日々是好日

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梅酒

2020-05-07 10:56:41 | シニアライフ

高村光太郎詩集「智恵子抄」より

『梅酒』

死んだ智恵子が造っておいた瓶の梅酒は

十年の重みにどんよりと澱んで光をつつみ、

いま琥珀の杯に凝って玉のやうだ。

ひとりで早春の夜ふけの寒いとき、

これをあがってくださいと、

おのれの死後に遺していった人を思ふ。

おのれのあたまの壊れる不安に脅かされ、

もうぢき駄目になると思ふ悲に

智恵子は身のまはりの始末をした。

七年の狂気は死んで終わった。

厨に見つけたこの梅酒の芳りある甘さを

わたしはしづかにしづかに味はふ。

狂乱怒涛の世界の叫も

この一瞬を犯しがたい。

あはれな一個の生命を正視する時、

世界はただこれを遠巻にする。

夜風も絶えた。

高村光太郎の詩集「智恵子抄」を読んで、最も感情に浸った詩です。

詩に使われている言葉、難解なものは一つもありません。

高村光太郎の詩集を知ったのは、遥か昔、高校生の時代。

あれから、かれこれ60年。

シニア世代で、読む高村光太郎の詩「梅酒」は格別な味がする。 

10年ものの梅酒。

私にも深い関わりがあります。

「十年の重みにどんよりと澱んで光をつつみ、

 いま琥珀の杯に凝って玉のようだ。」

まさに、その通りです。

農ある暮らしを目指して、求めた遠隔地農場に最初に移植したのが

南高梅の苗木でした。

梅の実が収穫するようになって、毎年欠かさずに行ったことが、

自家製の梅干しづくりと梅酒造りです。

この梅酒には決め事があります。

10年間醸造後でないと飲料に供しない事になってます。

自他共に厳守事項です。

製造年月日のラベルが張られた梅酒の瓶が、あっちこっち置かれてます。

「たまには、梅酒で乾杯しようか?」

誘われて用意する梅酒、15年もの。

その味も格別です。

 

 

 


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