ウクレレとSwing(スヰング)音盤

南国のリズム ウクレレは歌う(1963) / ハーバート太田(ウクレレ) 山口銀次とルアナハワイアンズ 

ハーバート太田ことオータサンが本国ハワイでプロデビュー以前、朝鮮戦争中の軍役で来日中に日本のレコード会社に吹き込んだ数枚あるレコードの一つで、33回転の10インチ盤である。この時期の吹込みはビクターが後に貴重な音源を纏めてCD化を実現しているが、本盤はそれとは異なるポリドール・レコードでの吹き込み。兵役を終えてハワイへ帰島するのが63年の4月末で、本盤はその除隊前に日本で行われた吹込みのひとつだったようだ。当時の定価1,200円という事で貨幣価値の変動を考慮すると今と違ってレコードという音楽コンテンツがとても高価な娯楽であったことがわかる。大切に取り扱い、繰り返し聴き、穴が開くほどジャケットを眺めたものだったろう。

のち1998年にCDとしてリリースされた音源『Legendary Ukulele』が帰島前の仲間達が集まっての私的な送別パーティでの録音で1962年だから、本盤の吹込みもその前後(62年~63年)に行われたものだろう。正確なリリース年は不明だが拙稿では一応63年作として記載する。

編曲は山口軍一と平岡精二(*印の5曲)。山口軍一氏は前述の『Legendary Ukulele』の音源を録音し個人的に保管していた人物でもあり、本盤で伴奏を務めるルアナ・ハワイアンズ のリーダーで、銀次氏は実兄。

平岡精二氏はジャズ・ビブラフォン奏者で本盤でも華麗なるマレット捌きを聴かせているが、ハワイ帰島後のSurfside Recordsにおけるオータサン諸作品でもアレンジャーとして参画し、重要な役割を担う事になる。という事でどちらもオータサン初期の音楽キャリアで重要な人物といえるだろう。

A
1.タブー*
2.ダヒル・サ・ヨ
3.バリ・ハイ*
4.ジャングル・ドラム*
5.珊瑚礁の彼方*

B
1.ビギン・ザ・ビギン*
2.カイノア
3.キャラバン
4.パピオ
5.夕日に赤い帆

ハワイアンバンドがバッキングの演奏を担っているものの、選曲からもわかるように本盤は所謂ハワイアン音楽集ではなく、サウンド的にはむしろアーサー・ライマンの系譜に繋がる和製エキゾチカの音盤と分類できる。1曲目からしてそのアーサー・ライマンが50年代末に吹き込んだ代表作『タブー』を取り上げている。


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