DOWN IN SMOKE 猫馬鹿無用編

再開!…忘れた頃に…そして、たぶんまた存在を忘れる…

映画「ノーカントリー」(NO COUNTRY FOR OLD MEN )

2008年04月27日 | 映画感想

監督 ジョエル・コーエン&イーサン・コーエン
主演 ハビエル・バルデム トミー・リー・ジョーンズ ジョシュ・ブローリン
2007年 アメリカ

                       

【ストーリー】
狩りをしていたルウェリン(ジョシュ・ブローリン)は、死体の山に囲まれた大量のヘロインと200万ドルの大金を発見する。危険なにおいを感じ取りながらも金を持ち去った彼は、謎の殺し屋シガー(ハビエル・バルデム)に追われることになる。事態を察知した保安官ベル(トミー・リー・ジョーンズ)は、2人の行方を追い始めるが……。(シネマトゥデイ映画)

正直な感想書きます。

滅茶苦茶楽しかったです。
追われるサスペンスより追い詰めるワクワク感のほうが勝ってしまいました。
あの「結末」なんかどうでもいいし(あの結末が何を描いているか、町山智浩さんがこちらでくわしく解説してますので、まだ知らない方はどうぞ)
ちなみに作品が言いたいことは、ほとんど「ヒストリー・オブ・バイオレンス」と同じです。暴力表現のアプローチは似てるけど、「ヒストリー…」とは真逆。逆だからこそ似たというべきか。
あと、邦題「ノーカントリー」が全然意味をなさないということが判明しました。
うん、あの皮肉なオチには原題「NO COUNTRY FOR OLD MEN」がふさわしいですね。
でも、まさかオチが堂々とタイトルになっていたとは。
もっとも、その原題なら前半は観客が見たいシーンの連続なのに、後半は観客の期待を裏切り続けるシーンの連続になったか納得。
ただ、今回の映画は原作にかなり忠実に作られているそうなので、これは原作の仕掛けかもしれませんが。

アカデミー最優秀助演男優賞を受賞したハビエル・バルデムシガーの演技が楽しすぎです。
ああ、映画を先に見てよかった。
これから読む原作の続きを、あのイカス髪形と死んだ目の脳内イメージで読めるですから。
もう絶対に部屋で二人きりになりたくないキャラクターを見事に視覚化しています。
絶対に誰とも噛み合わない会話もナイス。
あまりハッキリ書いたらまずいかもしれませんが、シガーのキャラクターは、ある種の精神的に病んだ人の症状と、正気だけど精神的に病んでる聞いたほうが納得できる人を足して二で割ってキャラクター設計されたのではないでしょうか。
あの表情と話し方がどうしてもそう思えます。
ただ、ここで個人的な疑問というか不安がありまして。
あのシガーというキャラクターは、「常人にはその行動が理解不能」ということになるのでしょうが、私は劇中での彼の行動が実に合理的で理解しやすい気がしたのです。
正確にはシガーの行動は「理由のない合理的な行動」なのですが、なぜその行動するのかすごく納得できる(もしくはそう思い込める)気がして。
そんな自分の心が不安です。最近、仕事でいろいろありすぎだしなぁ…
彼について疑問に感じたのは、「劇中での事件が起きるまで、マフィアの皆さんは彼をどうやって雇ってたんだ?」ぐらいですかね。


             

共演陣ではジョシュ・ブローリンが熱演してましたね。
彼が演じたキャラクターの冒険野郎マクガイバーな行動も楽しかったです。
いや、マクガイバーな彼だからこそ、クライマックスは勝手にバトルな妄想してたんですが…あの結末。
でも、後半は視点をトミー・リー・ジョーンズ演じる保安官にシフトしていってますからしょうがないですね。十分、納得。どっちかというとあの描写のほうが映像的な快感では上のような気も。

                           

私は、暴力には「暴力を行う者」と「暴力を受ける者」と「傍観者」の三者しか存在しないと思っています。
この三者の中間に位置する者など存在しない。
「傍観者」は無責任ではありますが、影響を受けることを選択することもできる。
我々はテレビやネット、新聞で、この世界の暴力の存在を知るわけですが、普通は影響を受けることを選択しない。
この映画でトミー・リー・ジョーンズの保安官は、自分の人生で見る暴力を自分なりに受け止めていこうとしますが、シガーの出現でキャパシティを超えてしまいます。
キャパシティを超えた暴力の存在を知っても、人生を生きていかなきゃいけないというところで映画は終わります。
映画や物語で見る暴力は表現ですが、「暴力」は現実にあります。
この映画は、自分の日常が暴力と隔絶されているとはどうしても思えない私に、突然日常を破壊してくれる暴力、つまり自分のキャパシティを超えた暴力が自分の人生に触れる範囲で確実に存在することについて考えさせてくれました。

そういうことを、あのハビエル・バルデムの愉快な演技で考えさせてくれるなんて、さすがアカデミー賞優秀作品賞。
でも、それ絶対間違ってると思うけどね。そんなに暴力が日常の風景なの?
それが多くの共感を得る去年の代表作だなんて病んでるよアメリカ。
去年の受賞作もスコセッシのマフィア映画だったし(ま、去年はほとんど功労賞な受賞でしたけどね。コーエン兄弟もそういうタイミングだったの?それともミラマックスが外国に売るのに受賞したかったのかな?)

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