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みつとみ俊郎のダイアリー

音楽家みつとみ俊郎の日記です。伊豆高原の自宅で、脳出血で半身麻痺の妻の介護をしながら暮らしています。

便利さが認知症を作る?

2016-10-04 10:55:54 | Weblog

この時期の伊豆急の電車は観光客が多い。

昨日も昼ちょっと前の電車に乗るとたくさんのグループがいきなり駅弁を広げ始めた。

別に嫌いな光景ではない。

そんな光景がひと段落した後、向いの4人がけに座る家族連れの中の一人の少年の行動が目についた。

小学校にあがるかあがらないかぐらいのその少年の両手にはまったく異なる二つの玩具のパーツが握られていた。

右手に小さな電車の模型(Oゲージっぽい)。

左手にロボットの頭のようなもの。

彼はその2つを一生懸命くっつけようとしている(まるでそれらが合体ロボのパーツの一部であるかのように)。

どうやってもくっつかない(当たり前だ)。

でも、彼は、あきらめずに何度も試みる。

横の母親らしき女性は、そんな彼には目もくれず連れの女性との話しに夢中だ。

絶対にはまるはずのない二つのパーツは、ひょっとしたら彼の頭の中ではそれが見事に「合体」しているのかもしれない。

「どうしてくっかないんだろう?変だな?なぜかな?」

きっと彼の頭の中にはたくさんの「?」が渦巻いていたはずだ。

と同時に思ったのは、この時の彼の脳の中のシナプスの発火のスピードと回数はハンパないだろうナということ。

「なぜ?」「どうして?」という頭の回路は、本来結びつくべき神経細胞と細胞の繋ぎ(つまりシナプス)がどこにあるのかを探しまくる。

そうやって確実に子供のシナプスの回路は増え脳は成長していく。

だからこそ、高齢者を対象にしたシナプソロジーというエクササイズが開発されたのだろう。

このエクササイズでは、右手、右足なら簡単にできる作業をわざわざ左手、左足にやらせたりする。

逆もしかり(最近ではさまざまな高齢者向けセラピーがこの方法論で開発されている)。

少年の左手に握られたロボットの頭が、いとも簡単に右手のロボットと合体してしまったら彼の脳には何の変化も起こらないかもしれない。

電車とロボットが「違う」ものだということに気づくのか、あるいはそれでも「合体させる方法」を必死で見つけようとするのか(「不可能」だということに気づくのか、あるいは「不可能ではない」ということに気づくのか)。

いずれにしても、彼が行っている「理不尽な」作業が彼の脳の成長に果たす役割はけっして少なくないはずだ。

物事があまりにも簡単に成し遂げられてしまうことが果たして人間にとって良いことなのだろうか、と思う。

今、世の中は、先ほどのシナプソロジーのように認知症を予防するために人の脳細胞を活性化するさまざまな方法を躍起になって開発し紹介している。

でも、そんな努力をせせら笑うようにまったく逆のベクトルにも世の中は進んでいる。

何かわからないことがあったらスマホで検索すればすぐ答えにたどり着ける。

それって「きちんと順を追って物事の答えや真理にたどり着こう」という努力を放棄しているだけじゃなくって、自分の脳細胞をわざわざ死滅させていることにはならないのだろうか。

今日私が電車で見た少年のような試行錯誤や「何やってんだよ」という(いっけん無駄のようにも見える)努力を放棄した瞬間、人は老化し始めるのでは?

近年認知症人口が急激に増えているのは、必ずしも高齢者の人口が増えているからという理由だけではないような気がする。

なぜ人は「世の中が便利になる=人が頭を使わずに生活できるようになるのだから、結果、脳細胞はどんどん衰えていく」という風には考えないのだろうか?

本を読まなければ人は本当の知識を得られない。

本を読むという能動的な学習方法と教室の授業を聞くという受け身の学習方法ではその知識の身に付き方は天と地ほども違う。

一体どんな学習方法で人は知識を脳に定着させるのか、を図式化した「ラーニングピラミッド」で一番知識の定着率が悪いのは教室で単に授業を聞く事だ。

先生や学者の意見を聞いたところで、そこで得た知識が頭に残るはたった5%。

95%はすっかり脳から抜けてしまう(なんというムダ!)。

ネットで得た知識だって翌日には忘れてしまう。

学んだことを本当の知識にしたかったら「体験」するしかない。

体験学習による定着率は70〜80%。

教室の授業が、人生においていかに「時間の無駄」かがよくわかる。

年寄りになったら「脳が老化するから活性化させなきゃダメ」とわざわざメンドくさいことを年寄りにやらせる。

見ていてすごくアホくさい。

だって、それやるなら本当は若い人でしょう?

若い人が楽な生き方していたら人間としての成長が止まるだけでなく、確実に認知症予備軍になってしまう。

どうも、日本の政治や行政のやることってチグハグで本当に行き当たりバッタリにしか見えない。

もし本気で「認知症を予防しよう」と思うのだったら、なんで年寄りにばかり「脳の活性化」を押し付けるのだろう。

若い人は元気で働いているから生活の中に刺激もあって脳は日々活性化されているからその必要はない、と本気で言えますか?

すべての知識をネット(スマホも含めて)に頼っていたら確実に老化のスピードは早くなるんじゃないのかナ。

もっと本読みなさいよ。

もっと現場で体験しなさいよ。

まったく違うパーツを何とか合体させようとしていた昨日の電車の少年の努力は将来絶対に無駄にはならないはず。

ひょっとしたら、彼、何十年か先のノーベル賞候補になっている逸材なのかもしれない。

 

 


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