平成の初め頃にNHKで放送された「電子立国 日本の自叙伝」という番組があった。生物学以外の科学技術一般に興味がある僕は題名に惹かれて視聴した。
その番組の内容の大半は既に忘れてしまったが、コンピュータの誕生からの歴史が手際よくまとめられていて、素人の僕にも分かりやすく面白い番組だったことは憶えている。
半導体にシリコンが使われていることぐらいは「自叙伝」を視聴する以前から知っていたが、ICとして製品化されるために要求されるシリコンの純度には驚いた。そのシリコンがノルウェーから輸入されていることも「自叙伝」で初めて知ったのだが、輸入直後の原石は、当然、大量の不純物を含んでいるわけで、その不純物を取り除いて純化する作業を行う日本企業の秘密保護の徹底ぶりにも一驚した。
うろ覚えなのだが、当時、「自叙伝」で取材に応じていたシリコン純化事業を手がけていた企業は昭和電工だったように思う。で、レゾナックホールディングズ(4004)(令和5年1月に持ち株会社移行に伴い商号を「昭和電工」から現在の商号に変更)を観察した。
この会社は12月決算なので最新の決算も令和5年12月のそれになるが、それを見ると収益力が低下している。令和5年12月期の売り上げ高が約1兆3千億円程度あるにもかかわらず純利益が約345億円程度に止まっている。Ⅰ株あたり利益もマイナス104円70銭となっている。同社は同期に有利子負債を約1兆円抱えており、これに対して利益剰余金が約1千2百80億円となっている。有利子負債が企業経営にとって必ずしも悪影響があるとは言えないだろうが、財務体質の強化は求められるかも知れない。ちなみに同社の自己資本比率は29.3%となっている。