中学の頃

中一の時だった。　

僕は学力では、学校で1，2を争う生徒だった。　体力的には中ぐらいだ。

その頃、その中学の生徒層は、三つのグループにおおよそ分けることが出来た。

Ａ．　地元の生徒達：　主として農業、漁業等々である。

Ｂ．　役人の子グループ：　建設省の役人の子たちで、少数だ。　僕もそこに属す。

Ｃ．　振興住宅地グループ：　駅に近く大きな新興住宅団地が出来、さまざまな職種の人達がいた。

Ａは一種のヒエラルキーを形成していた。　ボスは小柄だが気の強く喧嘩っ早い親分肌の生徒だ。

一学期が始った頃、僕はそいつとなにかの事で諍いを起こした。　すると奴は「喧嘩するか！」と云った。　いきなり云われて、僕は、引いて黙ってしまった。

　要するに負けたのだ。　その後は、奴は僕を子分と見做し、他の奴と諍いを起こし始めると、僕を庇ってくれた。　しかし僕がそのグループの一員になった訳ではない。

僕のグループに体力的に優秀な奴がいた。　何をやっても一番で性格も明るく、人気者だった。

暫くすると、Ａグループに不穏な動きが現れた。　ボスに反旗を翻し公然と背く子分達が現れたのである。

或る時、その反乱分子達が、下校後、ボスを集団でやっつけようと云う相談をしているのを見た。　僕は、もう一人の友人と相談し悩んだ末、その事を担任に告げた。

担任は柔道部の先生で、がっちりした体格と男らしい風貌の熱い心の持ち主だ。

早速、反乱分子達を呼びつけ、事を収めた。　具体的にどうやったのかは知らない。　あれはいじめだったのか？　僕はそれを防止したのか？　今でもよく分からない。

ボスは相変わらずボスのままだった。　又しばらくすると、そのボスと、我がグループの人気者と一対一の勝負をして、覇者を決めることになった。

なにかのきっかけで、「喧嘩やるか！」、「おう！」　と云う事になったのだ

下校後、学校の近くの林に囲まれた空き地に皆、集まった。　二人は、睨みあいの後、喧嘩が始まった。

喧嘩慣れしているボスは、延びるボディーパンチを繰り出した。　人気者は避けて、取っ組み合いとなった。　くんずほぐれつしていたが、やがて人気者の方が優位となり上になった。　すると負けそうだったボスが人気者の肩を噛んだのだ。　「イテテテッ、肩を噛みやがった・・」　、そしてみんなが二人を引き離した。　勝負は終わったのだ。

明確な判定が下されたわけではない。　でもボスの反則負けだ。　誰もそれは云わなかった。　暗黙の内にそう云う事になった。　

その後、ボスと人気者は仲良くなった。　人気者が当然上である。　でもヒエラルキーが形成された訳ではない。　ボスの影は薄くなった。

熱血先生は、同僚先生と飲みに行って酔っぱらって、どこかの男達と喧嘩になり殴り倒したらしい。　それが原因で他校に転校して行った。　・・・・・・・僕は今でも先生は悪くないと信じている・・・・

人気者は、僕と、高校まで一緒だった。　柔道部に入り逞しくなった。　成人後、議員秘書となった。

ボスはその後どうなったか分らない。　多分漁師の倅だったのではないか、と思っている。