私の数学オンチさときたら、
それはもうハクション大魔王も及ばないほどだった。
毎日、数学の時間が近づくだけで、オロロンオロロンとなってしまい、
しかし「それはないでごじゃるよぉ、カンちゃ~ん。」と友達とふざける心の余裕もなく、
ただひたすら「神様、今日はあたりませんようにぃ~。」
と数学の時間の前だけ急に信心者に豹変して、
「神よ、仏よ、なんまいだ~あ~めん。」と半べそをかいていたであります。
その半べそ要因となったのが、中二の時の数学担任の教師。
もう、どうしたらこんなに嫌な人間に成長できたのかっ?
っていう程、嫌な人お見本例です!っていう人で、
それは、「インドの山奥で嫌な人修行で山こもってまして、
おかげさまで嫌な人として達観してきました。よろしく。」
って表彰状と一緒に下界に降りてきたみたいな人だった。
それだけ嫌な人を極めていたという意味では、ある意味すごい奴だったのかもしれない。
しかし、人間的に全く尊敬できない人に「ものを教わる」ことほどつらいことはないのであって、
私は13歳にして、それを実感として経験してしまったわけで。
だからこの映画を観たときに、「あぁ、私もルート先生に数学を受け持ってもらっていたら、
私の人生はハクション大魔王よりましなものになっていたかもしれないわぁ。」
と故郷の方角を向いて遠い目になってしまったのでありました。
しかし結局、もしルート先生が数学の担任だったら、
授業なんてほっぽいてひたすらぼぉ~っと、そのラブリ~なお顔をみてにやけたり、
はたまたノートの端に、映画の冒頭で女子生徒達が黒板に書いてたみたいな
似顔絵をハート付きで描いてウフ♡なんてなってたり、
補修を受けたいがために試験勉強なんて全然せずに赤点とっちゃったりなんかして、
あぁ、やっぱり私の人生はハクション大魔王以上にはならなかったであろうと思われ。
チーン。
無駄話はここらへんにしてですね、
いやぁ、しかし、このルート先生はあっぱれでしたね~。
ファンという贔屓目を抜きにして(9割抜き位だけど)も、
圧倒的に素晴らしかったでござる。
彼の役者としての底力を再確認したでありますよ。
この役はとっても難しかったと思う。
基本的にはルート先生の出番は一人芝居だから、
これ、作品の中で目立とうと思えばどこまでも目立てる位置の役だと思うんだけれども、
そこはさすがのヒデタカくん、ちゃんとバラの花束の中のかすみ草の役目を
堅実に演じておりましたですばい。
数学の授業っていう無機質になりがちな小道具だけで、
あそこまでルート先生を昇華させたのはすごい。
観客に、「あのしっかりと暖かい素敵なお母さんに育てられたんだなぁ。」とか
「博士の影響を、人としてしっかりと受け止めて成長したんだなぁ。」とか、
そういう、ある意味この映画の核になるメッセージが彼の演技からやんわりと、
でもしっかりと伝わってくるもの。
以前どこかのインタビューで、
本人が「脚本を理解する能力はあると思う。」って答えていたけど、ほんとだよね。
すごいと思う。
まず作品をきちんと理解してから、自分の演じる役の位置を的確に捉えるんだろうな~。
惚れるぜぃ、ヒデタカ。
私が見てきた彼が演じた役の中で、このルート先生が
一番好きな人物かもしれない(満男くんは別格なんだけど)。
あぁ、それにしても可愛いなぁ、ルート先生ってば。
背中に背負って持ち逃げしたいっ!