ウクレレとSwing(スヰング)音盤

15 Hawaiian Favorites (1974) / Poki-San & Friends


ハワイのPokiレーベルからのリリース。プロデュースはBill Murata、録音はSounds Of Hawaiiスタジオ。レーベル名の「Poki」とはマグロなどの切り身を醤油やごま油等と和えたもので、ハワイのローカルフード。

70年代初めから実に90年代初頭にかけての長きにわたり、オータサンはこのPokiはじめとするハワイ・ローカルの様々なレーベルからBill Murataプロデュースの下で多くの作品を発表する事になるが、オータサン名義によるアルバムとしては71年のアルバム「Pacific Potpourri」(Lehua Records )から76年の「The Many Moods Of Ohta-San」 (Discos Tropical Records)まで約5年のインターバルがあり、その間オータサンはアメリカ本土の大手レーベルA&Mと契約し、国際マーケット向けのアルバムをリリースしていた・・・というのは表向きの話。実はその間もハワイに帰るとハワイ音楽の名プロデューサーBill Murataの下で気心の知れた地元ミュージシャンとのレコーディング・セッションに勤しんでいたのである。(なんと偽名で!)

本作はそんな時期のオータサンが「Mr."X"」或いはタイトルの「Poki-san」なる変名で参加した覆面バンドで、タイトルがズバリ示す通り、ハワイ・ローカルのマーケット向け選曲。スチール・ギター、ビブラフォン、スラックキー・ギターなどをフィーチャーした本場ハワイアン・バンドによる演奏で、オータサンはそのバンド・メンバーの一人としてコードのストラミングによる伴奏に加えて、時折いかにもオータサンらしいウクレレ・ソロも聴かせてくれる。

メンバー・クレジットは以下
Steel Guitar - Barney Isaacs
Slack Key Guitar - "Atta" Isaacs
Vibes - Francis Hookano
Guitar - Alexander Among
Bass - Robin Paraz
Ukulele - Mr."X"

A1 Naka Pueo    
A2 Ka Makani Ka'Ili Aloha
A3 Kaimana Hila / Waikapu Medley
A4 Lei Aloha Lei Makamae
A5 Maui Chimes
A6 Kuu Home

B1 Ua Like No A Like
B2 Mahina O Hoku / Puamana Medley
B3 Kanaka Wai Wai
B4 Waipio / Makalapua Medley
B5 Hanohano Hanalei
B6 Pua Tubarose

本作で注意すべきは、2年後の1976年に契約上の問題がクリアされたのか、本来のオータサン名義で「Instrumental Hawaiian Favorites / Ohta-San (Poki Records ‎– SP 9002)」として再リリースされている。別タイトルだが同じ内容。

スラックキー・ギターでクレジットされている"Atta" Isaacsは、同楽器のハワイを代表する名手の一人だが、ウクレレ関連だと先に紹介済の「3 Ukuleles  / John Lukela」にも参加していた。オータサンとは The New Hawaiian Bandでの共演もある。

さて筆者が入手した盤だが、これが面白い個体で、ジャケット裏面に印刷されている元々のライナーノーツの上から、別の内容が印刷されたライナーがノリで貼り付けてあったのだが、古い盤で糊が乾燥しきって朽ちており、ペリペリと簡単にはがすことができた。

上から貼ってあるライナーには「スペシャル・シルバー・アニバーサリー・エディション」「祝・ハウス・オブ・ミュージック25周年」と大きく書かれており、同店のオーナーさんが満面の笑みでご満悦な様子の写真まで掲載されている。ハウス・オブ・ミュージックはかつてハワイで多店舗展開していたレコード/楽器店で、どうやら取引先などに創立25周年の記念品として贈呈していたものらしい。ライナーノーツの代わりに、店の歴史が誇らしげに紹介されているが、ネットで調べてみると、後の2001年には経営不振で全店舗が競売にかけられ、20名以上いた従業員は職を失ったようだ。時代の変遷とレコード/CD業界の斜陽によるものだろう。剥がした下には、本来のライナーが糊の跡で汚れつつも、まだ判読可能な状態で残存していた。そこにあるのはオーナー氏ではなく、ミキサー卓の前に座る一匹のビーグル犬の写真であった。栄枯盛衰。

色々あったみたいだけど、レコードの内容は最高である。我が家で大切に聴いてあげたい。
裏面のライナーノーツが簡単に剥がれて・・・
下から本来のライナーが出現!(糊の跡が汚いけれど)
音楽は素晴らしく、これからも大切に聴かせていただきます!
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