・先般開催された中国共産党の中央委員会第3回総会(三中総会)で今後の改革の方向が打ち出されたが、中身は極めて空疎、これでは経済の不振も政治の混乱も収まるどころか、ますます酷くなるというのが、ほぼ正しい見方だろう。
・経済においては、腐敗の温床であり、農民を犠牲にした無秩序な経済運営を続ける国営企業や地方政府の改革を等閑にして、そのまま存続を認める方向だし、増大する社会不満に対しても、その根本原因である所得格差や民族差別の実効的な改善策はなく、ただただ情報統制と取締り・弾圧を強化するための体制整備を行うことしか考えていない。もちろん、文書には、表面上、改革の文字が踊ってはいるのだが、いずれも形ばかりで小手先のものに過ぎないのである。(この三中総会の記事の中で、もっとも的確な評価を与えていると思われる時事通信の記事を末尾に掲載しておくので参考にしてもらいたい。)
・やっぱり、現在の中国は自壊過程にあり、いずれ共産党政権も瓦解していくのだろうが、それがどんな経緯をたどるのかは今のところ誰も解らぬところだ。前に、どうすれば中国は民主主義国家に移行できるかという議論をしたことがあるが、これについても現状からのスムーズな民主化は絶対不可能というのが結論であった。また、中国が現体制のまま存続する可能性があるとすれば、内陸部(農民層)を切り捨て、沿岸部(都市部)だけで分離して生き残る方法があるだけだとしていたが、これとて想像の域を脱しておらず、現実には現共産党政権が無為無策のまま恐怖政治を続け、ズルズルと延命を図るだろうし、一方で、民衆も社会不満から数多くの暴動を引き起こすだろうが、それが政権打倒という明確な方向性を持たず単なる暴発に終わるというのがほんとうのところだろう。今後、中国は、政治的にも経済的にも混乱が深刻化するが、変革の道は閉ざされたまま、形骸化した政治体制がいつまでも続くという経緯を辿ることになるだろう。
・こう考えていくと絶望的な状況なのだが、何故こんなことになるのかをつらつら考えると、根本的には、この国には国民に共通するアイデンティティが存在しないというところに行きつくのだと思う。宗教でも良いし習俗・伝統でも良いが、近代的な民主主義国家に移行するためには、国家の枠組みの基礎をなす国民の共通認識や精神面での共同性・一体性がなければならないが、この国にはそれがまったくないのだ。中国四千年の歴史と言うけれど、専制者や他民族による侵略と支配に蹂躙された四千年であり、そこにはまとまった宗教意識や国民意識が形成されるはずもなく、抑圧された民衆の中には、ただ自らの保身を図るための功利主義と事大主義という貧しい思想しか生まれなかったのであり、まさに支配と従属の歴史が、中国社会に無秩序と長い停滞をもたらしてきたのである。
・その意味で、現在の中華人民共和国も歴史上の専制国家と何ら変わりはない。民衆が主体的に参画し、勝ち取った統一国家ではなく、先の戦争で、敗色濃い日本が一方的に中国から手を引く中で、中国共産党軍が、国民党軍と共同して、または相争って、ドサクサに紛れて奪取した政権であり、現政権の元は他の軍閥となんら変わりのない軍事政権であるというのが真実だ。ただ過去の専制国家と違っているのは、共産主義思想が支配の道具に使われている点だけである。
・この共産主義思想(毛沢東思想)は、権力奪取時には「人民の解放」という国民統一の理念として一時的には有効に機能したものの、奪取後は、政治理念・理論としても経済理論としても破綻し、宗教的な神通力を失ってしまった。それなのに何故現政権は無効となった共産主義思想を放棄しないのか。それは、共産主義思想を放棄した途端、現政権の正当性が揺らぐとともに、民衆から国家意識や国民意識が消失してしまって、国内は混乱の坩堝に化すからだ。たとえ形骸化したとはいえ、人民統制のためのイデオロギーとしての共産主義思想は、どんな無理があろうと現政権としては放棄できないのである。中国が歪んだ統治形態をとらざるを得ないのは、結局のところ、国民に共通のアイデンティティがなく、国家としてまとまろうとする国民意識が欠けている点に行きつくのである。
・国民として無自覚な民衆の不満と共産主義と言う名の専制統治、改革開放による経済成長の限界、これらが互いに足を引っ張り合いながら、中国は自壊の道を着実に歩んでいることに間違いはない。この国の未来が悲惨で救いようもないということを改めて感ぜざるをえない。ああアジア的停滞!!
<参考:北京時事の「三中総会」解説記事>
・中国の習近平共産党総書記が就任して15日で1年。当初は「改革派」への期待も強かったが、1年間を通じて見えてきたのは、腐敗の深刻化に何度も警告し、「党も国家も滅びる」と危機感を強める顔と、体制に異を唱える声を徹底的に弾圧する保守強硬派の姿だ。既得利益層が優遇され、庶民は改革の恩恵を受けられない社会に不満が爆発する中、共産党崩壊への不安が日増しに強まっている表れでもあり、習氏は「権力集中」体制を構築することで危機を乗り切ろうとしている。
◇後退した既得利益層改革
・党18期中央委員会第3回総会(3中総会)が閉幕した翌日の13日夜。国営新華社通信などは習氏の改革への強い決意を示す発言を伝えた。「古い問題が解決すれば、新たな問題がまた発生する。改革は一回で成功しない。また一回苦労すれば、もう楽ができるというものでもない」
・しかし3中総会の結果を見ると、前評判に比べ国有企業改革など既得利益層に対する改革は後退したとの印象が強い。共産党関係者は「江沢民(元総書記)らの影響力は残っている。党内バランスを考える必要がある」と明かした。
・結局、3中総会の目に見える成果は、内外の治安維持を統括する「国家安全委員会」と、改革の司令塔となる「中央改革全面深化指導小組」という二組織の立ち上げ。習指導部が「安定」「改革」を二大緊急問題と見ている表れであり、党関係者によると、両組織トップに習氏が就く予定だ。党主導の下、李克強首相率いる国務院(中央政府)は単なる「経済政策実施機関」に成り下がった感が強まった。
◇言論統制強化と活動家拘束
・習指導部の引き締めが強まった一つの契機は、8月19日の「全国思想宣伝工作会議」での習氏の重要講話だった。消息筋によると、習氏はこう訴えた。「インターネットは既に世論闘争の主戦場になった。われわれが耐え切り、勝利できるかが、わが国のイデオロギーや政権の安定に直接関わっている」
・この発言以降、ネット上での言論統制は一層強くなり、「(反体制的な言動で)習総書記就任後1年間で拘束された活動家らは、胡錦濤前政権の後半5年間の人数を大きく超えた」(人権活動家)という。
・今後の焦点は経済の行方。大きく減速すれば、社会不満はさらに噴出し、政権の安定を脅かす可能性は高い。人権派弁護士の唐吉田氏は「政治はさらに集権を強め、経済面では既得利益集団を微調整するだけにとどまる」と解説、経済面も含めて大きな構造改革には踏み出せないとみる。
・改革派歴史学者は「(共産党は)今や改革の機会を逸した。人には手術で徹底的に病気を除去する手法と、薬や注射で最後まで持たせる治療法があるが、習指導部では後者が選択肢になっている」と語った。(北京時事)
・経済においては、腐敗の温床であり、農民を犠牲にした無秩序な経済運営を続ける国営企業や地方政府の改革を等閑にして、そのまま存続を認める方向だし、増大する社会不満に対しても、その根本原因である所得格差や民族差別の実効的な改善策はなく、ただただ情報統制と取締り・弾圧を強化するための体制整備を行うことしか考えていない。もちろん、文書には、表面上、改革の文字が踊ってはいるのだが、いずれも形ばかりで小手先のものに過ぎないのである。(この三中総会の記事の中で、もっとも的確な評価を与えていると思われる時事通信の記事を末尾に掲載しておくので参考にしてもらいたい。)
・やっぱり、現在の中国は自壊過程にあり、いずれ共産党政権も瓦解していくのだろうが、それがどんな経緯をたどるのかは今のところ誰も解らぬところだ。前に、どうすれば中国は民主主義国家に移行できるかという議論をしたことがあるが、これについても現状からのスムーズな民主化は絶対不可能というのが結論であった。また、中国が現体制のまま存続する可能性があるとすれば、内陸部(農民層)を切り捨て、沿岸部(都市部)だけで分離して生き残る方法があるだけだとしていたが、これとて想像の域を脱しておらず、現実には現共産党政権が無為無策のまま恐怖政治を続け、ズルズルと延命を図るだろうし、一方で、民衆も社会不満から数多くの暴動を引き起こすだろうが、それが政権打倒という明確な方向性を持たず単なる暴発に終わるというのがほんとうのところだろう。今後、中国は、政治的にも経済的にも混乱が深刻化するが、変革の道は閉ざされたまま、形骸化した政治体制がいつまでも続くという経緯を辿ることになるだろう。
・こう考えていくと絶望的な状況なのだが、何故こんなことになるのかをつらつら考えると、根本的には、この国には国民に共通するアイデンティティが存在しないというところに行きつくのだと思う。宗教でも良いし習俗・伝統でも良いが、近代的な民主主義国家に移行するためには、国家の枠組みの基礎をなす国民の共通認識や精神面での共同性・一体性がなければならないが、この国にはそれがまったくないのだ。中国四千年の歴史と言うけれど、専制者や他民族による侵略と支配に蹂躙された四千年であり、そこにはまとまった宗教意識や国民意識が形成されるはずもなく、抑圧された民衆の中には、ただ自らの保身を図るための功利主義と事大主義という貧しい思想しか生まれなかったのであり、まさに支配と従属の歴史が、中国社会に無秩序と長い停滞をもたらしてきたのである。
・その意味で、現在の中華人民共和国も歴史上の専制国家と何ら変わりはない。民衆が主体的に参画し、勝ち取った統一国家ではなく、先の戦争で、敗色濃い日本が一方的に中国から手を引く中で、中国共産党軍が、国民党軍と共同して、または相争って、ドサクサに紛れて奪取した政権であり、現政権の元は他の軍閥となんら変わりのない軍事政権であるというのが真実だ。ただ過去の専制国家と違っているのは、共産主義思想が支配の道具に使われている点だけである。
・この共産主義思想(毛沢東思想)は、権力奪取時には「人民の解放」という国民統一の理念として一時的には有効に機能したものの、奪取後は、政治理念・理論としても経済理論としても破綻し、宗教的な神通力を失ってしまった。それなのに何故現政権は無効となった共産主義思想を放棄しないのか。それは、共産主義思想を放棄した途端、現政権の正当性が揺らぐとともに、民衆から国家意識や国民意識が消失してしまって、国内は混乱の坩堝に化すからだ。たとえ形骸化したとはいえ、人民統制のためのイデオロギーとしての共産主義思想は、どんな無理があろうと現政権としては放棄できないのである。中国が歪んだ統治形態をとらざるを得ないのは、結局のところ、国民に共通のアイデンティティがなく、国家としてまとまろうとする国民意識が欠けている点に行きつくのである。
・国民として無自覚な民衆の不満と共産主義と言う名の専制統治、改革開放による経済成長の限界、これらが互いに足を引っ張り合いながら、中国は自壊の道を着実に歩んでいることに間違いはない。この国の未来が悲惨で救いようもないということを改めて感ぜざるをえない。ああアジア的停滞!!
<参考:北京時事の「三中総会」解説記事>
・中国の習近平共産党総書記が就任して15日で1年。当初は「改革派」への期待も強かったが、1年間を通じて見えてきたのは、腐敗の深刻化に何度も警告し、「党も国家も滅びる」と危機感を強める顔と、体制に異を唱える声を徹底的に弾圧する保守強硬派の姿だ。既得利益層が優遇され、庶民は改革の恩恵を受けられない社会に不満が爆発する中、共産党崩壊への不安が日増しに強まっている表れでもあり、習氏は「権力集中」体制を構築することで危機を乗り切ろうとしている。
◇後退した既得利益層改革
・党18期中央委員会第3回総会(3中総会)が閉幕した翌日の13日夜。国営新華社通信などは習氏の改革への強い決意を示す発言を伝えた。「古い問題が解決すれば、新たな問題がまた発生する。改革は一回で成功しない。また一回苦労すれば、もう楽ができるというものでもない」
・しかし3中総会の結果を見ると、前評判に比べ国有企業改革など既得利益層に対する改革は後退したとの印象が強い。共産党関係者は「江沢民(元総書記)らの影響力は残っている。党内バランスを考える必要がある」と明かした。
・結局、3中総会の目に見える成果は、内外の治安維持を統括する「国家安全委員会」と、改革の司令塔となる「中央改革全面深化指導小組」という二組織の立ち上げ。習指導部が「安定」「改革」を二大緊急問題と見ている表れであり、党関係者によると、両組織トップに習氏が就く予定だ。党主導の下、李克強首相率いる国務院(中央政府)は単なる「経済政策実施機関」に成り下がった感が強まった。
◇言論統制強化と活動家拘束
・習指導部の引き締めが強まった一つの契機は、8月19日の「全国思想宣伝工作会議」での習氏の重要講話だった。消息筋によると、習氏はこう訴えた。「インターネットは既に世論闘争の主戦場になった。われわれが耐え切り、勝利できるかが、わが国のイデオロギーや政権の安定に直接関わっている」
・この発言以降、ネット上での言論統制は一層強くなり、「(反体制的な言動で)習総書記就任後1年間で拘束された活動家らは、胡錦濤前政権の後半5年間の人数を大きく超えた」(人権活動家)という。
・今後の焦点は経済の行方。大きく減速すれば、社会不満はさらに噴出し、政権の安定を脅かす可能性は高い。人権派弁護士の唐吉田氏は「政治はさらに集権を強め、経済面では既得利益集団を微調整するだけにとどまる」と解説、経済面も含めて大きな構造改革には踏み出せないとみる。
・改革派歴史学者は「(共産党は)今や改革の機会を逸した。人には手術で徹底的に病気を除去する手法と、薬や注射で最後まで持たせる治療法があるが、習指導部では後者が選択肢になっている」と語った。(北京時事)