久しぶりに、武漢コロナ感染症(WARS)に関する話題に戻る。流行開始からもう2年経った。振り返ると、2020年の春先は恐怖に近い不安が社会を覆っていた。その後も何度か流行波が発生して、その度に世界中は振り回された。しかし、全体の流れをみると、流行の度に感染者数が増えるが、社会活動はむしろ復元している。
これは、人間が慣れただけでなく、ウイルスの生物学的な変遷にもよる。すなわち、新たな変異株が先行株に入れ替わる度に、感染力が高まるだけではなく毒性は弱まっていく。弱毒化すれば、不顕性も含めてウイルスのキャリアーとなる感染者が市中に増え、変異株の流行を更に強めるわけである。感染症分野ではよく知られている現象である。
今回話題となっているオミクロン株も、そのような特徴が明らかである。岸田首相はすぐさま検疫を強化したが、(内閣支持率は上げても)流行阻止への実効性は疑わしい。結局は米軍経由の流入で広がった。米軍の管理体制を批判する向きもあるが、いずれは流行したはずである。むしろ早めに流行を初めてくれたことに、感謝?すべきであろう。
感染症の流行は2-3年で収まるのが相場である。WARSが通常の感冒のひとつとなる日も近いだろう。もっとも、撤退する過程(規制の緩和や2類扱い解除のタイミング)では、新たな混乱が起こる。ちなみに、インフルエンザは毎年数千万単位の患者と、0.01%程度に当たる数千単位の死者が発生する。死亡者数では、WARSもその程度(2年で数万人)で収まろう。
対策強化や解除の過程では、勝者と敗者が生まれる。製薬や医療関係は潤ったはずである。ワクチンや抗ウイルス薬の有効性、経済性などは、検証が必要である。危機管理や感染症専門家、保健所の担当者なども、忙しい分手当も出た。政治家もマスコミ露出の機会が増えて、得した人も多い。割を食った人ももちろんたくさんいる。悲喜交々か。
ところで、変異株の命名では、2文字が飛ばされてオミクロンが選ばれた。ミューはNewと混乱、クサイはXiで隣国のLast emperorと同名、が理由らしい。しかし、オミクロンといえば、わが国の感染症防衛の旗頭である尾身茂氏を連想する。尾身氏は、残念ながら?WHOが命名に躊躇するほどの影響力はない。さすがのマスコミも、尾身株などとは揶揄しないようだ。