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遂にベールを脱いだ!『Che』公式上映&記者会見

2008年05月24日 | 現地レポート

スティーヴン・ソダーバーグ(Steven Soderbergh)監督の待望作、チェ・ゲバラの半生を描いた『Che』がコンペティション部門作品として21日の夜に公式上映されました。

ソダーバーグは直前ギリギリまで編集をしていて、公式上映当日にフィルム納品したそう!
それもそのはず、なんと、エンドクレジットが入っていなかった!!!音楽だけ流れて、画面は真っ黒!
こういうハプニングも映画祭らしいですね。

しかもこの作品、配給会社にさえも10分程度のフッテージしか見せずに今日まで温められてきた秘蔵もの。
公式上映と同時に、他2カ所の会場でプレス上映もされる、という特別待遇。
今回の映画祭の中で最も逃す事の出来ないスクリーニングとなりました!

公式上映には、今回特別招待作品のドキュメンタリーで描かれた、マイク・タイソン(Mike Tyson)や、ディエゴ・マラドーナ(Diego Maradona)の姿も。二人ともチェ・ゲバラの信望者です。

合計4時間28分の『Che』は、二部構成になっていて、前半はゲバラがカストロと共にキューバで革命を起こす時代。アルゼンチン人の医者のゲバラがジャングルの中でカストロやキューバ人のゲリラや農民達から信頼をうけ、理想主義を全うしていく姿が描かれています。
後半は、革命成功後、英雄として優遇された生活を選ばずに、キューバに家族を残し革命運動を続けた、ゲバラの最後の戦いの地であるボリビアでのゲリラ活動と、彼の理想主義が行き止まりに合うまでが描かれている。

チェ・ゲバラという人物は、革命のシンボルとして有名。Tシャツの絵柄となったゲバラを見た事のない人はいないでしょう。でも、彼の生涯や思想は誰もが知っていることではない。
ラテンアメリカの団結、反植民地思想、理想主義といったゲバラの実態が、この映画の中で見えてきます。

革命をするにあたって一番大事な事は“愛”だ。
家族への“愛”、後世への“愛”を感じなくして革命はできないのだ!


などなど、作品にはゲバラの思想が詰め込まれてるんですが、メロドラマの要素一切なし、音楽の使用も最小限。ゲバラの理想主義と、理想の為なら犠牲も顧みない固い意志などを4時間半通して、着々と身に入って来る。
確かに長過ぎ~と思いがちですが、いや、この4時間半あってこそ、ずっしり入るのでは、と見終わって納得。
とーってもいいお勉強になりますよ!


そして…

解禁された翌日の22日、記者会見が行われました。



会見には、メインキャストのベニチオ・デル・トロ(Benicio Del Toro)(彼はプロデューサーでもある)、フランカ・ポテンテ(Franka Potente)、ジュリア・オーモンド(Julia Ormond)、カタリーナ・サンディノ・モレノ(Catalina Sandino Moreno)、デミアン・ビチル(Demián Bichir)、サンティアゴ・カブレラ(Santiago Cabrera)、ホルヘ・ペルゴリア(Jorge Perugorría)、ロドリゴ・サントロ(Rodrigo Santoro)と監督スティーヴン・ソダーバーグ、プロデューサーのローラ・ビックフォード(Laura Bickford)、シナリオライターのピーター・バックマン(Peter Buchman)、歴史背景顧問ジョン・リー アンダースン(Jon Lee Anderson)などの御一行の姿が。

質問:
キューバを毛嫌いし、怖れてきたアメリカに住むあなたが、チェの姿を好感の持てる姿に描けたのはなぜ?

スティーヴン・ソダーバーグ:
キューバが第一の興味の対象ではないんだ。僕は、チェという人物像を軸に描きたかっただけ。なぜなら彼の生涯は、今世紀で一番魅力的なものだから。作品を描くにあたって、僕らはボリビアでの彼の動きにアクセントをおきたかった。なぜなら、この時代はあまり知られていない時期だから。
しかし、キューバで起きた事を描かなくては、ボリビアの時代が理解できない。チェがなぜボリビアに行ったかを理解して貰う為に、キューバの時代を描く必要があったんだ。


監督のスティーヴン・ソダーバーグ

質問:
革命のシンボルを演じるにあたって準備したことは?

ベニチオ・デル・トロ:
僕がただ想像して演じたものが結果になったのではない。沢山の書物を読んだし、チェと関わった沢山の人物に会いに行った。ポジティブとネガティブ両面の部分を掘り下げた。そして可能な限り目にする事の出来る写真資料を見た。プエルトリコで育った僕は、アメリカ文化で育ったようなもの。チェについては、漠然とした悪いイメージしか目にせず、詳しい事は知らないで育った。メキシコに行った時に、本屋でチェの写真を見かけたんだが、彼の微笑んだ顔を見て、今まで持っていた悪者のイメージとは違う事に気がついて、それ以来興味を持ったんだ。チェと関わった人達、彼を愛している人達に会った。ますますチェのヒューマン性に興味を持った。そしてキューバに行ってみた。そこでは皆がチェを愛しているんだ。僕もチェをとても尊敬している。


チェ役のベニチオ・デル・トロ

ジョン・リー アンダースン(歴史顧問):
平和な西洋文化ではチェはTシャツのシンボルだが、ラテンアメリカのような第三世界(ティエールモンド)と呼ばれる国々では、未だに不平等がはびこり、今革命が起きてもおかしくない世界。そのような世界では、理想主義者で、そのためには死もいとわないチェは、大事な意味を持つ存在なんだ。


ジョン・リー アンダースン(左)、ロドリゴ・サントロ(右)

質問:
映画のスタイルについて。

スティーヴン・ソダーバーグ:
チェという人物を近くに感じた時にどうなるかを表したかったんだ。シーンは全てその考えを基に選ばれた。人物像を取り囲んで行きたかった。チェについてもっと知ろうとする動機が仕組まれている。彼のアクションには全て意味がもたらされて来るのだ。だから、4時間半になってしまった!

ベニチオ・デル・トロ:
チェを語るに、4時間半は少ないよ!画家が女を描いて、その絵を見せたら、女が、「それは私に似てないわ」という。画家は、「いつか必ず似るように描いてやる」と言う。チェについてもそう。彼については、いつまでたっても新たな発見がある。だから一度この映画を見た人も、またもう一度見ると違う発見をすると思うよ!だから、早くもう一度見に行って下さい!




質問:
字幕を読む事が苦手なアメリカ人が、大半がスペイン語のこの作品に耐えられると思う?

スティーヴン・ソダーバーグ:
チェについて信憑性のある作品をスペイン語以外の言語で描く事は不可能。映画はその物語の言語で撮られて行くべきだと思うし、今後、英語の帝国主義カルチャーがなくなればいいと願うよ。でも、付け足すけど、アメリカ人は字幕を読むのも嫌いだけど、吹き替えの映画も大嫌いだよ!

カタリーナ・サンディノ・モレノ:
何度か欧米人が作ったスペイン語の映画に携わってきたけれど、スペイン語は皆同じだと思ってるプロデューサーが多いんです。でも、国によっても、地方によっても、方言やアクセントが違うし、私はコロンビア人だから、キューバのアクセントを話す為にコーチを付けてもらったんです。ここまでスペイン語の細かいニュアンスを理解して作った映画は初めてです。


カタリーナ・サンディノ・モレノ(左から2番目)

サンティアゴ・カブレラ:
僕はチリ人。キューバ人のスペイン語は、リズミカルなんだ。(と、真似してみる。)


サンティアゴ・カブレラ

質問:
キューバ人にとって今日チェはどのように受けとめられてますか?

ホルヘ・ペルゴリア:
5歳から12歳まで、毎朝国旗の前に立って、「いつか僕もチェのようになるぞ!」と思ってたよ。今でもキューバの子供達はそう言ってるんだ。チェはいい見本なんだ。自分の快適を捨てて、自己犠牲をしてまで、平等の為に戦った人だ。




質問:
カストロの役をやるのはどんな気持ち?

ロドリゴ・サントロ:
議長になる前の若い時代のカストロを演じたので、彼は若い頃どんな人物だったか、思想はどうだったのか、キューバに行って沢山の人に会い研究した。この作品には、ラテンアメリカの沢山の役者が出演していて、僕はブラジル人だし、ベネズエラ、コロンビア、アルゼンチン等々の役者達とジャングルで生活し、まるでゲリラになって革命をしているような気分になったよ。


ロドリゴ・サントロ

デミアン・ビチル:
僕はメキシコ人。チェは英雄。カストロの役の話が来た時、僕はたまたま髭を生やしてたんだけど、鏡を見ながら、「俺のどこがカストロと似てるんだ?」って思ったよ!カンヌに来れて最高だったのは、マラドーナと握手できた事だよ!


デミアン・ビチル(左)、ベニチオ・デル・トロ(右)

質問:
撮影現場はどうでした?

フランカ・ポテンテ:
トイレするのに森の木の陰を探さないといけないし、撮影現場はまるでゲリラのキャンプ。食事の時間に地べたに座り込んで食べたって、「衣装が汚れる!」なんて注意されることもなかったわ!


サンティアゴ・カブレラ(左)、フランカ・ポテンテ(右)

ちなみに今回の記者会見、やたらと女性記者の数が目立ってました!
たしかに、この作品、ラテンアメリカのイケメン揃い!(しかし、映画の中では革命活動中なので、皆さん髭面ですが!)




やっぱり、ベニチオは色っぽい男ですもんねー。“目が合っただけで妊娠する”と表されてますから!

それから、ブラジル人の元モデル出身の役者ロドリゴ・サントロ!!!
バズ・ラーマン(Baz Luhrmann)が演出したニコール・キッドマン(Nicole Kidman)主演のシャネルのコマーシャルの相手役と言えば皆さんもピンと来るでしょうか!
あとは、『ラブ・アクチュアリー』で、ローラ・リニー(Laura Linney)がちょっと恋心を抱くあの同僚の男性役。普段は眼鏡かけてて気弱そうなのに、家に連れ込んでベッドインするとき眼鏡外して上半身裸になったら、なんとまあ、すごい美形で完璧な筋肉のついた色っぽい男だった!というシーンが忘れられませんね!
会場の係員のお姉さんたちも、「彼はなんて美しいの!!!」と感嘆していました!


ロドリゴ・サントロ

この記者会見の模様は番組で!


■Che

監督:スティーヴン・ソダーバーグ
出演:ベニチオ・デル・トロ、フランカ・ポテンテ、ルー・ダイアモンド・フィリップス、カタリーナ・サンディノ・モレノ、サンティアゴ・カブレラ、ロドリゴ・サントロ




「速報!カンヌ映画祭2008」
6月1日(日)午後2:40(無料放送の日)ほか
「VIVAカンヌ映画祭2008」
6月8日(日)午前11:00ほか
詳しくは番組紹介にて
お楽しみに!