パニガレS試乗

F3に引き続いて、パニガーレSも試乗しました。

元々はF3だけの試乗で終わらせるつもりだったのですが、F3を乗った後にお店の方と話をしている時に、「F3とDaytona675って同じと思ってたけど全く逆方向でしたね」「そういえばパニガーレも今までのドカティとぜんぜん違うんですよー」ってな感じで話題に出てきたので、それじゃちょっと試してみるか、ってな展開になったのでした。ちなみにパニガーレのスタンダードじゃなくてSの方です。事前にちゃんと調べてませんでしたのでスタンダードとSの違いを知りませんでしたが、どうやら主にサスペンションの違いのようで。






左の2つがSの足回り。右の2つがスタンダードの足回り。Sはオーリンズということもさることながら、本来調整ツマミが付いている所に何やら見慣れないキャップと配線が伸びています。なんでも電子制御式サスペンション、だとかで。電子制御式サスペンションを採用している事自体知らなかった私ですが、乗る前に電子制御式サスペンションだと聞いたときは、「サスペンションの動きから荷重状態を読み取り、状況に応じて自動的に減衰を変化させたり、燃料噴射の状況にフィードバックしたりしてトラクションコントロールに活かすのか」と思ったのですが、メカニックの方の話を聞くとどうもそうじゃないようで。要は今まで我々がマイナスドライバーや6角レンチで(良いヤツをつけている人は指で回せるツマミで)回してた作業をコンピュータがやってくれる、ってことみたい。もちろん、プリセットが何パターンか入っていて、各走行状況に応じてワンタッチ(数タッチ必要かもしれませんがw)で設定を変えられる、という便利さはあるのでしょうが、逆に自分で微調整は・・・できないなんてわけはないでしょうが。ともかく、走っている最中に状況に応じて自動的に変化させていくわけじゃなさそう。「電子制御式」と聞いた時のワクテカを返して欲しい・・・。ちなみに、スタンダードはフロントがマルゾッキでリアがザックスだそうです。あれ?F3と同じだ・・・。と言ってもモデルは違うみたいですが(フロントサスのトップ形状とかで判断)。

さて、微妙なケチつけから始まりましたが、実際の試乗はけなすところがありません。街乗り域では、という但し書きはつけておきますが、その条件下ではものすごく良く出来たバイクだと思います。え?私がドカティを褒めるなんておかしい?いえいえ、おかしくありません。だって「面白くない完璧さ」なんですから。誤解を恐れずに一言で言うなら、車(4輪)みたいなバイク。一般人としてはかなり高いレベルのことをしてもバイクが勝手に全部やってくれます。ブレーキ操作に、タイヤのグリップの感触を確かめながら繊細に微調整する、なんて必要ありません。立ち上がりにリアのトラクションを感じながらアクセル開度を調整する、なんて必要ありません。人間のやる仕事は「ブレーキをかけるタイミングをバイクに教えること、倒すタイミングを決めること、アクセルを開けるタイミングを決めること」そんだけ。ホント、車みたい。ただ、突き詰めるとそういうわけにも行かないのでは?という意見も正しいと思います。そういう突き詰めた一般人以上の所で難しさが出てくるあたりも、車みたい。そこが面白いかは人によるでしょう。が、車(4輪)のスポーツ走行に全く興味が無い私の出す結論は、当然、「面白くないバイク」ということになります。

てな感じで、先に総括してしまいましたが、以下、個別に。

まず、初めに車体を起こした印象が「軽い!」。乾燥重量で170kgちょうど位だとか。装備重量で195kg位だとか。Daytona675Rの装備重量が185kgだとか(「だとか」と書いているのは、重量表記の内容が、燃料を含めるのかとか重量に含めない部分が場所によって違うことが多いので正確な比較ができないため)。排気量の違いによる車重の違いはもはや無いといっても過言じゃないレベル。むしろ乗り手の体重の方を気にすべきかも・・・(ここ数年、単調増加なんだよなー・・・)。そして、またがると、ちょうど良いバランス。いつもドカティのタンクは細すぎて気持ち悪いレベルだと密かに思ってたのですが、パニガーレは普通。F3の後でしたが、F3と同じレベルと感じる程度に広くもなく狭くもない股の開き角でした。ニーグリップしやすいですね。ただ、両足の膝の下は部品がごちゃごちゃあって引っ掛けそうな怖さもあります。左はサスペンション(のカバー)、右はミッションケース(?のカバー)。左は全世界共通ですが、右は日本の騒音対策用に日本仕様だけ取り付けられた巨大なカバーなんだそうです。これがよく当たるレベルで邪魔でねー。それでもライディング中はほとんど邪魔にならないみたいだし、気にしたら負けかも。ハンドルもバランス良いですね。開き角も垂れ角も適切。ホント、ポジションはF3と違いを感じませんでした。

アクセルを煽ってブリッピングすると・・・おお、そうそう、アクセルってこんな感じが正しいよねw F3のアクセルがアレだったために、ちょっとホッとしたりw エンジンの回り方は日本車みたい。私の知る、999までのドカティLツインはもっとがさつなイメージだったのですが、パニガーレのエンジンはVTR1000 SP2みたいな印象。「2気筒ですが、しっかり仕事させてもらいます!」って感じ。ココらへんから、上に書いた「面白くない完璧さ」という言葉が頭をよぎり始めます。

で、発進。公道に出るために左折するときにも、サスが動いているのがわかります。特に、左足のすぐ下にリアサスがあるので、リアサスが伸び縮みしているのが足に当って分かるんですよ。尻の感触でもサスの動きはわかりますが、直接触れてわかるって初めての体験w そして交差点にたどり着くのでブレーキ。ABSが入っていると聞いていたので無理に急ブレーキしてみますが、キックバックも感じない自然なブレーキ。どうなってるんだろう?私のかけ方がまだ甘かった可能性もありますが、ABSの調整もなにか有りそうな感じ。急ブレーキをかけてロックするのを感知してからABSが作動するんじゃなくて、予め急ブレーキ自体ができないような(ブレーキの)油圧の具合になっているとか。ともかく、楽に急ブレーキできそうなことを体感。これって凄いですよね。ブレーキなんて一番難しい操作だと思ってますから、それが簡単に高いレベルで自然にできるなんて・・・。

あとは特筆すること無し。フツー。良くも悪くもフツーに完璧。私くらいの腕だと、サーキットで簡単にタイムが縮まって腕が上がったと勘違いしそうですね。高い速度でコーナーに入る恐怖感さえ無くしてしまえばいくらでもタイムが上げられそうな感じ。つまり、自制心を無くした方がいい道具。そう、道具なんですよね。ほとんど全部やってくれます。試乗後、「今後、バイクってこういう方向に進むのかなー?」とお店の人と話してました。多分、新世代のバイク、なんだと思います。お店の方は「ドカティらしくないでしょ?ドカティのSBKの延長線上と思うんじゃなくて、パニガーレというカテゴリーのバイクと言うべきかも」なんて話してらっしゃいましたが、これはドカティだけじゃなく、今後出てくるスポーツバイクが全てこういう方向になっていく、そういう新世代のバイクなんじゃないか、と。だからこそ、旧世代の頭の私には抵抗があるんですね。「バイクに乗る楽しさは、バイクと対話することにある。ライダーが入力した操作にバイクが反応して、そのバイクが動作のインフォメーションをライダーに伝える。そのインフォメーションを元にライダーは次の操作をする。」これが(ナルシスト入っててキモイですが)私の考えるバイクの楽しみ方。ですが、パニガーレで感じたのは、ライダーの失敗もなるべくバイクがフォローしてあげる、ライダーに優しい、けれどもライダーにインフォメーションを伝えず隠してしまう、そんなバイクだな、ということ。少なくとも、私はそういう印象を持ちました。・・・きっと、こういうのは昔から繰り返されてきたんだと思うんです。例えばタイヤの進化。昔は滑るのが当たり前で、その中でいかにして前に進めるかを考えていたのが、今ではかなりの高次元でないと滑らない。だからアクセルワークがラフでもグリップする。とか。例えばフレームの進化。鉄フレームとアルミフレームってやっぱり違います。でも、ぶっといアルミツインスパーで剛性ガチガチにしたかと思えば、鉄フレームのようなしなりも必要という流れに戻ったり。とか。車だって、オートマが主流になったり、とか。昔よりもより良いものにするために進化するのですが、昔のやり方に慣れた人にとっては抵抗があるわけです。私がパニガーレに感じた反発はそういうことなのかもしれません。でも・・・これはあまりにもやりすぎで、「遊び」のないものに思えます。「良くできたバイク」とも言えますが、日本車、特にホンダ車に言われる「良くできたバイク」という評価とは別物で、ライダーの仕事を減らすバイクなんだと思います。こういうのって、飽きが来るのも早いと思うんだけどなぁ。どうなんだろ?とりあえずスポーツバイクが全部こういう方向になって行ったら、私がスポーツバイクを買いたくなる気持ちも完全に消えうせるでしょう。お財布と体には優しいことなのかもしれませんw あ、そうなったらたぶんオフ車に行くな。オフ良いよね、オフ。きっと最後のフロンティアw

あ、最後に、書き忘れていたというか、書けなかったというか、モノコックフレームの話。先日のBrittenのエントリーのコメントに書いたように、カワサキの12Rの印象があってモノコックフレームに良い印象を持っていない私ですが、同様にパニガーレのモノコックフレームも眉につばつけて遠巻きに見ていました。で、実際乗ってみてどうか、ということなんですが、はっきり言って街乗りペースではわかりません。微妙に「重心位置が掴み難いかな?」と思ったような、思わなかったような・・・。それはモノコックフレームとは関係ない気もしますしw これは高荷重域でないとわからないでしょうね。


※おまけ
初めの方に書いた「状況に応じて自動的に設定を変更する電子制御式サスペンション」は、実は新しいムルティに採用されている「かも知れない」?これもお店の方の話で、その方も今勉強中とのことでしたので、断言は避けてらっしゃいましたが、パニガーレと違うのは確からしく。路面状況が読めないオフロードも走るモデルのほうが優先順位が高いということかもしれませんね。とりあえず、見た目は写真のように、パニガーレと同じようです。

どうでもいいけど、ドカティの公式って何であんなに重いの??
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コメント
 
 
 
Unknown (タナカ)
2013-02-13 23:42:14
電子制御のABS,BR600RRにも採用されてましたね。雑誌でレース参戦の記事読みましたが、ストレートエンドで遠慮無くカツーンとかけても全く大丈夫だとかw
ワールドワイドだとボッシュの電子式のABSユニットがBMWとかDucatiとかKawasakiで採用されてたと思います。HONDAのはユニットの重量が10kgくらいあるはずですが、ボッシュのは2kgなんですよね。すごい。
 
 
 
Unknown (タナカ)
2013-02-13 23:43:36
うは、CBR600RRです~。
 
 
 
Unknown (嘉平)
2013-02-14 23:35:18
>タナカさん
そういえばCBR600RRのABSはもうかなり前(4,5年前?)のバイク雑誌で取り上げられていた気がします。
新垣氏あたりが試乗体験していて、「ちゃんとスポーツ出来るブレーキ。今までの安全一辺倒のABSとは違う」みたいなことを書いてたような。

もうレース参戦までできるんですね。
(レース専用ABSではなく、市販車の標準装備ABSでレース参戦、という意味で解釈しています)
パニガーレのも、草レースレベルでは十分戦力になりそうなレベルの出来だと思いました。
すごいです、ホントに・・・

でも、だからこそ、そういうABS付きのバイクに乗っている人に、
私のバイクは貸せないなー、なんて要らない心配をしてしまいます。
友人同士で試乗し合うことはたまにありますが、その手のABSに慣れた人にはちょっと・・・
まだ、そういう「良い物」を手に入れている人は周りにいませんがw
 
 
 
Unknown (MAX)
2013-02-15 19:48:06
僕も試乗しましたよ~。
レースモードで乗りましたが、1速ではいくら開けてもウイリーしない、2速では丁度いい角度で止まり、そこからいくら開けてもひっくり返らない・・・。
日本仕様で135馬力なのに、ピックアップが凄くて、自分の1098よりパワー感ありました。
超軽いし素直に曲がるし。
ハンドリングは日本車チックでしたね。
よく出来すぎてておもしろくないってのが僕の印象でした。
僕も電子制御が嫌いなので、電子制御無しの最後のドゥカティスーパーバイク、1098がますます好きになりました。
パニガーレの場合、電子制御も全てはタイムを削る為なんでしょうけど、趣味ライダーとしては魅力感じません。
1098以前までの、メカメカしいドゥカティが好きです。
 
 
 
Unknown (嘉平)
2013-02-15 23:24:08
>MAXさん
>そこからいくら開けてもひっくり返らない・・・。

ちょっ・・・w
ひっくり返る気で試乗するとは凄まじい覚悟ですねw

ともかく、MAXさんの感想も私に近いものとお見受けしました。

正直、ここまで書くべきか迷って本文では書かなかったのですが、
お店の方も「個人的には」という但し書き付きで、
「正直ドカティ好きにはむしろお薦めできないバイクだと思う」
とおっしゃってました。
ドカティに何を求めるかの違いかもしれませんね。
乗りこなす過程を楽しむタイプ(私やMAXさん、と言うか我々の仲間内はみんなそうかも)
と、とにかく凄いバイクに乗りたいってタイプと。

タイムを削るためなのは、まさしくそういうことでしょうね。
きっとタイムは削れるでしょう、ほぼ誰でも。
でも、それって乗り手の腕か?って話で。
ここまで来たらモーター「スポーツ」じゃないと思うんですよね。
そこに激しく抵抗がある・・・
今後のスポーツバイクってこうなっていくんでしょうかね・・・?

・・・やっぱ、オフか!w
 
 
 
Unknown (タナカ)
2013-02-15 23:34:02
そういえば件のCBRの記事はこれに変えてって話だったかもです。吊るしの状態では流石にレースまでは無理?
http://www.honda.co.jp/HRC/products/kitparts/cbr600rr2010_kit/ecu/
 
 
 
Unknown (タナカ)
2013-02-15 23:45:06
僕自身は今のCBがABS付きなので、もしSSに乗るとしたらABSってなんかちょっと魅力的ではあります(笑)
 
 
 
Unknown (嘉平)
2013-02-16 13:39:32
>タナカさん
ああ、やはりレース専用部品があるんですね。
部品、というかECUか。
部品は同じで制御の仕方が違うといったところでしょうか。
そういえばパニガーレもABSの効き方をユーザーがある程度変更可能だとか。
なんていうか、もう・・・・・・やっぱり世界が違うなって感じ。

しかし、私の記憶ではタナカさんってNC39に乗ってらっしゃると思ってたのですが、
乗り換えられたんでしょうか?
ABSに慣れてしまったら、もうやめられないでしょうねぇ。
でも、ABS付バイクって自分でフルード交換が出来ないと聞いたんですが(BMWに至ってはブレーキパッドも交換できないとか?)、その辺どうなんでしょ?
 
 
 
Unknown (タナカ)
2013-02-17 13:16:03
僕が乗ってるのはNC42のABSモデルなんですよ。

ABSは、なんというか、保険?みたいな?
タイムは作動していないときの方が出る印象ですね…。

サーキット走行でもこれって役に立つのかいな?と試してみたことはあるのですけれど、上で話題にされている電子式ABSとちがって「カカカッ」ときてサスが動いてしまうので、姿勢を変えつつある局面でこれはなんか怖いです。気持ちの問題だけであるならその先もあるのでしょうが、僕はちょっと無理そげ。

フルード交換はお店でしかしたことないんです(笑
ただやはり色々と独特で、ABSのリヤブレーキのホースが特殊なためにフツーのバックステップは装着不可だったり。あとブレーキパッドもちょっと違いますね。シルバーウィングと一緒の型式ェ…。

とABS故の微妙な問題もあるのですけれど、今時のABSはそういうネガが解消されている、だと…?とか思うと、余計に惹きつけられてしまうみたいなんですよねぇぇぇ。
 
 
 
Unknown (嘉平)
2013-02-18 02:33:34
>タナカさん
え!?Nc42でしたか。勘違いしてた・・・

しかし、お話を聞くと、NC42のABSは私のイメージする「使いづらい方のABS」のようですね。
>「カカカッ」ときてサスが動いてしまうので
ってのが怖い・・・スリップダウンよりはマシなんでしょうか?いや、どっちも怖いな。

ABS付モデルのメンテはやはり(私にとっては)微妙な感じのようで。

確かにそういう話を聞いてみると、
スポーツモードのABSってのが魅力に感じるのもわかる気がします。
うーん、でもなぁ・・・ となってしまうのは、何度も書いている通り、私が古い人間だからなんでしょうね。
 
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