小雨の中、ふらふらと街を歩く。
この街は面白い。
街のほぼ全ての家の前に、湧き水を汲み出している場所がある。
郵便局の前、銀行の前、一般家屋の前、そば屋の前……豊富な湧き水が、パイプからとめどなく溢れている。
その水を貯めている場所には、瓜やスイカが冷やされている。
水は飽くまで透明であり、そして冷たい。
湿気にまとわりつかれている状況なので、頭から浴びてしまいたいほどだ。
さて、そんな街中を歩いていくと、大きな川が見えてきた。
目的の川である。名前は明かせないが、なかなかロマンチックな名称の川だったりする。
川幅は20メートルほどか。
雨が降っているため多少濁ってはいるが、水深はそんなに無さそう。
少し上流のほうでは、投網を打っている方がいる。
俺も準備をして、川へと入る。
水深は30~60cmほど。雑草が水の中に埋もれている為、水深が増しているようす。
底はスイカ大の石がゴロゴロしており、苔がしっかり生えている。
流れはあまり早くはないが、足元の石がすべる為、安心が出来そうにはない。
しかしここの石、かなり苔がしっかり生えている。
水が綺麗で、かつ山からの栄養分が豊富で、そしてたっぷりの日光を浴びて
それだけしっかり生えるのだろう。
だからこそ……こんな風に、食み後がしっかり残っている。
見事な鮎の食み後。まるで図鑑の写真を見ているようだ。
投網を使っている人は鮎を捕まえているんだろう。
今日のこの環境では鮎は捕まえられそうにない。
とりあえず他の魚を狙うことにし、目の前の石を幾つかひっくり返す。
たちまち何匹かのヨシノボリが網に入る。
シマヨシノボリかな? こいつらは豊富だ。
川に合流する水路の付近を攻めると、ホトケドジョウが入ってくる。
この水路の水はやはり湧き水だから、そこに生息していたホトケが
ここまで泳いできたんだろう。
ガサをしつつ移動をする。
対岸にぼさが大量にあるので、川の中心部の深みを恐る恐る渡り、
ボサに網を入れてみる。
……なんだ?
カジカ? いや、それにしてはちょっと形が違う。
でもこんな大きなサイズの底モノというと、カジカやドンコくらいだがー……
網を上げてよく見ると、大きさこそ別物だが、見た目は見覚えのある魚。
……ウキゴリ? え? ウキゴリ!?
どう見ても、どこから見ても、その姿はウキゴリ。
しかしサイズがおかしい。
普通のウキゴリというと、人間の薬指~中指くらいのサイズがほとんどだが
こいつはなんと手のひらサイズ!
俺がいままで見てきたウキゴリの2倍ちかいサイズがある!
更に網を入れると、この特大サイズとまではいかないが、
普段みるウキゴリよりも明らかに大きいウキゴリが何匹も何匹も入ってくる。
このくらいのサイズなら、鮎ですら飲み込めてしまうサイズ。
一体何がどうなっているのかわからないが、
このビックサイズは異常ではないか!
あれか! うみーウキゴリと名づければいいのか!? いやむしろウミゴリなのか!?
更に川を歩くと、流れの緩やかな場所に魚が溜まっていた。
網を入れてみると、4~5cmの魚が網に入る。
……アブラハヤ、か。
関東では、こういった場所の小魚は、どれもカワムツやオイカワだが
ここでは在来種のアブラハヤが大量に溜まっていた。
その後しばらく川を攻めてみたが、新しい魚は見つからず、
そして、雨が強くなってきたので川からあがることにした。
川近くの神社で雨宿り。
木々に囲まれた神社では、しとしと降る雨に対してセミの声が賑やかだった。
神社にも湧き水がこんこんと湧き出していた。
腕を浸すと、骨まで伝わる冷たさに身震いする。
水換えをして、一休み……
ノンビリ地図を見ると、イバラトミヨを採取した水路を遡ると
保護池があるらしい。
さすがに採取は出来ないが、せっかくだから見て帰ることに。
小雨になったところで、ノンビリと街中を歩く。
コンビニすらない街に、たった一つある生協のスーパーに寄り、ご飯。
ついでに空き瓶を買い、ウキゴリを一匹だけ入れてみる。
運がよければ生き残るだろう。
更に歩く。
地図を頼りに30分ほど歩くと、住宅街の中にぽつんと池が。
目の前の川に設置されたあずまやに荷物を置いて保護池へ。
ここも湧き水でできた池らしいのだが、残念ながら濁っているようだ。
流れがないと、どうしても濁ってしまうのかな。
ここには、ホトケドジョウやイバラトミヨの他に、
メダカやキタノアカヒレタビラなどの希少種が生息しているらしい。
目の前の看板には、あらゆる魚の放流を禁止する看板があり
他の保護池よりも、分かりやすい看板が立っていて嬉しいところ。
雨さえ降っていなければ、メダカの姿くらいは見れたと思うと残念ではあった。
時間が迫ってきているので、そろそろ戻るかと思ったのだが
保護池の近くの田んぼの水路が気になった。
早速ウェダーを履いて網を入れてみる。
水深は15cmほど。素堀の水路。
水は全て湧き水である。
網を入れてみる。
ヨコエビ……?
大量のヨコエビが網に入る。一回で数十の単位で入ってきている。
ホトケドジョウを各地で採取して思ったのだけど
滋賀でハリヨと一緒に居た子やこの場所のように、湧き水周辺で生息し、
ヨコエビがこうやって大量に生息している場所のホトケは
とても丸くなって福福しい姿となっている。
それとは違い、静岡や福島などの、ヨコエビがほとんど網に入らないような場所で
生息しているホトケは、丸いのだけどスマートで太ってはいない。
最初は水の質かと思っていたのだけど、同じ湧き水で生息しているホトケでも
大きさや太さに違いがあった。
今のところ、明確に違うのはこのヨコエビの数。
餌の違いで、ここまで成長(?)の違いがあるようだ。
面白いもんだ。
おまけ
電車の時間になると雨がやんだ。
電車は二両。日本海沿いをゆっくりとゆっくりと走る。
乗ってくる人はほとんどいない。一度部活帰りの女の子たちが何人か乗ってきたが
数駅でみんな降りてしまった。
ずっと乗っているのは、通路を挟んで反対側に座っている70代くらいの男性。
ワンカップを飲んでノンビリ電車に揺られている。
俺も酒田で買ったお酒を飲みつつ、日本海を眺める。
実は日本海を見るのはこの遠征が初めてだ。
砂浜は少なく、岩礁が多いという印象を受ける日本海。
冬の厳しい海も、夏であれば涼しげに映る。
電車はゆっくり進んでいく。
窓から見える景色。そこに茜色の太陽が沈んでいく。
ノンビリと、人の少ない電車に揺られる。
終点まで数時間。
遠征は、楽しい。
●ここで出会えた主な生体(赤字はフィールド初遭遇)
ホトケドジョウ
ウキゴリ
シマヨシノボリ
アブラハヤ
この街は面白い。
街のほぼ全ての家の前に、湧き水を汲み出している場所がある。
郵便局の前、銀行の前、一般家屋の前、そば屋の前……豊富な湧き水が、パイプからとめどなく溢れている。
その水を貯めている場所には、瓜やスイカが冷やされている。
水は飽くまで透明であり、そして冷たい。
湿気にまとわりつかれている状況なので、頭から浴びてしまいたいほどだ。
さて、そんな街中を歩いていくと、大きな川が見えてきた。
目的の川である。名前は明かせないが、なかなかロマンチックな名称の川だったりする。
川幅は20メートルほどか。
雨が降っているため多少濁ってはいるが、水深はそんなに無さそう。
少し上流のほうでは、投網を打っている方がいる。
俺も準備をして、川へと入る。
水深は30~60cmほど。雑草が水の中に埋もれている為、水深が増しているようす。
底はスイカ大の石がゴロゴロしており、苔がしっかり生えている。
流れはあまり早くはないが、足元の石がすべる為、安心が出来そうにはない。
しかしここの石、かなり苔がしっかり生えている。
水が綺麗で、かつ山からの栄養分が豊富で、そしてたっぷりの日光を浴びて
それだけしっかり生えるのだろう。
だからこそ……こんな風に、食み後がしっかり残っている。
見事な鮎の食み後。まるで図鑑の写真を見ているようだ。
投網を使っている人は鮎を捕まえているんだろう。
今日のこの環境では鮎は捕まえられそうにない。
とりあえず他の魚を狙うことにし、目の前の石を幾つかひっくり返す。
たちまち何匹かのヨシノボリが網に入る。
シマヨシノボリかな? こいつらは豊富だ。
川に合流する水路の付近を攻めると、ホトケドジョウが入ってくる。
この水路の水はやはり湧き水だから、そこに生息していたホトケが
ここまで泳いできたんだろう。
ガサをしつつ移動をする。
対岸にぼさが大量にあるので、川の中心部の深みを恐る恐る渡り、
ボサに網を入れてみる。
……なんだ?
カジカ? いや、それにしてはちょっと形が違う。
でもこんな大きなサイズの底モノというと、カジカやドンコくらいだがー……
網を上げてよく見ると、大きさこそ別物だが、見た目は見覚えのある魚。
……ウキゴリ? え? ウキゴリ!?
どう見ても、どこから見ても、その姿はウキゴリ。
しかしサイズがおかしい。
普通のウキゴリというと、人間の薬指~中指くらいのサイズがほとんどだが
こいつはなんと手のひらサイズ!
俺がいままで見てきたウキゴリの2倍ちかいサイズがある!
更に網を入れると、この特大サイズとまではいかないが、
普段みるウキゴリよりも明らかに大きいウキゴリが何匹も何匹も入ってくる。
このくらいのサイズなら、鮎ですら飲み込めてしまうサイズ。
一体何がどうなっているのかわからないが、
このビックサイズは異常ではないか!
あれか! うみーウキゴリと名づければいいのか!? いやむしろウミゴリなのか!?
更に川を歩くと、流れの緩やかな場所に魚が溜まっていた。
網を入れてみると、4~5cmの魚が網に入る。
……アブラハヤ、か。
関東では、こういった場所の小魚は、どれもカワムツやオイカワだが
ここでは在来種のアブラハヤが大量に溜まっていた。
その後しばらく川を攻めてみたが、新しい魚は見つからず、
そして、雨が強くなってきたので川からあがることにした。
川近くの神社で雨宿り。
木々に囲まれた神社では、しとしと降る雨に対してセミの声が賑やかだった。
神社にも湧き水がこんこんと湧き出していた。
腕を浸すと、骨まで伝わる冷たさに身震いする。
水換えをして、一休み……
ノンビリ地図を見ると、イバラトミヨを採取した水路を遡ると
保護池があるらしい。
さすがに採取は出来ないが、せっかくだから見て帰ることに。
小雨になったところで、ノンビリと街中を歩く。
コンビニすらない街に、たった一つある生協のスーパーに寄り、ご飯。
ついでに空き瓶を買い、ウキゴリを一匹だけ入れてみる。
運がよければ生き残るだろう。
更に歩く。
地図を頼りに30分ほど歩くと、住宅街の中にぽつんと池が。
目の前の川に設置されたあずまやに荷物を置いて保護池へ。
ここも湧き水でできた池らしいのだが、残念ながら濁っているようだ。
流れがないと、どうしても濁ってしまうのかな。
ここには、ホトケドジョウやイバラトミヨの他に、
メダカやキタノアカヒレタビラなどの希少種が生息しているらしい。
目の前の看板には、あらゆる魚の放流を禁止する看板があり
他の保護池よりも、分かりやすい看板が立っていて嬉しいところ。
雨さえ降っていなければ、メダカの姿くらいは見れたと思うと残念ではあった。
時間が迫ってきているので、そろそろ戻るかと思ったのだが
保護池の近くの田んぼの水路が気になった。
早速ウェダーを履いて網を入れてみる。
水深は15cmほど。素堀の水路。
水は全て湧き水である。
網を入れてみる。
ヨコエビ……?
大量のヨコエビが網に入る。一回で数十の単位で入ってきている。
ホトケドジョウを各地で採取して思ったのだけど
滋賀でハリヨと一緒に居た子やこの場所のように、湧き水周辺で生息し、
ヨコエビがこうやって大量に生息している場所のホトケは
とても丸くなって福福しい姿となっている。
それとは違い、静岡や福島などの、ヨコエビがほとんど網に入らないような場所で
生息しているホトケは、丸いのだけどスマートで太ってはいない。
最初は水の質かと思っていたのだけど、同じ湧き水で生息しているホトケでも
大きさや太さに違いがあった。
今のところ、明確に違うのはこのヨコエビの数。
餌の違いで、ここまで成長(?)の違いがあるようだ。
面白いもんだ。
おまけ
電車の時間になると雨がやんだ。
電車は二両。日本海沿いをゆっくりとゆっくりと走る。
乗ってくる人はほとんどいない。一度部活帰りの女の子たちが何人か乗ってきたが
数駅でみんな降りてしまった。
ずっと乗っているのは、通路を挟んで反対側に座っている70代くらいの男性。
ワンカップを飲んでノンビリ電車に揺られている。
俺も酒田で買ったお酒を飲みつつ、日本海を眺める。
実は日本海を見るのはこの遠征が初めてだ。
砂浜は少なく、岩礁が多いという印象を受ける日本海。
冬の厳しい海も、夏であれば涼しげに映る。
電車はゆっくり進んでいく。
窓から見える景色。そこに茜色の太陽が沈んでいく。
ノンビリと、人の少ない電車に揺られる。
終点まで数時間。
遠征は、楽しい。
●ここで出会えた主な生体(赤字はフィールド初遭遇)
ホトケドジョウ
ウキゴリ
シマヨシノボリ
アブラハヤ
湖西の方でも15cmオーバーのウキゴリが多数。大概は8~12cmくらいなんですがね。環境差でしょうかね?
巨大ウキゴリも見応えありますね。
日本もまだまだ捨てたもんじゃないって思える記事でした。
ウキゴリっていうと、ここまで大きくなく
ヨシノボリよりひとまわり大きい位だと思ってました。
全くボリュームが違う姿に驚きですよ。
他の地域でも見つけて、その生息環境を見てみたいです。
>>ガクさん
霞ヶ浦でも居ますか! 霞ヶ浦で釣ったウキゴリは
ここまで大きくなく、ヨシノボリサイズばかりで
こんな多きなのが居るとは知りませんでした。
>>泥鰌さん
見た目はいいですが、じっとりとした湿気で
俺はかなーりきつかったですよ!!
水が冷たくて、自販機で買った飲み物を
冷やしておくのに丁度よかったですよ。
コンビニもない、都心から比べると不便かもしれませんが
素敵な町でしたよ
北海道からお邪魔します
お盆に川でウキゴリをとりました
水槽には9匹おりますが
一番大きいのは12㌢ぐらい
まだまだ大きくなるでしょうか
楽しみです
何年ぐらい生きるのかな~
はじめましてー更新の遅いブログへようこそ!
北海道の方なんですね。
今年は北海道に遊びに行かせて貰いました。
ウキゴリは道南で多数出会うことが出来ましたが
本州にいるウキゴリが北海道にも居るということに
驚きを感じてしまいました。
ウキゴリは普通は12cmくらいなんでしょうけど
餌が豊富だったりすると、15cmくらいになるようです。
あの独特の厚い唇が可愛いですよね
大切に育ててあげてくださいね!