every word is just a cliche

聴いた音とか観た映画についての雑文です。
全部決まりきった常套句。

『SR2 サイタマノラッパー2 ~女子ラッパー☆傷だらけのライム~』を観てきた

2010-07-05 | 映画


映画の日に『SR2 サイタマノラッパー2 ~女子ラッパー☆傷だらけのライム~』を観てきた。



前作『SR サイタマノラッパー』はご他聞に漏れず"号泣メ~ン"だったので、それなりの期待と覚悟でバルト9へ向かったのですが。
いやぁ、嗚咽を漏らす覚悟をしといてよかったです。

前作はダメの固まりのようだったIKKUが、借りてきた言葉でなくはじめて自分の言葉を獲得し、なりふり構わず、自分のかっこ悪さを飲み込んで、ラップをしていく姿に、それでもヒップホップが好きだという思いに感動して、そこを描ききったことが評価のポイントだったわけです。

つまり、MC IKKUのビルディング・ロマンスだったわけですが、『SR2~』ではむしろ退行しております。

でも、実際そんなもんかもね。
一歩進んで二歩下がる。



アユムへのヒップホップへの思いは伝説のラッパーTKD先輩への恋慕かもしれない。
伝説のライヴを見つめるアユムの表情は恋する少女のそれだ。
マミーに「晩生なんだから」と庇われ、親戚には「いつ結婚するの」と責められるアユムなのだから、10年もその想いを抱いたとしても不思議ではないし、その気持ちに彼女自身が気がついていなかったとしても頷ける(ミッツーとマミーにはそれが判っていたから、B-HACK再結成に付き合おうと思ったのかも)。

「♪キラり未来輝くって、ウチラもう輝いてないし」とミッツーは言う。
この物語はかつてもっていった輝きをもう取り戻すことは出来なくても、今の自分なりに輝いていこうという自らを鼓舞する青春ムービーだ。
30歳手前の現実に飲み込まれて、もがいていく姿を"青春"と呼ぶのは憚れるかもしれないが。
アユムの父が言うように「みんな、そうやって生活してるんだ」。

入江監督のまなざしは基本的に『誰にでも物語がある』というところにあるかと思うのだが、それと同じように誰にとっても自分自身は特別な存在だ。
それが様々な"現実"に直面することによって、自分は特別でないということに気づかされる。
「みんな、そうやって生活してるんだ」というけれど、ワタシも"みんな"なのか? ワタシはワタシだ……と、退屈な毎日を打破していきたいという想いが最後のラップに繋がったのだし、だからこそ、胸を打ち、号泣メ~ンとなる。

"本当の自分"なんてどこにもないけれど、本望ではない自分というのになってしまうことはある。
本当を変えるには自分で動くしかない。

映画としての綻びや稚拙さがありつつも、それを不問にするほどのパッションをもった代一作の続編という高いハードルに、釣りバカ日誌的な展開で応えたのは見事だと思う。

IKKUとTOMが二度と群馬に寄ることがないように、B-HACKも二度とマイクを握らないだろう。
みんながそうやっているように生活するだけだ。


最後に。
B-Hackのテーマ曲、映画云々抜きにしても日本語による女声ラップとしてトップ・クラスに好きです。



♪シュッ・シュッ・シュッ ってGrandmaster Flashの“Flash Is On The Beatbox”からとってるのかな?

HIP HOP IQ高いね!

コメントを投稿