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JFK暗殺事件の真相――オズワルド単独犯行説の虚構を暴く 29 パークランド病院の医師たちの証言

2018-04-14 | JFK暗殺事件について
(承前)

 この疑惑はデヴィット・リフトン著『ベスト・エヴィデンス』(邦訳彩流社、原著1981年)で詳細に論じられている。
 同書はいわゆる陰謀論にありがちないかがわしさ・先入観による決めつけ・想像の飛躍などを排除し、検証しうる限りの事実にもとづいて、「最有力の証拠(ベスト・エビデンス)」たる大統領の遺体を巡る疑惑を追及している。公式説をその核心のところから突き崩した労作である。
 邦訳は上下二巻、細かい文字で二段組のボリュームだが、興味のある方はぜひご参照いただきたい。

 同書のポイントは、
○事件直後のパークランド病院での所見では、大統領の頚は明らかに前方からの銃弾による損傷であり、頭部の重傷は右後頭部に開いた穴で銃弾の出口と判断されたこと、
○ベセスダ海軍病院への遺体の移送の過程で「前方からの狙撃」という事実を否定し、「オズワルドによる後方からの一発説」という虚構のストーリーに合致させるべく、大統領の遺体に偽装工作が加えられたこと、
○ベセスダの検視報告はかかる遺体の偽装の上に成り立っていること、
○ウォーレン委員会はそれに反する全ての事実、とりわけパークランド病院での医師たちの所見を否定する意図に貫かれていること、
それらを数々の証拠から異論の余地のないレベルまで究明したという点にある。

 その当否を論じるのは手に余るし、本稿の目的ではない。
 ここで取り上げたいのは、ザプルーダー・フィルム第227コマ目で生じたと見られる問題の大統領の「喉仏の下の傷」についてである。少なくともこの点に限って言えば、ベセスダの所見=公式説は捏造であることは確実である。

 これまで異論の余地の少ない(あるのは解釈の問題のみ)端的な視覚的証拠だけを意図的に取り上げてきたが、それに基づくここでの仮説を補強する上で、最重要の証言だけは紹介しておきたいと思う。

 彼ら外科医は、ケネディ大統領の遺体を最後に見た直後(最も長く見ても1時間20分程度の後)に、果たして記者会見の場で何を語っているだろうか。

 
※記者会見開始の際の様子 「ベスト・エヴィデンス」所収の写真。ペリー医師(向かって右)の腕時計は14:18の辺りを指している。

 前提として理解しておく必要があるのは、大統領が搬入されたパークランド病院の処置室での状況である。それは次のようなものであった。

 パークランド記念病院の手術室にペリー医師が入って、ケネディ大統領の命を救う任に当たるとすぐに、彼は気管切開を決意した。これは咽頭部を切開して、気管に直接チューブを差し込んで空気の通りをよくするための手術だった。全くの偶然だったが、この外科手術に最適な場所に傷があった。そのためにペリー医師は、この銃弾の傷に真っ直ぐにメスを入れた。この結果、喉の傷跡の形状を変えてしまったのだ。このため、ペリー医師が切開する前に実際の傷を見たのは、ダラスの医師たちとその他にごく少数のものだけとなったのだ。
(『ベスト・エヴィデンス』より)


 このように大統領の喉元の傷を原形のまま見たのは、パークランド病院でも処置室に搬入時から居合わせたごく一部の人物に限られる。当然ながら、ベセスダの検視医はこの傷を元の形では見ることはできなかった。この点でも、どちらの言葉が重要かは指摘するまでもない。この傷について正しく証言できるのはパークランドの医師たちだけなのである。

 最重要の人物は、喉の切開に当たったM・ペリー医師である。彼はこの記者会見において、再三にわたるこの傷に関する記者の質問に、一貫して明快に述べている。
 「ベスト・エヴィデンス」によれば、この記者会見の文字起こしはウォーレン委員会では発見できなかったとされていたが、その後リフトン自身が一九七六年になって、ホワイトハウスの公式の書き起こしを発見したものである。同書にもこの記者会見の一部が掲載されているが、現在ではネットで公開されているので、直接当たってみたい。
 インタビューは中部標準時(ダラスの現地時間)14時16分から開始されたと記録されている。
 (なおペリー医師は同乗のコナリー知事ばかりか、二日後に警察署で撃たれたオズワルドの救命にも当たったというから、まことにこの事件に因縁深い人物である。本人にとっては困惑の限りだったであろう。)

QUESTION-
 Can you describe his neck wound?
DR. KEMP CLARK-
 I was busy with his head wound. I would like to ask the people took care of that part to describe that to you.
QUESTION-
 What was the question?
DR. MALCOM PERRY-
 The neck wound, as visible on the patient, revealed a bullet hole almost in the mid line.
QUESTION-
 What was that?
DR. MALCOM PERRY-
 A bullet hole almost in the mid line.
QUESTION-
 Would you demonstrate?
DR. MALCOM PERRY-
 In the lower portion of the neck, in front.
 質問 首の傷がどのようなものだったかお話しください。
 ケンプ・クラーク医師 私は頭部の傷への対処で多忙でした。その部位の処置をした者に語ってもらっていいでしょうか。
 質問 質問は何だったでしょうか?
 マルコム・ペリー医師 患者の体に見られた頸部の傷は、ほぼ中心線上に位置しており、銃弾による孔であることは明らかでした。
 質問 それは何だったのですか。
 マルコム・ペリー医師 銃弾の孔です。ほぼ体の中心線にありました。
質問 どんな傷か示してみてもらえませんか。
 マルコム・ペリー医師 頸部の低い位置、前側です。
(略)
QUESTION-
 Where was the entrance wound?
DR. MALCOM PERRY-
 There was an entrance wound in the neck. As regards the one on the head, I cannot say.
QUESTION-
 Which way was the bullet coming on the neck wound? At him?
DR. MALCOM PERRY-
 It appeared to be coming at him.
 質問 入り口の傷はどこにありましたか?
 マルコム・ペリー医師 頸部に入り口の傷がありました。頭部の傷については、私には述べることはできません。
 質問 大統領の頸部に当たった銃弾は、どちらの方向からのものだったのですか?
 マルコム・ペリー医師 大統領に向かってきたものだと思われました。
(略)
QUESTION-
 Doctor, describe the entrance wound. You think from the front in the throat?
DR. MALCOM PERRY-
 The wound appeared to be an entrance wound in the front of the throat; yes, that is correct. The exit wound, I don’t know. It could have been the head or there could have been a second wound of the head. There was not time to determine this at the particular instant.
 質問 先生、入り口の傷について説明してもらえませんか。(銃弾は)前方から頸部に当たったものと考えられますか?
 マルコム・ペリー医師 そのとおりです。その傷は頸部の前方への入り口の傷だと思われました。出口の傷については、私にはわかりません。出口は頭部だったかもしれないし、もう一つの傷が頭部にあったのかもしれません。それを判断する時間はありませんでした。
(略)
QUESTION-
 Can’t we clear this up just a little more? In your estimation, was there one or two wounds? Just give us something.
DR. MALCOM PERRY-
 I don’t know. From the injury, it is conceivable that it could have been caused by one wound, but there could have been two just as well if the second bullet struck the head in addition to striking the neck, and I cannot tell you that due to the nature of the wound. There is no way for me to tell.
 質問 少しはっきりとさせておきたいのですが、あなたの判断では、傷は一つですか、二つですか? もう少しお答えください。
 マルコム・ペリー医師 わかりません。損傷の状態からすると、一つの銃創から生じたとも考えられました。しかしなおかつ、頸部に当たった銃弾に加えて、第二の銃弾が頭部に当たったとすれば、二つ傷は別個のものであったかもしれません。そのことは傷の状態のために説明ができません。私には申し上げることができないのです。


 このように、さほど長くもないやりとりの中で、ペリー医師は記者団に対して都合3度にわたって「頸部の傷は前方からの銃弾による銃創であった」と語っている。言うまでもなく「オズワルドによる後方からの銃撃のみ」とする公式説を真っ向から否定する証言である。
 同様の証言はこれにとどまらない。


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