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11/22/63――ケネディ大統領暗殺事件について 4

2017-10-09 | JFK暗殺事件について
 ケネディ大統領暗殺事件の公式見解「オズワルド単独犯行説」に対し、反戦・リベラルの映画監督O・ストーンが根本的な疑問を叩きつけた91年の映画『JFK』公開から、すでに四半世紀が経過した。時が経つのはじつに早い。

 この事件がある種ミステリーとして多くの関心を引いているのは、映画に描かれたような明白な組織的陰謀にもかかわらず、その後も変わることなく公式には真相が隠蔽されたまま、陰謀説vs.公式見解が真っ二つに対立していることにある。
 この暗殺事件にまつわる疑問とは、よく見られるように「陰謀論」と一括りにしてして片付けられるものではない。それは公式見解を無批判に追認した単なる思考停止である。
 仮に陰謀論というのならば、これこそ二十世紀最大の、そして正真正銘の陰謀だと断言しても過言ではない。

 なお先述のとおり、この世紀の陰謀を説き明かす最高機密とされてきた資料を、かの型破りのトランプ大統領が今月(2017年10月)中にも明らかにすると期待されているという。
 これまでの経過からすれば、どこまで公開されるのか疑問があるが、いずれにしても近年最大の歴史的見ものなのは間違いない。

 『JFK』が古びないのは、映画としての完成度もさることながら、その物議を醸した公開後もなお、暗殺事件自体いがいまだに迷宮じみたミステリーとなっているためでもある。
 こうして筆者が書いているのも、一読書人・映画ファンの単なる「趣味の謎解き」に過ぎないのだろう。そういうわけで、ぜひお気軽におつきあいいただければと思う。

 一見よくできた、複雑で入り組んだミステリーほど、読み返すと根本の点でアラが見つかるものだ。その上にどれほど精緻にストーリーが組まれようと、結末から振り返ってみれば、その一点ですべてが白々しく感じられるものである。
 そこで古典的な犯罪推理の定石通り、まずは「確認できる事実」をしっかりと固めた上で、一方の「犯人が偽装したストーリー」、そして両者から得られる最も妥当性のある「結論」とを、それぞれなるべく峻別して推理していきたいと思う。


 アルトジェンズの写真から読み取れる事実

 いま一度、アルトジェンズが捉えた暗殺事件の瞬間(正確には初弾発射から4秒前後の時点)の写真をよく見ていただきたい。事件の緊張感が直接感じられる、非常にすぐれた報道写真である。



 まず、手前のリムジンが大統領車、その3列目のシート向かって左側に坐ったフロントガラス越しのケネディ大統領が、喉元を両腕を挙げて押さえている(その動作には、後述するように重要な意味がある)。
 そしてその大統領の左腕に、大統領夫人・ジャクリーンが「どうしたの?」といったふうに白手袋をはめた手を添えている。
 まさに暗殺の決定的瞬間を捉えた、歴史的な写真に違いない。

 しかし、この写真の意味はそれにとどまるものではない。
 事件の政府調査報告『ウォーレン報告書』が描き出したストーリーの核心、「オズワルドによる、テキサス教科書倉庫ビル(Texas School Book Depository、写真の左側半分、立ち木の向こうに入り口が写っている煉瓦造風のビル)六階からの3発の射撃がすべてであった」という説 "lone gunman theory" を前提とすると、直ちに違和感が感じられる写真でもある。
 以下を見る前に、その違和感を共有していただきたい。


 確認できる事実として、この情景の手前側、すなわち写真を真ん中で左右に区切った左半分のうち、そこに姿が確認できる人物の多くが、大統領の方向ではなく、またかなり上方の教科書倉庫ビル六階でもなく、車列の真後ろ、しかもほぼ水平方向に一斉に目を向けている。
 
 まず、大統領のリムジン直後につけている車上のシークレットサービスの要員のうち、万一に備えて車外に乗り出している5人のうち少なくとも3人が、彼らから見て右を向き、「水平方向・車列の真後ろ」を振り返る動作に入っている。
 
 次に、パレードルートの向こうの歩道に一列になっている観衆のうち、大統領車の右後方に位置する人々、ここでは上記の立木あたりまでに並んでいて、頭部の向きがはっきりと確認できるおよそ15人のうち7人、つまり約半数が、同じように「水平方向・車列の真後ろ」に目を向けている。
 そのいずれもが、彼らの隣にいる華やいだ表情の人々と明らかに異なり、何かに気を取られたように無表情でいることに注意していただきたい。
  
 さらに、大統領車向かってすぐ左に見える白バイ警察官もまた、上記の観衆と同じく、彼から見て左に顔を向け振り返るような動作をしている。
 アルトジェンズのカメラは望遠レンズだったため遠近感がつかみにくいが、真横の大統領のほうを向いているように見えるこの白バイ警官は、実際には大統領車の右後方、ちょうど後につけるシークレットサービスの車と同じラインに横並びに並走している。
 つまり、この警官もまた、白バイを操りながら大きく左側に頭を向け、「水平方向・車列の真後ろ」を確認しようとしているのである。
 

 
 これら、シークレットサービス車の要員と白バイ警官の動き、そして上記の「反応」を示している観衆の様子、加えて各人と車上の大統領との位置関係、それぞれが重要だと思われるので、ここで記憶にとどめておいていただきたい。


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