!
っと!うわあ!突然にばかでかい音がした。山が鳴った!?反射的に身をすくめる。
火山が噴火するのかというような。
続いて、ドカンドカンドカンドカン!!!、、、
すごい重低音。腹の底が揺れる。
ちょっとまて!これはまさか?おい!そうだ!これは!
『山鳴りだ!』
思わず笑いがこぼれてしまう。少しだけ期待はしていた。
この状況、もしかしたら拝めるのではないかと。
全日本木こり連盟、最高責任者は”覇王”と呼ばれる。
その昔、圧倒的なまでの技術、知力、情熱、経営力で、日本中の木こりに道を示した男
覇王、森喜朗(73)!
現役は退いて久しい70すぎの爺様だがエンジンが入れば、初めて見た。迫力が違う。
身長は180オーバー。なぜか桃色の作業服に、白髪の適当ロング。
顔は、節だのウロだのこぶだのの、、いや、、きっとあれだ!若い頃は熊も惚れ込む美声年だ。
どぶとい腕が二本。その肌がシワシワであることが
逆に木の肌のような固さというか、静けさというか、何やら迫力を増させているように思える。
そしてその老木の根っこのような腕に、がっしりととらえられているそのマシーンが
『山鳴り』
銘を山鳴り。
チェーンソーは鋸(のこぎり)に対して、とにかくパワーがある。作業の効率を圧倒的に上げた。
だがその代わりに、なかなか繊細な作業は得意ではないという弱みを持つ。
刃の部分は鋸、特に大鋸(アサリのない鋸)に比べると遥かに太くなってしまっていて
最高級クラスの木材を切るには、欠損が大きくなるだけに、向かない。
そこに、この『山鳴り』
先ずでかい。と言うか長い。刃の部分が長い。大抵は50センチくらいなのだが
山鳴り、2メートル近くあるんじゃなかろうか。めちゃめちゃ長い。
銘木だろうがなんだろうが、一刀両断できようというもの。
そして薄い。恐ろしく薄い。切り口は2ミリくらいしか無いと言われる。チェーンソーでは、ない。
しかしだからこそ、とんでもない高級木材も切ってゆける。
しかし、それゆえ、引くのに抵抗があまりに大きい。あさりの無い鋸をひくのがとても難しいように。
まっすぐひかなければ、引けない。そしてまっすぐ引こうが引くまいが凄まじいパワーがいる。
そう、だからそのチェーンソーは『山鳴り』なのだ。
暴力的なまでの大出力エンジンの脈動が、山鳴りのようだから。
動いているのは、初めて見た。覇王も年老い、もはや始動させることもできなくなっていると聴いていた。
スターターが、信じられないくらい重いのだとか。
だが、『山鳴り』が鳴っている。
もう、何も心配はいらない。