ウクレレとSwing(スヰング)音盤

ウクレレ ラテン・ムード (1963) / ハーバード太田のウクレレとラテン・コンボ

オータサンが本国アメリカ・ハワイでレコードデビュー以前の、軍役で日本駐在中に日本のレコード会社に吹き込んだ数枚の10インチ音盤の一つ。ビクター盤は63年の本作と、61年の「南の夜のウクレレ・ムード  /ハーバート大田とハワイアン・オーケストラ」があるが、のち2000年に「Ukulele Masters in Japan 1960-1964」というコンピレーションに再編されてCD化が実現している。本盤からの音源についてはA-3, B-1の2曲がCD化の際に収録時間の制約により選曲から漏れてしまった為、ここでしか聴く事ができないという事もあるが、なんといってもこのジャケットには抗しがたいコレクター欲をそそられてしまった。28歳の若き日のオータサンが波止場らしき場所で、愛器マーチンM-3を抱えた勇姿である。

61年「南の夜の・・・」はモノラル盤(CD化の際にステレオで復刻が実現)、本盤はジャケットにも大書きされているようにステレオ収録というのが大きなセールスポイントであったようだ。当時の定価は1,300円。内容は「ラテン、ジャズのスタンダード曲を中心に、ピアノ、ベース、コンガ、ボンゴをバックに演奏しています」とライナーノーツにもある通り、ジャズ色の強いセッションとなっている。本作と同様、オータサンの除隊/ハワイ帰島前に吹き込まれたポリドール盤「南国のリズム ウクレレは歌う  / ハーバート太田(ウクレレ) 山口銀次とルアナハワイアンズ」が和製エキゾチカであったのに対し、本盤では本格的な和製ジャズを聴く事ができる。本国デビュー前にして既にこの成熟した音楽性、はじめから只者でなかったのだという事が分かる。

レーベル:ビクター (SLV-34)
プロデュースや演者は不明

SideA
1. ベサメ・ムーチョ
2. ムーン・イズ・イエロー
3. ハウ・ハイ・ザ・ムーン → CD化の際に未収録
4. イエスタデイ

SideB
1. ナイト・イン・チュニジア → CD化の際に未収録
2. クマーナ

特に「ナイト・イン・チュニジア」はアルバムを通しての聴きものだと思うが、ジャズという事でCD化の際には選に漏れたのだろうか。
内袋にはビクターによる教育助成金(ベルマークと同じシステム)の説明が。ビクターのレコードを買ってマークを集めてPTAで集めると、学校や児童福祉施設に音響機器などが贈られたという。古き良き昭和。
ハワイ帰島後はカーネギーホール出演を含むアメリカ全土の演奏旅行が決まっているとあるが、米軍関係の公演だろうか。或いはこれが噂のエド・サリヴァンショー出演時だったのか。果たして夢の公演旅行は実現したのだろうか。ハワイ帰島後のオータサンはアメリカ本国Decca、ハワイではHula Records傘下のSurfsideよりアルバムを制作しウクレレ最高峰のプロ音楽家として長いキャリアがスタートするのだが、本盤はその前夜の貴重な記録である。

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