東京23区のごみ問題を考える

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23区清掃工場「平成23年度環境調査結果」から、焼却灰等に含まれる重金属類の傾向は~

2012年07月04日 21時19分53秒 | 東京23区のごみ

☆清掃一組「平成23年度環境調査結果」から作成

23区清掃工場の、年に数回の、たまたま採取した焼却灰等に含まれる重金属類の含有量測定結果である。この主灰、飛灰等の水銀含有量をみる限りでは、ここ2~3年で、排ガス中の水銀濃度が自己管理値(0.05mg/m³N)を超えた工場以外でも、ある日突然、焼却炉の停止となるかもしれない要素は十分にありそうだ。搬入ごみの検査の充実や、不適正ごみ搬入禁止の啓発活動などしていても、有効な対策となっているのかどうか~


東京二十三区清掃一部事務組合HPより
■平成23年度 環境調査結果(清掃工場別)
http://www.union.tokyo23-seisou.lg.jp/gijutsu/kankyo/toke/chosa/sokute/h23kekka.html


平成23年度の環境調査「すべて法基準値内であった」という結果ではあるが、せっかくの調査結果、おそらく数億円は検査費用もかかっていることだろう、有効に活用しなくてはと、排ガスに法規制値のない重金属類、それらは焼却灰等にどの程度移行しているのかをまとめてみた。


概要と気になった部分を抜粋
なにしろ、23区の清掃工場、23年度は、20清掃工場40炉あるので、
複数回の調査で、データの検証としてはいい資料になるのではないか。

1 排ガス測定結果
(1) 煙突排ガス
測定結果の概要:排ガスの測定結果は、すべて法基準値及び協定値を下まわった。
排ガス中の法規制はなくとも、23区の清掃工場、毎度しっかりと重金属類等の調査はしている。
調査項目(抜粋):平成23年度全工場測定値
ばいじん中の鉛(都条例10mg/m3N):不検出
ばいじん中のカドミウム(都条例1mg/m3N):不検出
ばいじん中の亜鉛:不検出~0.010mg/m3N
ばいじん中のマンガン:不検出~0.008mg/m3N
ばいじん中の総水銀:不検出~0.0002mg/m3N
シアン:0.4~4.6ppm
塩化ビニルモノマー:不検出~0.0019ppm
フタル酸エステル:不検出
PCB:不検出
総水銀(協定値,管理値0.05mg/m3N):不検出~0.005mg/m3N
有機水銀:不検出
ふっ素:不検出
ベンゾ(a)ピレン:不検出
塩素:不検出
ばいじん中のクロム:不検出
ばいじん中の砒素:不検出
ダイオキシン類(基準値0.1ng-TEQ/㎥N):0~0.0015ng-TEQ/㎥N
日々、多少の逸脱はあれど~(参考↓↓:維持管理計画値の超過分)
■23区清掃工場 平成23年度 維持管理状況

2 排水測定結果
測定結果の概要:排水の測定結果は、すべて法基準値内であった。

3 焼却灰等分析結果
焼却灰等の測定結果は、すべて法基準値及び判定基準値を下まわった。
(1) 主灰(含有・性状試験)
(含有試験は別途下段にグラフ作成)
(2) 飛灰処理汚泥(含有・溶出試験)
ダイオキシン類 基準値 ※3ng-TEQ/g(全工場測定値:0.18ng-TEQ/g~9.1ng-TEQ/g)←9.1ng-TEQ/gは破砕ごみ処理施設(破砕ごみ、いつもダイオキシン類高濃度)
(含有試験は別途下段にグラフ作成)
溶出試験
六価クロム基準値1.5mg/L以下(全工場測定値:不検出~1.4mg/L)←1.4mg/Lは中央清掃工場
基準超えではないが、危なくなったらさらに薬剤を増やすということになるのか?
注1 不検出とは、定量下限値未満を示す。
注2 溶出試験の基準は、埋立処分に係る判定基準である「産業廃棄物の埋立処分に係る判定基準」(昭和48年総理府令第5号)が適用される。
※ ダイオキシン類の基準値はダイオキシン類対策特別措置法による。ただし、~工場の飛灰処理汚泥はダイオキシン類対策特別措置法に定める方法により処理しているので、この基準は適用されない。
(3) 汚水処理汚泥(含有試験)
(含有試験は別途下段にグラフ作成)

4 周辺大気環境調査結果
測定結果の概要:周辺大気環境調査結果は、通常の大気中の出現範囲であった。
(1) 周辺大気調査(ダイオキシン類を除く)
(2) 周辺大気中のダイオキシン類調査結果(夏季)
(3) 周辺大気中のダイオキシン類調査結果(冬季)
   (稼働時7日間連続サンプリング)
(3) 周辺大気中のダイオキシン類調査結果(冬季)
   (稼働時7日間連続サンプリング)

試料採取回数(項目ごとに採取日が異なるのか検査回数は?)
排ガス:6回/年(ダイオキシン類4回/年)
 煙突排ガス・煙道排ガス ※ 煙突排ガス (基):測定項目のうち「ばいじん」か  ら「ばいじん中のカドミウム」までの7項目に「アンモニア」、「総水銀」、「ふっ素」を加えた基本10項目 (全):基本項目にその他の項目を加えた全26項目 ※ 煙道排ガスすべての測定で実施
排水:1回/月(ダイオキシン類1回/年)
 放流水 (基):測定項目のうち「pH」から「アルキル水銀」までの26項目に「ふっ素」、「ほう素」を加えた基本28項目及び「温度」 (44):基本項目に「ポリ塩化ビフェニル」から「セレン」までを加えた44項目及び「温度」(全):上記44項目にその他の項目を加えた全52項目及び「温度」
焼却灰等含有・溶出試験:2回/年(ダイオキシン類1回/年)
調査項目、定量下限値など、詳細は清掃一組HPへ~


廃プラスチック類の実証試験の時にも、結果的に焼却灰等に大量の重金属類が含まれることに驚いたが、これほどの重金属類、だから山元還元すればいいという問題でもない。おそらく23区に限らず、全国各地の焼却炉からの焼却灰も同じような状況だと思う。但し、焼却灰等の埋立基準は、重金属等の含有量ではなく、溶出試験の基準が、『埋立処分に係る判定基準である「産業廃棄物の埋立処分に係る判定基準」(昭和48年総理府令第5号)が適用される』となる。要するに、灰溶融処理をしない場合は、キレート処理(薬剤などで溶け出さないように)などをして埋め立てる

重金属類の移行割合、排ガスに多くでるのは、やはり「水銀」のようである。23区の清掃工場、度々水銀による焼却炉の停止となるのも、23区は水銀測定器で常時監視をしているので自己管理値(0.05mg/m³N)をオーバーすると焼却炉を停止することができる。全国的には、排ガス中の水銀規制がないので、測定をしていない市町村が大半であろう。環境省も、水銀条約など、水銀規制に積極的に取り組んではいるが、いまだに焼却炉からの水銀放出は野放しの状態で、なんら規制措置、対策はとられていないのである。焼却灰等は、適正に処理した後、埋立管理となるのだろうが、せめて、排ガス中の水銀規制は検討はすべきだと思う。これほど焼却灰に重金属類が含まれているということは、排ガスからの排出は当然の如く考えられる。



■焼却灰等重金属類分析結果【含有試験】
平成23年度 全工場出現範囲




■焼却灰等重金属類分析結果【含有試験】
全工場出現範囲平成23年度と平成17年度の比較

23区では、平成20年度から廃プラスチック、ゴム、皮革類の焼却が本格実施となった。地域ごと段階的に実施が開始されたため、対比のためには、平成17年度のデータが使われている。
しかし、いつの時代も、たまたまとりだすサンプリングデータ、かなりの特異値が存在するものでもある。(しかし、もしかしたら、これが日常であり、もっと高濃度の部分もあり得るし、逆のこともいえるが。)廃プラスチック類の焼却前と後で、確実に重金属類が増加傾向と断言するのも憚れるほどの内容である。一定の変化がみえるのは総クロムで、皮革製品の可燃ごみ化が要因といえるかもしれない。素人にいえるのは、所詮は、参考値ではあれど、たまたまの測定値が、これほど大量の重金属を含むということはの驚きに尽きる。


主灰、飛灰に比べて、圧倒的に溶融飛灰の重金属類は高濃度に濃縮されている。ただし、溶融飛灰の年度比較は、平成17年度は、主灰と飛灰の混合溶融、平成23年度は、主灰単独溶融になっているので、単純に比較はできない。



※平成17年度の汚水処理汚泥の水銀570mg/kg、鉛5,700mg/kg、カドミウム730mg/kgはどこの工場なのか、、、結果的に、水銀を含む血圧計などを代表されるように、ごみステーションにだせばなんでも集めてくれる可燃ごみ。収集されたごみは、バンカに入れられると、原因特定も、犯人捜しも、不可能となり、焼却炉は違法排出、不法投棄の温床になっている。


平成23年度の全工場測定値の上限値記録清掃工場
清掃工場周辺の地域特性、工場によるごみ質特性も若干あろうが、上限値ではなくとも、概ね似たり寄ったりの工場も多い。
主灰
総水銀:目黒(0.006mg/kg~0.18mg/kg)
鉛:中央(140mg/kg~1,200mg/kg)
カドミウム:板橋(2.6mg/kg~42mg/kg)
総クロム:墨田(620mg/kg~880mg/kg)
砒素:多摩川(1.0mg/kg~2.3mg/kg)
シアン:港(0.8mg/kg~2.4mg/kg)
銅:千歳(1,100mg/kg~10,000mg/kg)
亜鉛:葛飾(2,400mg/kg~13,000mg/kg)

飛灰処理汚泥
総水銀:杉並(14mg/kg~34mg/kg)
鉛:世田谷(1,800mg/kg~3,000mg/kg)
カドミウム:港(79mg/kg~290mg/kg)
総クロム:世田谷(720mg/kg~1,100mg/kg)
砒素:光が丘(8.0mg/kg~18mg/kg)
銅:破砕(2,800mg/kg~23,000mg/kg)
亜鉛:大田(10,000mg/kg~22,000mg/kg)
ふっ素:大田(1,800mg/kg~5,300mg/kg)
セレン:杉並(1.8mg/kg~3.7mg/kg)
※世田谷は流動床ガス化溶融炉

汚水処理汚泥
総水銀:足立(12mg/kg~73mg/kg)
鉛:足立(150mg/kg~2,200mg/kg)
カドミウム:足立(6.4mg/kg~70mg/kg)
総クロム:千歳(2,500mg/kg~3,900mg/kg)
砒素:世田谷(1.2mg/kg~7.1mg/kg)
シアン:大田(不検出~5.5mg/kg)
銅:葛飾(160mg/kg~9,800mg/kg)
亜鉛:"足立(3,900mg/kg~28,000mg/kg)
    葛飾(820mg/kg~28,000mg/kg)"
ふっ素:葛飾(550mg/kg~5,100mg/kg)
セレン:葛飾(不検出~2.5mg/kg)

溶融飛灰処理汚泥
総水銀:葛飾(6.4mg/kg~23mg/kg)
鉛:板橋(11,000mg/kg~15,000mg/kg)
カドミウム:板橋(210mg/kg~240mg/kg)
総クロム:葛飾(53mg/kg~750mg/kg)
砒素:世田谷(51mg/kg)
銅:板橋(3,800mg/kg~5,500mg/kg)
亜鉛:板橋(120,000mg/kg~130,000mg/kg)
ふっ素:多摩川(3,100mg/kg)
セレン:世田谷(2.2mg/kg)


関連(本ブログより)
■廃プラスチックの焼却処理に関する調査報告~重金属の移行割合(2009年01月24日)



■23区 水銀混入ごみによる目黒清掃工場2号炉の停止について(2012年05月28日)




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