0257_神々の戦い(026)裕也の冒険-時の魔法人の門⑤-
扉が開く。
「ぎぃぃい。ぎぃ。」
--(2)慈愛の試練①--
扉を開け、一歩踏み出すと、そこは街であった。
天空に声が響く。
「ここは、慈愛の門である。
お前の慈愛を試そう。」
街の道端には、多くの人が出ている。
若者は、どのような街か聞こうと街人に近づいた。
「うぅぅ。う。うぅぅぅ。」
街人は、呻(うめ)いている
顔は、半分爛(ただ)れている。
(う。何て惨(むご)い。)
若者は、この悲惨な状況にショックを受けた。
(これは、現実なのか?
だとすると何が原因だろうか?
何かの疫病なのだろうか?)
そういろいろ考え思った。
街のあちらこちらで呻き声を上げている。
(何て悲惨なんだ。)
ふと見ると、街の広場がある。
その中心で、黒い僧服を着て首から数珠を下げている者がいる。
その者は、何かを叫んでいる。
「この苦しみは、神から与えられた苦しみだ。
神は、我々に試練を与えられる。
この苦しみに耐えなければならない。
甘んじて神の意志を受け入れるのだ。
苦しくは無いのだ。」
その村長(むらおさ)らしきものには、
病気の気配も苦しんでいる様子もなかった。
その長(おさ)に赤ちゃんを抱いた女性が近づいて行く。
女性の体は、半分爛(ただ)れていたが、赤ちゃんは健康そうであった。
元気に泣いている。
「この子にお乳をあげれません。
長(おさ)よ。どうかこの子を助けてください。」
女性は、苦しみながらも懇願(こんがん)した。
つづく。 次回(時の魔法人の門⑥)