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吉倉オルガン工房物語

お山のパイプオルガン職人の物語

大地に立つ負け組

2007年10月03日 | 自分のこと
昨日は修復したパイプオルガンの「リニューアル演奏」でした。

例によって(そう、たいていそうなのです)その前1週間くらいは徹夜続きでした。昼間は作業が出来ないので休めるかも知れないと踏んでいたのですが、そうは問屋が卸すはずもなく昼間はそれなりにやることがあってやっぱり寝られませんでした。
まあ、なんとか初日のイベントをクリアして昨晩は久しぶりに寝られました。
ただこの演奏プログラムは1週間続くんですよね~。まだまだゆっくり休めそうにありません。まだやることが残っていますし。
それにしても、連日夜通し駆け回り、気が狂いそうな音の洪水に溺れ、しかも寝ない。なんで大丈夫なんだろう私。
このフルパワーモードは危険なので、うまい具合に終了させないとなりません。

製作、修復直後というのは各部品の「アタリ」「ナジミ」が出ていないのでいきなり全開イベントなどは避けて欲しいのですが、たいていは逆で、そういう時にイベントは集中するものなんですよね。記念コンサートとか言って。
車や機械では、「慣らし運転」と言って、新車やオーバーホール後しばらくは、あまり負荷をかけないで調子を見ながら使うものです。

新しいオルガンのパイプや具合の悪いパイプをきちんと鳴るようにしてやると、自ら良くなっていったりと変化します。
これが、楽器の大変なところで、やつらは成長するんです。
だから製作したり、修復したりして納品すれば終わりではなく、そこからさらに育ててやらなきゃなりません。
よって、仕事完了の線引きがしにくいのです。
ビジネスライクにいけば「はい、ここまで」と区切るべきなのですが、自分が心血を注ぎ、身を削るようにして製作、修復した楽器にはそれが出来ないのですよねー。
利益が出なくてもなんとかその楽器を診てやろうと思ってしまうわけなんですね。

好きなことを仕事にするとこういうことになります。
よって、ビジネス的には「負け組」確定です。

「ふんっ」と気合を入れて、足を踏みしめ背筋を伸ばし胸を張り拳を固めて顔を上げる。
見よ!これが戦い続ける負け組の姿だっ!

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6 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

コメント日が  古い順  |   新しい順
しかし何ですな (ムスタファ)
2007-10-03 21:16:56
勝ち組、負け組。
嫌な言葉ですね。働く人をここまで馬鹿にしくさった言葉は無いでしょう。
労働意欲をそぎ落とし、人を卑屈にさせて何が面白いのでしょうか。
言った本人達は政治の世界から消えてますよね。
彼らこそ「負け組」なのです。
鑑定士の人の言葉じゃないですけれど、
「いい仕事」をするのが大事なのです。
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Unknown (佐藤ジョージ)
2007-10-03 21:33:33
いいぞ!風琴屋!!
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嗤う漢 (ひろなん@風琴屋)
2007-10-04 02:50:01
ムスタファさん、ようこそ!

平仮名は変換ミスだったのね。

勝ち組負け組論というのは、結局は弱い自己を補強するための理屈でしかないと思います。
自分自身の生き方や道を自ら規定できないからそんな理屈に踊らされるのです。
幸福になるための条件が多い人ほどそれから遠いといえます。
本当に自分にとって大切なものにピントを合わせることが出来れば、外野は全く気にならないものですね。
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どうもです! (ひろなん@風琴屋)
2007-10-04 03:13:34
佐藤ジョージさん、ようこそ!

今日もまだとんでもない時間に仕事をしています。
なかなかキリがつきません。次の仕事も東京ですし。
早く山に帰って鶏を食べたいです。
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たった一つの魔法 (しまりす)
2007-10-04 03:42:05
はじめまして

共感できることが多く、今までの日記たくさん読ませていただきました

私は、どんなジャンルでもプロであるという人に憧れ尊敬します

内館牧子さんのお言葉をお借りすると

プロというのは、他の人に使えない魔法が使える人をいう

素敵だと思います これからも、よいお仕事をなさってください
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選ばれし者? (ひろなん@風琴屋)
2007-10-05 19:34:21
しまりすさん、ようこそ!返事が遅くなってすみません。

うちの家内や子供たちは、刺繍が好きです。
僕からすれば何であんな面倒くさいものをわざわざ好き好んでやるのかわかりません。

でも、僕のしている、雑音騒音に付き合う夜通しの体力仕事というのも、他人からすれば何であんな面倒くさいことをわざわざ好き好んでやるのかわからないかも知れません。

でもなんか苦しいけど楽しいんですよね。
仕事を選ぶ、仕事に選ばれるというのはそういうものかもしれませんね。

また、どうぞ!
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