監督:サーシャ・ガヴァシ
出演:スティーヴ・"リップス"・クドロー (ヴォーカル兼ギター)
ロブ・ライナー(ドラム)
2009年 アメリカ
ジャンル:音楽を志す全ての若者に見てもらいたい…と言いたいところだが、ホントに音楽の道を志してるけど全然売れてない、でも口だけはカッコいいこと言ってるK君とY君に見てもらいたい。あと、若くて口で夢は語るけど全然行動しようという気が感じられないN君にも。
1984年の日本。
「SUPER ROCK '84 IN JAPAN」という大型のロック・ツアーがありました。
出演者はボン・ジョヴィ(これが日本初公演)、スコーピオンズ(昨年、次のアルバムのツアーが最後のツアーだと発表)、ホワイト・スネーク(さて歴代メンバーは全部で何人?)、マイケル・シェンカー・グループ(この時のボーカルはこの公演でクビになったそうです)。
どのバンドも何百万枚も売れました。
ツアーのオープニングアクトを飾ったアンヴィル以外は…
でも、今でも彼らは音楽を続けていたのです。
というわけで、一瞬輝きを見せながらロックスターへの階段を登れなかったバンド、アンヴィルの“現在”を追うドキュメンタリー。
いくら劇中のインタビューで、メタリカのラーズ・ウルリッヒ、アンスラックスのスコット・イアン、元ガンズ&ローゼズのスラッシュ、スレイヤーのトム・アラヤ、モーターヘッドのレミーが彼らの音楽を褒めても、ボーカルのリップスは給食の配達人だし、ドラムのロブは土建工事の作業員をしてたりしてます。
地元のライブハウスでの自分の誕生日パーティーを兼ねたライブは大盛り上がり。
愛してくれるファンも地元(近所?)にはいる。
でも、そんなのは彼らにとってそれは自分たちの目指すホントの“ライブ”じゃない。
彼らにとって音楽とは「ロックスター」なのです。
だからといってホントのロックスターのようにヨーロッパツアーに出たりするとロクな目に合わない。
数えるほどしか客がいなかったり、ギャラを払ってもらえなかったり、電車に乗り遅れたり、馴れない外国で道に迷ったり、1万人のキャパの会場に147人しか客がいなかったり、アルバムを作るための資金作りに自分たちのファンが重役してる会社でバイトしたり…
こんな状況が笑えるように編集してあえるんですよ。
たしかにこんなの見たら笑うしかないよ。
ドキュメンタリーだから片頬がひきつるけど…
でも、彼らは家族に愛されてるんですよね~。
映画の後半に出てくる彼らの家族の様子を見てると、彼らがなぜ音楽を続けられたか分かったような気がしました。
彼らにあの家族の皆さんがいなかったら今頃どうなっていたやら…
正直言って彼らのインタビューには「愛」が感じられて、感動しました。
“家族って大変”だけど、素晴らしい愛もあるんだよK.W.<まだ「かいじゅうたちのいるところ」をひきずってるらしい
リップスは言います。
「自分たちのやってきたことに後悔はない。一瞬だけど名声も味わったしね」
私はそんなリップスの姿を見てすごく複雑でした。
実は私も昔々、プロとして“デビュー”ってやつをしたことがあるんですよね。
音楽じゃなく物書きでしたけど。
でも、発行部数が10万~20万の雑誌で原稿料がもらえる自分の作品の連載もってたし。
雑誌自体のファンが多かったので、連載してるとそれだけで読み手もついてくれたし。
全国的なホントの有名人じゃないけど、ホントのファンレターももらえるし。
その雑誌の読者の集まるような場所に行くと、雑誌の愛読者から真面目にサイン頼まれたことあるし(もっとも、これは横にいたもっと売れっ子作家さんのついでに頼まれただけでしたけど)。
作家としては、単行本出すこととファンに手を出すこと(なぜか小学生とか中学1、2年生のファンばかりだった)以外のたいていのことはリアル有名作家シュミレーション体験できました。
そんな体験も雑誌の休刊とともに終って普通のサラリーマンの暮らしに戻りました。
私を買ってくれってた編集者さんが撤退したらもう誰も買ってくれる人がいなかったぐらいの実力しかなかったわけです。
でも…
もし私があの時「夢」にしがみついていたら。
あの時はサラリーマン生活を“本業”だと分かっていたけど、“書き手”という夢を本業にしようとしていたら。
なんせ当時の私は8年も片思いするような(少々問題ありすぎ)性格のある男。
どうなっていたやら…
この映画は「夢にしがみつくこと」の滑稽さ無残さを見事に映す映画でもあります。
夢にあがくリップスとロブを見ながら、私は別にあったかもしれない「夢にしがみつくもう一つの人生」を見てるような複雑な気持ちになり…お腹の底から大笑いしてしまいました。
笑ってごめんなさい、リップスさんとロブさん。
あなた方には私なんかと違って、ホントのプロとしての実力があるのに。
でも、胸が締め付けられるような思いをしながら見ても、やっぱり大笑いしちゃうよ、これ。
いや、夢にしがみにつかなかった自分にこそシニカルに笑う資格があるような気がしてさ。
さて、アンヴィルのその後ですが…
この映画の劇中で起した行動を火種にラストである奇跡が起こります。
そして、この映画の公開キャンペーンか、去年の日本のメタル・フェス ラウドパークにも出演。
なんと4月からはジャパンツアーも始まります。
これが彼らの本当の復活になるのかどうか私には分かりません。
映画のおかげの“二度目の一瞬”かもしれません。
でも、彼らが待ち望んだシーンなのです。
私は、4月の彼らのライブに行くかどうか(夢より優先した仕事の都合がわからないので)ちょっぴり迷ってます。
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