やぁ読者の諸君。
ここに記すのは今回が初めてになる。
普段ここで航海記を綴っている姉からたまには書いてみろと筆を投げられたので、現在の状況を報告してみようと思う。
今、俺は一生懸命コオロギ捕獲に取り組んでいる。
まずは回想から読んで頂くことにしよう。
前回『硬い守り』のクエを受けた俺はジャマイカの工房職人から情報を得て、捕獲先である南米北岸に向かった。
しかしなんと言うことだろう。
俺は冒険家から軍人に転職する時に、もう暫く冒険はしないと覚悟を決めて観察スキルを切ってしまっていたのだ。
見渡す限りの荒れた灰色の岩の世界で、俺は呆然と佇んだ。
このまま何も捕獲しないで帰ったら絶対に姉さんに怒られる。
もう鶏丸焼きやマグロのオリーブオイルステーキはもらえないだろう。
予備帆も作ってもらえないし美酒も醸造してくれないだろう。
俺は覚悟を決めて、ひたすら生態調査スキルを発動し続けた。
見つけられないかも知れないという緊張感に指が滑り、間違って生態調査スキルではなく調達スキルを発動してしまうこともあった。
wikiの情報を頼りに、数十回。
遂に俺は見つけた。
視界にアルマジロが飛び込んできたその瞬間を、その喜びを、俺は生涯忘れることは出来ないだろう…。
サントドミンゴに戻り、クエの報告をして今度は商人クエの仲介人に挨拶をする。
しかし、彼は交易名声が余りにも低過ぎる俺を不審に思っているのか、なかなか望むクエを紹介してくれない。
一枚、二枚…数十枚の斡旋状が俺のポケットから消えていく。
「仕方ねぇなぁ、根負けしたよ」
仲介人は大きな溜息をつきながら、俺に一枚の紙を手渡した。
『生き物の教え』。
そこには確かにそう記されていた。
今度はコオロギだ。
俺は貸金庫からエンベラ戦士のシンタを取り出し、すぐさま袖を通すとサントドミンゴ郊外に脚を踏み入れた。
岩に張り付いて、ひたすらコオロギを探す。
ふと指の隙間で何かが跳ねた。
間違いない。
コオロギだ。
俺はジャマイカの工房職人が要求してきた20匹を捕まえるために、更に奥地に分け入って行ったのだ…。