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支流からの眺め

武漢ウイルスとの戦争-その防衛システム

 武漢ウイルスに対する攻撃手段がほとんどないとなれば、われわれは防衛・自衛に徹するしかない。憲法9条を奉らなくても、専守防衛にならざるを得ない。では、どのような方法が正しいのか。

 ウイルスは感染者の飛沫に乗って飛び出し、次の宿主の口や鼻や目から侵入する(飛沫以外の体液は無視)。飛沫は浮遊している時間は短く、環境に付着して長く留まる。そこでウイルスは最長2日くらい生き延び、その間に誰かの手指を経て更に広がる。多くの人が無意識に触れる品(取っ手、手すり、つり革、押しボタン、共有机、タッチ画面、現金等)が、不特定多数の人にとって中継地となりやすい。感染者の衣服、寝具、身の回りの品にはすべて唾がついていると思った方がいい。また、ステルス感染者(https://blog.goo.ne.jp/tributary/e/221e97d2e1ea6aa1772206d2bf72137f)が身近にいて、感染飛沫を出しているかもしれない。これらを理解して防衛する必要がある。

 感染者の診療にあたる医療者が敵の陣地に入る際は、高性能のマスク、ゴーグル、ガウン、手袋で注意深く防衛する。ステルス感染者まで警戒するなら、同様の防衛策を日常的に行う必要がある。しかし現実には、そこまではやらずに、ウイルス侵入の確率を少しでも下げる方法を取ることになる。

 他人の飛沫に触れる確率を下げるには、生活圏を分けることである。それが無理な場合は、飛沫を浴びやすい状況(近距離、対面、会話、飲食)を避ける。マスクで飛沫を防ぐのもいい。付着した飛沫は手指を介して侵入するから、常に手指を清潔に保つか、指で顔を触らないことである。顔、特に口の周りに触れない工夫として、マスクで顔を覆うのは悪くない策である。

 自分が感染者である危険もある。飛沫を飛ばさないように、咳やくしゃみはもちろん、発語(特に大声)を自制すべきである。マスクは飛沫の飛散を防ぐに有効である。飛沫に触れた手で他の所を触るべきでない。手指衛生はここでも有用である。以上から、生活圏の分離が困難な状況では、マスクと手指衛生が重要であることが分かる。

 マスクの効用は、大粒の浮遊した飛沫の侵入を防ぎ、顔に触れる機会を減らし、感染防御の意識を高め、喉を乾燥から防ぎ、自身の飛沫の飛散を抑えることだろう。逆に言えば、マスクを外すのは危険である。飲食や飲酒では、一方が唾を飛ばし、他方がそれを口に入れる。感染の危険性は極めて高まる。周囲の空中に自分以外の飛沫がない環境であれば、外しても大きな問題ではなかろう。それでも唾を飛ばすような行動は慎むべきである。

 しかし実は、浮遊した飛沫より付着した飛沫の方が長時間環境に存在し、かつステルス性が高い。気づかないまま感染者の飛沫に触れたあなたの手指、それを介してウイルスがあなたに侵入する。あなたに移ることがなくとも、あなたの手指が中継地となって第三者に伝染する。この経路のほうが主流かもしれない。これを防ぐのは手指衛生である。手指衛生はマスクのようには目立たないが、その重要性はもっと強調されるべきである。頻回に繰り返すだけでなく、安全地帯(自宅や居場所)に戻る前、顔に触れる前には、必ず手を消毒すべきである。

 医療者が身に着ける戦士のような重装備も、仕上げの手指消毒なしで無力化される。画竜点睛、手指衛生。


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