原作:唐七公子
時は乱世、九州という土地が小さな国々に分けられ、戦争が頻発
辛巳年の冬、陳国と衛国の間で戦争が起こり、衛国王室は抵抗もせずに降伏した
衛国の文昌姫だけ降伏を拒否し、毅然と百丈もの城から飛び降り、殉国
それを目撃した陳国世子蘇誉は、「姫の葬儀式で手厚く葬ろ」と淡々と命じた。
*注:世子とは諸侯王、親王などの世嗣
史書の記録はそれまでだが、その裏に隠された話はまだ始まったばかりです。
(一)
私の名は葉蓁、衛国の文昌姫
殉国の時、特に何も考えていなかったが、ただある人のことを思い出した
この十七年の短い生涯で唯一好きだった人
銀色の仮面を被っている彼は、名前が「慕言」と教えてくれた
慕言、「慕う」の「慕」に「無言」の「言」
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私は衛国の国教である清言宗で育てられました
十六歳の時、父上は私を宮殿へ迎え、文昌という封号を与えてくれた
それまでは師匠と君瑋と一緒に暮らしていた
十四歳の夏のことだった
私は山で蛇に噛まれ、気絶した
目が覚めたら、誰かに足を掴まれているのに気づき、思わず力を入れて蹴った
「気性の荒い娘だね。助けてあげたのに、恩を仇で返すとは」
彼はもう私のことなんか覚えていないかもしれない
「国が滅びれば、葉蓁は死ぬ」
これが姫としての信仰
だから、殉国のことに後悔はない
ただ、二度と慕言に会えないことは遺憾だった
つづく
PS:すみません、仮面を被っている写真は見つかりませんでした