こんな私でも、若いころに声優を目指していた時期がありました。
その頃に、私が心の支えにしていた本がありました。

声優の横山智佐さんが書いた本です。残念ながら、私はこの2巻だけしか持っていません。
この本のシリーズが何巻まで出たのかは、ちょっと分かりません。
私は当時、図書館にあったのを読んでいました。私が買ったのはこの2巻だけだったのです。
この本は、今では信じられないほど声優業界の裏事情というか、声優界の実態が書かれています。
いま、誰かがこれと同じような本を書こうとしても、NGになってしまうと思います。
声優が仕事を掴むまでのなりゆき、ラジオ番組などでキャストが決まるまでのやりとりなど。
噂レベルで、実際の事がほとんど分からない事情が、なるほど!こんなことで、こんな事態になって、こんなふうに仕事を進めていくのか、、、。
まさしく、そんな生の声優界の実態が書かれています。
この本が出版されたのは、1995年です。18年近く昔の本です。当然、いまと事情は違うでしょう。
この頃の声優界と今の声優界は、まったく違ってしまっていると思いますので、これを読んだからといって、現在、声優を目指している人には何も役には立たないと思います。
しかし、それでもまったく役に立たないとまでは言いたくありません。
この本で、私が何回も繰り返して読んだお話があります。
「バイト生活」というお話です。
智佐さんがアルバイトを始めるお話です。しかし、同時にアルバイトに恐怖が生まれるのです。
バイト生活が長く続くと、いつの間にかアルバイトの方が本業になってしまう人が多いからです。
声優を目指しているはずなのに、声優の仕事よりもバイトの仕事量が多くて、次第に声優の世界から遠ざかってしまうという事です。
そんな生活のなかに、いかに声優になるにはどうしたらいいのかという葛藤と苦しみが切実に書かれています。
どれだけ、本気で演技というものに向き合うか?
これは、読んでいて本当に考えさせられます。
この、志の気持ちの部分は、読んでいて励まされるし、参考になると思います。
現在、声優を目指している若い子などは、声優をアイドルみたいなイメージで考えていると思います。
ツイッターで、声優を目指している人のアカウントを時々見かけますが、その方たちのツイートを読んでいると、やっぱり、演技と言うよりは、歌やライヴ、グラビアといった、アイドルとしての側面を強く意識していることが分かります。
もちろん、すべての人がそうじゃないと思いますけど。
それよりも、一番悪いのは業界の人達に思います。
声優を目指している人達に業界が求めているのが、真面目に演技を努力をしている人じゃなくて、演技力がなくても可愛くてアイドルみたいな子を探しているという、、、。
そんな現在。
この本を読むと、本来の声優の姿が見えてきます。
声優というのは、「声」のお仕事だということです。
決して「アイドル」ではないのです。
なぜ、声優がアイドルみたいに、歌って踊って、という流れがなぜ出来てしまったのかは、私の世代は身を持って体験してきました。
だから、声優の「アイドル」活動を否定はしません。
だけど、声優はアイドルじゃなくて、「声」の演技をする「役者」ということを、忘れないでいてほしいと思います。
この本は、いまではもう手に入れるのは困難だと思いますが、こんな本があったというのを覚えていれば、いつの日か古本屋さんなどで見つける事があるかもしれませんね。
私も、いつの日か2巻以外を見つけたいと思っています。