every word is just a cliche

聴いた音とか観た映画についての雑文です。
全部決まりきった常套句。

薄っぺらいチャイルド・プレイ 「ボーイズ・オン・ザ・ラン」

2010-03-14 | 映画
薄っぺらいチャイルド・プレイ 「ボーイズ・オン・ザ・ラン」


「ボーイズ・オン・ザ・ラン」には見事にDQNしかでてこない。
主人公である田西が一番痛々しいが、時代に似つかわしくないほどウブで(であるが故にシホは心配でならなかったのだろう)どこか他力本願で自分が見えていないちはるも、彼女を確信的に弄び、中絶費用を女に届けさせる青山も、それを不快に思わない長谷川も、会社に部下を殴りこみに不審人物が来ているのに喧嘩を買わせてしまうマンモスの部長も、みんなDQNだ。

唯一といっていいほど、まともな行動が描かれているのはリリー・フランキー演じる斉木商事の社長だろう。

青山の鬼畜的な行動にブチギレる田西を「クビにはしません。存分にやってもらいますよ」と見守るリスクを省みず、しかしながら冷静に見守るという大人の対応はカッコいい。

予告編の段階で勇猛なカッコよさを感じてしびれたのだが、物語を通じてみると社長として勇敢というよりもスマートなカッコよさだったのではないかと思う。

それは会社の社員を家族同様に見守る父権的なカッコよさだ。

反面、マンモスの部長は上場会社(自社ビルが描かれていたし、そうなのだろう)の管理者としての責任感がなさすぎる。
刑事事件に発展したら(被害者のケース、加害者のケース両方を想定しなきゃだめだろう。どちらにせよ営業時間中に認めてしまったのだから彼の監督責任が問われる。だいいち来るかも? ってウワサになった段階で青山から事情聴取だろ)。
そもそも、明らかに素性が怪しい田西の挑発に乗ってしまうあたり、かなりトホホだ。


DQNというのは青山のことばを借りれば薄っぺらいといってもいい。
田西が納品先の店長に恫喝されていたように、ちはるも彼女なりに「きょどっていれば、どうにかなる」と考えているのだ。

これは青山のショックでそうなったのではない。
飲み会の帰りに田西とホテルに入ってしまったその時から、それ以前からちはるはそうだったのだ。
青山に違う一面を見せたわけでなく、ただ青山の色に合わせただけなのだ。それは田西に合わせてAVを最後まで見たのと同じ構造だ。


だから、最後、「フェ○チオくらいだったら、いいから!」と口走るのだ。
自分がキッカケで目の前の男がボコボコにされたという事実から目を背けたいばかりに。

ちはるのある意味悲痛である意味何も考えていない言動は、これまた田西の深い考えのないヒーロー感から遂行されることはない。

酒癖の悪い田西は自分のヒロイズムに悪酔いしていた。
まるで子供のごっこ遊びのようにトラビス気取りで、付け焼刃のボクシングで殴り込みを掛けたのだ。

それに巻き込まれたちはるは青山だけでなく田西にも弄ばれたのだ。

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