「訓練してきたことをやっただけ」

CNET JAPAN


1930年代アメリカの保険会社に勤務していたハーバード・ウィリアム・ハインリッヒ氏は、5,000件以上の労働災害を調べ上げ、「重症以上の災害が１件起きる背景には、軽症を伴う災害が29件、危うく事故になるような『ヒヤリ』「ハッと』するような出来事が300件ある」という「１：２９：３００の法則」、所謂「ハインリッヒの法則」を導き出し、発表しました。

同氏は「労働災害の98％は予防可能である」と指摘しています。これは、「『ヒヤリ』 『ハッと』する経験をしたことを事故の前兆と受け止め、背景には重大事故につながる原因があることを認識し、十分な対策を立てれば事故は未然に防げる」ということです。

ここで現在に目を転じると......。

今月半ば、ハドソン川に不時着したUSエア機の事故では、155人の乗客乗員が無事救出されました。米国メディアは「ハドソン川の奇跡」と称え、サレンバーガー機長の仕事振りを絶賛しています。機長はオバマ大統領の就任式典にも招かれました。

機長は、これまでに自分が経験した、『ヒヤリ』 『ハッと』の原因究明、対処法を求める、といったことを常に行っていたのだと思います。

これがタイトルにある機長の言葉、「訓練してきたことをやっただけ。自慢も感動もない」に結びついたのでしょう。

表面に現われている事象を文字通り「氷山の一角」と捉え、真の原因をつきつめ、対応していくことが必要であると再認識させられた事件でした。