千兆円以上の国債に加え、円安、物価上昇、国際収支の悪化、金利上昇などが日本破綻の不安を高め、世論は「負担増も已むなしか」となる。しかし、子会社たる日銀との連結決算では日本政府の財務は黒字であり、インフレや日本国の信用失墜がない限り破綻しないとも言われる。どちらが正しいのか。論理的には、インフレか信用失墜が起これば破綻する危険がある。それらを考えてみよう。
インフレでは、内需拡大によるインフレは考えにくいが、円安により海外依存度の高い資源や食料の価格が上昇する「円安インフレ」は懸念される。今は多量の円が金融投資として実体経済とは別の金融市場に溜まっている。この円が円安インフレの誘導で一気に商品市場に流れ込むと、インフレを更に進めることになる。それでも、物不足だけなら日本人の我慢の力で凌げるだろう。
信用失墜はどうか。金融面では、日本の対外純資産は3.2兆ドル、日銀の所有する外貨準備高も1.2兆ドルある。いずれも世界1-2位だ。国民は総じて真面目で誠実だ。悪い想定では、貧富の差が進んで若者が将来の夢を持てずにやる気を失う、資産を有する企業や個人が一斉に円を売り払い海外に逃げ出すなどもあり得る。しかし、日本ではそこまで深刻な道徳的退廃は起こらないだろう。
懸念すべきは、壊滅的天災や日本を巻き込む軍事衝突だ。天災は援助が期待できるが、戦争では米国がどこまで頼れるか予断を許さない。しかも、日本は自国で資源や食料の供給を担保できない。輸入が滞ればすぐさま物価は高騰し、円売りで生じる円安が更に物価を押し上げる。日本の経済破綻(インフレ、信用失墜、円暴落)が起こるとすれば、それは深刻な安全保障の危機が起こった時だ。逆に言えば、それ以外では起こらない。
「国民の思い違い」をまとめると、円札は日本国の信用で発行可、予算不足は増税でなく国債で可、節約よりも消費を奨励、国の信用の維持向上に努めよ、となる。資源の乏しいわが国が信用を保つには国際平和が肝要で、日本が破綻するのは、巨額な国債や道徳の崩壊ではなく、安全保障が失われた時だ。では、日本はそれでいいとして、世界は破綻しないのか。