北陸新幹線の県内着工が決まってから、えちぜん鉄道の高架化事業も大きく動き出した。が、新たに提示された案を見ると、どうもすっきりしたものにはならないようである。
・駅東側えち鉄単独高架で県新案 三国芦原線も乗り入れ(福井新聞、2012年2月18日)
(関連)えちぜん鉄道高架化案の変更(前記事)
新聞記事にある新案の図をみると、以下のような手順になるそうである。
1. 現在完成している新幹線福井駅部高架(800mほど)にえちぜん鉄道の路線を乗り入れさせ、えち鉄福井駅を高架駅とする。また、現在のえち鉄地上路線は撤去する。(ちょうど地上にある路線をそのまま高架に移すようなイメージ)
2. えち鉄路線の撤去が済んだ後、新幹線高架の東隣のスペースにえち鉄専用の高架を新たに建設し、えち鉄福井駅~福井口間を高架上におく。
3. 北陸新幹線を新幹線福井駅部に接続させる(複線での開業)。
これらの手順をひとつずつ見ていく。1はこれまでの高架化案と同じく、えち鉄が新幹線高架を一旦借りることになり、地上路線も撤去される。一方、2・3は新たな手順であり、2でえち鉄地上路線を撤去したスペースに高架を建設し、えち鉄を新しい高架に乗り換え、3で新幹線を通す、ということになっている。今までの高架化案に比べればえち鉄の高架乗り換えにかかる工事の手順は易しいものになり、新幹線開業後の在来線に与えるネック(一部単線化)を防ぐことにもなっている。新幹線高架と新高架との路線乗り換えは必要となるものの、えち鉄の運行を止めずに、現在のえち鉄のスペースを使って高架化するにはこの案しかないだろう。
ただ、記事の新案の図の3番目(完成した状態)をみると、在来線・新幹線・えち鉄の各高架の複雑な入り組み方がどうもすっきりしない。新案で平面上の高架の面積が増えてしまい高架下のデッドスペースも増えることになったが、立体的にも複雑な形となってしまうことになる。これは元々の案で、新幹線駅を造る際に3階建て駅舎(3階に新幹線、2階に当時の京福電鉄が乗り入れる形式)とする予定であったものを、2005年に「用地・費用等を勘案した結果」で今の2階建てに変更されたことも深く関わってくる。元々の3階建て案であれば、平面上の高架の面積も抑えられ、立体的な高架の複雑な入り組み方もなかったはずなのだが…。
また、費用も約115億円となり、今までの約95億円よりも上回るという。県の負担割合は今までと変わらない(国負担が増える)とのこと。3階建て案と2階建て案では2005年当時の試算で約50億円の差と公表されており、まだ低く抑えられているとはいえる、のだろうか?
さらに、この新案では予想通り、勝山永平寺線と三国芦原線の両方が乗り入れる容量が確保できるとのことで、三国芦原線(福井口~)をLRT化(いわゆる次世代路面電車化)し、福井鉄道田原町駅から軌道乗り入れで福井駅西口に乗り入れる、という案は実行しなくてもよくなった。つまり、三国芦原線の全線LRT化(駅ホーム切り下げなど)の費用約60億円が削減されることになる。
ただそうすると、福鉄とえち鉄との相互乗り入れにも影響が出ると考えられる福鉄では新年度に新型の超低床車両(いわゆるLRV)を導入し、順次大型車両と置き換える(最終的には営業用の大型車両は全廃になる)そうで(※)、大型車両のみのえち鉄とでは単純に相互の乗り入れができないことになる。福鉄が相互乗り入れ用の大型車両を保有するか、えち鉄が相互乗り入れ用にLRVを保有し相互乗り入れ用の指定駅(もしくは全駅)にLRV用のホームを設けるか、をしなければならないだろう。三国芦原線LRT化を見越してえち鉄の新車庫はLRV整備に対応した設備が置かれたものの、これも無駄な投資となってしまうかもしれない。
(※)福井鉄道に新型車両導入へ 県が予算計上(当ブログ記事)
加えて、えち鉄三国芦原線の全線LRT化がなくなることにより、福井駅西口への福鉄軌道の乗り入れも重要度が下がるのではないかと思われる。こちらは西口再開発ビルの案が固まらなければならないため、仕方がないかもしれない。
形のうえでは、えちぜん鉄道の高架化問題については「現状のまま高架化する」ことでえち鉄・在来線の利便性は維持されることになる。ただこの案では、用地いっぱいに高架を建設することで高架下のデッドスペースが増えるほか、立体的にも複雑な入り組み方になるなど、釈然としない部分も出てきた。また、えち鉄専用高架の建設により三国芦原線のLRT化を回避することにはなったものの、福井鉄道との相互乗り入れも無くなる可能性が出てきたことに注意しなければならない。
大元を辿れば、新幹線駅を3階建てから2階建てに変更したというところから、このような継ぎはぎだらけの計画へと変わってしまったことになる。えち鉄三国芦原線のLRT化などの課題を生み出し複雑化してしまっただけに、非常に残念でならない。
・駅東側えち鉄単独高架で県新案 三国芦原線も乗り入れ(福井新聞、2012年2月18日)
(関連)えちぜん鉄道高架化案の変更(前記事)
新聞記事にある新案の図をみると、以下のような手順になるそうである。
1. 現在完成している新幹線福井駅部高架(800mほど)にえちぜん鉄道の路線を乗り入れさせ、えち鉄福井駅を高架駅とする。また、現在のえち鉄地上路線は撤去する。(ちょうど地上にある路線をそのまま高架に移すようなイメージ)
2. えち鉄路線の撤去が済んだ後、新幹線高架の東隣のスペースにえち鉄専用の高架を新たに建設し、えち鉄福井駅~福井口間を高架上におく。
3. 北陸新幹線を新幹線福井駅部に接続させる(複線での開業)。
これらの手順をひとつずつ見ていく。1はこれまでの高架化案と同じく、えち鉄が新幹線高架を一旦借りることになり、地上路線も撤去される。一方、2・3は新たな手順であり、2でえち鉄地上路線を撤去したスペースに高架を建設し、えち鉄を新しい高架に乗り換え、3で新幹線を通す、ということになっている。今までの高架化案に比べればえち鉄の高架乗り換えにかかる工事の手順は易しいものになり、新幹線開業後の在来線に与えるネック(一部単線化)を防ぐことにもなっている。新幹線高架と新高架との路線乗り換えは必要となるものの、えち鉄の運行を止めずに、現在のえち鉄のスペースを使って高架化するにはこの案しかないだろう。
ただ、記事の新案の図の3番目(完成した状態)をみると、在来線・新幹線・えち鉄の各高架の複雑な入り組み方がどうもすっきりしない。新案で平面上の高架の面積が増えてしまい高架下のデッドスペースも増えることになったが、立体的にも複雑な形となってしまうことになる。これは元々の案で、新幹線駅を造る際に3階建て駅舎(3階に新幹線、2階に当時の京福電鉄が乗り入れる形式)とする予定であったものを、2005年に「用地・費用等を勘案した結果」で今の2階建てに変更されたことも深く関わってくる。元々の3階建て案であれば、平面上の高架の面積も抑えられ、立体的な高架の複雑な入り組み方もなかったはずなのだが…。
また、費用も約115億円となり、今までの約95億円よりも上回るという。県の負担割合は今までと変わらない(国負担が増える)とのこと。3階建て案と2階建て案では2005年当時の試算で約50億円の差と公表されており、まだ低く抑えられているとはいえる、のだろうか?
さらに、この新案では予想通り、勝山永平寺線と三国芦原線の両方が乗り入れる容量が確保できるとのことで、三国芦原線(福井口~)をLRT化(いわゆる次世代路面電車化)し、福井鉄道田原町駅から軌道乗り入れで福井駅西口に乗り入れる、という案は実行しなくてもよくなった。つまり、三国芦原線の全線LRT化(駅ホーム切り下げなど)の費用約60億円が削減されることになる。
ただそうすると、福鉄とえち鉄との相互乗り入れにも影響が出ると考えられる福鉄では新年度に新型の超低床車両(いわゆるLRV)を導入し、順次大型車両と置き換える(最終的には営業用の大型車両は全廃になる)そうで(※)、大型車両のみのえち鉄とでは単純に相互の乗り入れができないことになる。福鉄が相互乗り入れ用の大型車両を保有するか、えち鉄が相互乗り入れ用にLRVを保有し相互乗り入れ用の指定駅(もしくは全駅)にLRV用のホームを設けるか、をしなければならないだろう。三国芦原線LRT化を見越してえち鉄の新車庫はLRV整備に対応した設備が置かれたものの、これも無駄な投資となってしまうかもしれない。
(※)福井鉄道に新型車両導入へ 県が予算計上(当ブログ記事)
加えて、えち鉄三国芦原線の全線LRT化がなくなることにより、福井駅西口への福鉄軌道の乗り入れも重要度が下がるのではないかと思われる。こちらは西口再開発ビルの案が固まらなければならないため、仕方がないかもしれない。
形のうえでは、えちぜん鉄道の高架化問題については「現状のまま高架化する」ことでえち鉄・在来線の利便性は維持されることになる。ただこの案では、用地いっぱいに高架を建設することで高架下のデッドスペースが増えるほか、立体的にも複雑な入り組み方になるなど、釈然としない部分も出てきた。また、えち鉄専用高架の建設により三国芦原線のLRT化を回避することにはなったものの、福井鉄道との相互乗り入れも無くなる可能性が出てきたことに注意しなければならない。
大元を辿れば、新幹線駅を3階建てから2階建てに変更したというところから、このような継ぎはぎだらけの計画へと変わってしまったことになる。えち鉄三国芦原線のLRT化などの課題を生み出し複雑化してしまっただけに、非常に残念でならない。