いのちの煌めき

誰にだって唯一無二の物語がある。私の心に残る人々と猫の覚え書き。

てる子さん

2023-04-04 02:57:00 | 日記
てる子さんは90歳代、女性。歩行困難。移動時は車椅子使用。少しは自走も出来る。認知症はやや重度。会話は成立しにくく、大声をあげることが多い。気分がいい時は、大人の塗り絵をしていることもある。単純で簡単な図柄を好む。色使いは明るい。

大声で、がなり立てるように話すので、てる子さんを嫌厭する人は多いが、目を見て、ゆっくり話し掛けると、会話は少し成立する。

てる子さんには婚姻歴はないようだ。「お父さん、お母さん、、」と言うことが多い。たぶん、てる子さん自身の親御さんのことだろう。お父さんお母さんは何をしていた人なのか、どういう人だったのか、そういうことを聞いても、今のてる子さんには、もう何も答えられない。ただ、田舎ではなく、どこかの地方都市で育ったようだ。「仕事は何かしていたの?」と問いかけると「もぎり…」と教えてくれた。入場チケットか、何か、、そういうものをもぎる仕事だったのかなぁ?年代が違い過ぎて、それ以上、私には詳しくわからない。

てる子さんは、大声をあげて、一見、何もわかっていない人のように見えるが、意外と他人の表情をよく見て、理解している。例えば誰が親切で優しいか、あるいは誰が意地悪なのか、そういうことはよくわかっていた。

てる子さんが大声をあげるのは、案外、自分を守っているからなのかもしれない。






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